※雲獄+ルサン高校生設定です。
四人は幼なじみで、校内でも有名な仲良しグループです。
okでしたらどうぞー!!
5月5日、こどもの日。
世間一般ではGW真っ只中なので学校も会社も休みなハズだというのに、
この並盛高等学校は、都内でも有名な進学校だかなんだかで、休日返上で授業があった。
「あ〜〜っ、もうやってらんねぇよ!」
今年受験のある三年生の講習ならともかく、二年生も授業とはどういうことか。
午前中の授業が終わり、ガシガシと綺麗な銀髪を乱暴に掻いて、
板書を写していたノートを放り投げる。
「ちょっと隼人、お腹好いたからって暴れないで大人しくしなよ。」
真っ白な肌をシルバーアクセで飾る隼人と呼ばれた派手好きな少年とは対象的に、
手触りの良さそうな真っ黒な髪で、黒い学生服を清潔に着こなした隼人と同じクラスの男は、
派手な少年が勢い良く投げたノートをなんなくキャッチして、声変わりした低いテノールで静かに諭す。
「や、別に腹が減ってイライラしてるわけじゃねぇよ。
今日は恭弥の誕生日だってのに、なんだってウチの学校は授業があんだよ!」
赤くなりつつも、「特別な日」なのにどうして。という感情が良く伝わり、
恭弥と呼ばれた黒い男も、少し嬉しそうに微笑んだ。
「でも朝一番で隼人がお祝いしてくれたじゃない。」
「"おめでと"って言っただけじゃねーか。……安上がりな奴。」
「それでも嬉しいんだよ。」
浅く、真っ直ぐに隼人に向かって微笑んだ恭弥に照れたのか、「バカ、」と一言だけ吐いて、
ここが教室だというのも全く気にせず、ポケットからタバコを取り出す。
「隼人……教室だよ。」
駄目だよ。と優しく咎められ、「ちぇ、」と口から煙草を取ろうとしたとき、
「俺の作ったメシの前に煙草吸うとはいい度胸してんじゃねーか。」
ドスのきいた声と共に現れたのは1つ年上で三年生のサンジ。
細身の長身と、獄寺に負け劣らずの光に当たると綺麗に光る金髪。
かなり目を惹く存在の彼が、なぜわざわざ二年生の教室まで来たかというと、両腕に抱えた、弁当を彼等と一緒に食べる為だ。
「おい、隼人。煙草を吸うのは勝手だが、俺のメシの前はヤメロ。」
「うっせーな、まだ火ィつけてねぇよ。」
「ならいい。」
一見いがみ合っているような会話だが、実際はそうではなく、
サンジには鞄から弁当を取り出していて心なしか微笑んでいるし、
獄寺に至ってはニコニコと机の用意をしている。
ただ煙草を教室で吸うのはどうかと思うが。
旗から見れば頓珍漢なこの二人、
校内では美人(男だが)で有名ではあるが、それとともにもう一つ、短気で喧嘩っ早いことでも名が知れている。
そんな短気な二人が、喧嘩もせず仲良くしている理由は、
お互いが兄弟のように思っているからであり、むしろサンジの喧嘩っ早さを見て育った隼人が、それをそのまま引き継いだだけなのである。
(外見は違えど、中身はそっくりだよ。)
そう思うのは幼馴染同士なだけで、その他の外野からしてみれば、
高嶺の花すぎて、そんな内部を見れる輩は一人も居ない。
ゆっくりとお昼の準備をしていると、ドタバタと激しい足音と共に「メ〜〜〜シ〜〜〜っっ!!!」という叫び声がだんたんとこの教室に近づいてくる。
