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完全にワンピースの話をします。
突然乱暴に開けられた箱蓋に怖気好いたのか、小さい身体を更に丸めた少女に、
いつもの胡散臭い笑みを貼り付けた骸がそっと抱き上げ、箱から出してやる。
「かわいいお嬢さん、怖がる必要はありません。何故このようなところにいらっしゃるのですか?」
少女の目線に合わせるように膝をつき、怖がらせないよう手を取るその構図は、やはりサマになっている。さすが、顔だけが取り得なだけあるな。と関心半分、呆れ半分で眺めていると、
幼い少女は、じっと骸の目をみつめ数秒凝視したあと、ふるふると頭を横に振った。
「……?」
「分からないって意味ですかね?」
「それにしては間がありすぎだろ。」
イタリア語じゃダメなんでしょうかね。と呟き、再度日本語でも挑戦したようだが、彼女は骸の顔を見たまま、口を開く様子が無く、諦めたように立ち上がる。
いつの間にか、少女の縄は解いたようだ。
「幼く美しい少女をこのような箱に閉じ込めるという、この行為からは悪意しか感じられないのですが、どう思います?」
「全く持って同感だぜ。嫌な予感が的中したな。」
箱を開けてよかった。どういうつもりか知らないが、客間にこんな状態の少女を監禁するようなマフィアと同盟なんて組めたものじゃない。
それに箱の中に入っていた紙。……漢字なんて久々に見た。
『種類:食用 性別:女 評価:最高値 出展先:親 取引値:金参捨萬圓 』
「―――なんて書いてあるんです。」
「…最低だ」
イタリアでは読み取られないようにする為か、もしくはこの子供に分からないようにする為か。それとも……日本にも支部があり漢字が読めるボンゴレ幹部にだけ、分かるようにするためか。
「この部屋の血の匂いも、そういうことなんでしょうか。」
「そこまでは分からねぇが、可能性は高そうだな。」
「まぁどちらにせよ、本日の会合は中止ですね。……物騒な気配もしますねぇ。」
「…ちょっと人数が多いな。」
いくら雑魚と言えど相手はマフィア。足音程立てないが、こちらへ向かってくる気配までは消しきれていない。ざっと30〜50人程だろう。
「おいおい、こんなところで奇襲かけられたら蜂の巣だぜ。」
「ご冗談を。貴方程の実力があれば、掠り傷一つ付かず殲滅できるでしょう。……この娘がいなければの話ですがね。」
いっそのこと、見殺しにするなんてどうでしょう?なんて、10代目が聞いたら冗談だろうとその場でブッ飛ばされそうなことを、どうせ日本語なら分かるまいと、堂々と言ってのける骸に厳しい視線を送りつつ、少女に目を落とせば、
急に緊迫した俺達の空気を感じ取ったのだろう、扉の方を見つめながら、両手を強く握り締めている。
おそらく無意識なんだろうが、緊張している証拠だ。
それに骸の発言にも、驚いた表情を見せないということは、やはり日本語は分からないらしい。
強く手を握ったまま、唇を噛み始めた少女の表情に、「あぁ、怖いんだろうな」と感じる。
辛くても唇を噛んで耐えた自分の少年時代と重ねてしまい、どうにも見ていて心が重い。
「もう少し歳を重ねた女性であれば、抱きしめて口を塞いで、微笑んでやれば信用するんでしょうけどね。」
「黙ってろ。」
この似非紳士、人がシリアスにモノを考えているというのに、本当に使えないな。と怒りを新たにしつつ、骸の応援は頼りに出来ない。と自分で少女を安心させてやる術を考えるが、如何せんこういった状況の対応など己のマニュアル本には記載されていない。困った。
どうしてやったらいいのか分からないが、
きっとこの少女に「大丈夫だ」と言ったところで安心なんてできないだろうし、第一、どこの国の言葉で話したら通じるのかすら分からない。
ストリート時代の自分を思い起こしてみても、やはり大人の上辺だけの台詞なんて信じないだろう。
こんなことになるなら、アホ牛が小さかった頃、もう少し研究しておけば良かったなんて、場違いなことをボンヤリ考えながら、不安げに見上げる少女の頭に掌を乗せた。
このまま撫でてやれればいいのかもしれないが、あいにく子どもの扱い方などしらない俺には、力加減が全く分からない。
それでも、少しだけでも少女の不安がなくなればいいと、微笑んでは見たものの、きっとこの状況では精々口元が笑っただけで、目は据わっていただろう。
あー、俺なにやってんだ。天下のボンゴレ10代目右腕ともあろうこの俺が、こんな小さいガキのご機嫌に四苦八苦する羽目になるとは……。
俺の、この奇怪な行動とギコチナイ表情に、骸の肩が震えだしたと同時に、
先ほどまで強く握っていた片腕を持ち上げて、綺麗な青い瞳で俺の目を凝視しながら、小さなその手が、遠慮がちに俺のスラックスの裾を握り締めた。
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長いこと放置してしまった。
とりあえず、骸さんって子供嫌いそうなイメージある。
続きます。