「サンジ〜〜っ!!めしっっ!!」
煩い掛け声と共に、教室の扉を勢い良く開けたのは、隼人や恭弥よりも1学年下のルフィだ。
「珍しく遅かったな。」
そう言って笑うサンジの隣に迷うことなく座り、
「なんか、いろんなヤツに貰ってたら遅くなっちまった。」
と、元気の良い笑顔で返され、確かに良く見ると、彼の手は綺麗にラッピングされたプレゼントでいっぱいだ。
「誰から貰ったんだよコレ。」
そう言ってプレゼントを数えるサンジに対して、
「ん〜〜?誰だっけ?忘れた!!」
と思いっきり言い張る男は、背後にドーーン!と効果音がつきそうなくらい胸を張っている。
それくらい、覚えろよ。とも思うのだが、
興味のあるものはある。ないものは無い。
その区別がはっきりしている彼は、そんな性格をもカバーするほどの包容力とリーダーシップを持ち、
且つ、持ち前の明るさで、彼を憎むものは殆どいない。
「それより、メシだ!!」
「全く……」
そうやって、苦笑して深く追求しないサンジもまた、彼に絆されている人間の中の一人なのだ。
「なぁ、サンジ。今日のメシは何だ?」
「今日は、ルフィと雲雀の誕生日仕様で豪華にしてあるぞ。」
ニィ、と笑って言えば、
「本当か!?」
「本当?」
と二人して同じような返事が返ってくる。
一見、元気なルフィと、大人しい雲雀では似ていないように見えるのだが、
興味が無いものには全く容赦がないところだとか、何も言わなくても周りがついてくるカリスマ性だとか、
一度キレてしまうと、誰にも手が付けられないところ等、性格はそっくりなのだ。
「あと、食後のデザートにケーキもあるからな。」
そう言ってサンジが全てを机に並べれば、嬉しそうに微笑む他3名。
(本当、コイツ等可愛いよな。)
他人には滅多に笑わない3人が、毎昼食事の度に、嬉しそうに笑ってくれるその瞬間が、
サンジとしては料理人冥利につきる至福の時なのだ。
ただ、
毎年欠食児のルフィ、全く家事の出来ない隼人、我侭で美味しい物しか食べない恭弥。
自分は来年卒業してしまうというのに、一体コイツ等はどうやって生きていくつもりなんだろう。と素直な疑問を直接本人たちにぶつけた所、
「よし、サンジ留年しろ!」
と自信満々に返され、ルフィの自慢の麦藁帽子ごと踵落としを決めたのはつい最近の話だ。
(いい加減、自立させねぇとな)
と思いつつも、こうやって誰かにとってめでたいことがあれば、
そのつど完璧な料理を用意するのだ。
自分のことは棚にあげているが、サンジもまた、サンジなのである。
「それにしてもサンジ、
お前今日これ作るの大変だっただろ?」
もぐもぐと、一般人では入れられない量の食べ物を咀嚼しながら伺うと、
「ルフィ、余計なことは言うな。」
ぴしゃりと、サンジから「黙って喰え。」との制止が入る。
そんなサンジの様子に、(あぁ、何かあったんだろうな)と感じた恭弥と隼人であったが、
「何で?なんかあったのか?」
無意識に空気を読んで口を閉じた恭弥とは裏腹に、天然の隼人は、その疑問を口に出して聞いてしまった。
「何でって、俺の誕生日だぞ?
サンジも特別昨日の夜から祝ってくれてるに決まってるじゃねーか。」
さも当たり前、と返すルフィと、
これ以上は何も聞くなと強い視線を送るサンジ。
サンジの表情を見れば、一体ソレが何を意味しているか分かりそうなものなのに、
「徹夜で遊んでたのか?」
だったら俺達も呼んでくれれば…
と、頓珍漢なセリフで追撃する隼人。
もうそれ以上は聞いてやるなと、この四人の中で一番落ち着いている恭弥が、それとなく隼人を止めようとしたが、
「は?隼人、お前なに中学生みたいなこと言ってんだよ。
恋人が一晩一緒に過ごしてすることっていったらセックスしかねぇだろ。」
「!!!!?」
「なんだその過剰反応。女子か。」
わはは、
と豪快に笑うルフィ。
まさかそんな答えが返ってくるとは思ってもいなかったのだろう隼人は、「サンジ、悪ィ」と呟いて、真っ赤になったまま俯いてしまった。
「ルフィ、てめぇ……!!!!」
昼食中の教室で、とんでもないカミングアウトを大声でしてくれた年下の後輩に、
なんでそうもデリカシーっつうもんがねぇんだ!とブチ切れているサンジ。
一般人ならば泣いて赦しを乞うような、殺人的なオーラを出しているサンジに、全く臆することもなく、「まぁまぁ、いいじゃねーか本当の事だし。しししっ」と悪びれる様子も一切なく楽しそうに笑っている。
サンジに襟首を掴まれ、ガクガクと揺さぶり続けられているのにも全動じず、
「なぁ隼人、お前らまだヤってなかったのか?」
よりにもよって、恭弥ではなく隼人へと質問を投げ掛ける。
「う、えっ……?!そ、そんなこと何で……!?」
しどろもどろで答える隼人。
最早、ルフィより年上だという影もない。
「そっか、まだか。」
うまく答えられない隼人を、持ち前の勘で見極め、勝手に答えを出す。
(だったら最初から聞くなよ……。)
ルフィ以外の人間に、隼人が同じ質問をされたら、完全にキレているところだが、
やはり恭弥にとってもルフィは弟みたいな存在であり、大抵の事は許してしまえる。
……例え、隼人が茹でダコみたいになって机に突っ伏してしまっていても、だ。
そんな兄心を発揮している恭弥に向かって、弟分のルフィは
「恭弥、おめーつぅことはまだ童貞か?」
「ヤメロっつってんだろルフィ!!」
とんでもない爆弾をお返しした。
あまりの直球で、さらにとんでもない衝撃を与えられた恭弥は、
目を丸くして固まっている。
怒るにも怒れない(怒れば童貞だと肯定するようなものだし、違うと否定すればただの嘘つきだ。)そんな状況をみかねた四人の中で一番兄貴分であるサンジが、ルフィに教育的指導と言う名のケリを炸裂させる。
とはいうものの、一番弟分であるルフィに組み敷かれているのだから、なんとも言えないが。
「オラ、ルフィ謝れ!!!!」
「わりーわりー、」
とても謝っているとは思えない軽さだが、ルフィはそういう奴だ。仕方ない。
「あ、そーいえば……
これ恭弥にやるよ誕生日プレゼント。」
「何…?ありがとう。」
そう言ってポケットから取り出したのは、可愛くラッピングされたピンクの包み。
仲直りの印か?と隼人と恭弥は思ったが、
なんとなく見覚えがあり、嫌な予感がするサンジは、顔をひきつらせる。
「おう、いいぞ。
エース(兄ちゃん)に貰ったんだ。今日使え。」
そう言われ袋から出せば、とんでもなく卑猥な形をした大人の玩具とあらゆる種類のゴムの数々。
そうだ、あの家系は、基本的に常識外れなのだ。
「サンジはそういうの、嫌がるからな。
使ったらエースに感想教えてやってくれ。」
「……ゴムは自分で使えばいいじゃない。」
「んにゃ、俺等は毎月気に入ったやつ箱買いしてっからいらねー。」
もう怒る気にもなれない項垂れたサンジと、
道具を見ただけで真っ赤になって固まってしまった隼人。
このとんでもない一番年下の男と、
「ふーん、いつか使うよありがとう。」と不適に笑うこの男。
教室内は、誰も動けないくらいピンクな空気を充満させて、
当人二人はそんなことには気にも止めず、その玩具の使い方を、「あーでもない、こーでもない」と話し込んでいる。
この玩具達を、恭弥が今日使うのかどうかは当人次第だが、
((誕生日じゃなかったら、速攻シメてやるのに!!!))
この金銀コンビの機嫌を治すのは、本日中には無理だろう。
end