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無我夢中に非難

最近、飯もろくに咽を通らねぇし、やたら吐き気がするとは思ってた。
頻繁に手ぇ出してくる雲雀にうんざりして怒鳴りつける回数も増えてたし、
煙草にもあまり手が出なくなっていた。

やたらと睡魔が襲ってはくるが、寝不足なのはいつものこと。

だから別段、気にも止めていなかった。


baby baby baby

 


ヴァリアーとの会食中、急な吐き気に耐え切れず、
重要な話し合いの最中だったにもかかわらず、逃げるようにトイレに直行した。

どう考えても異常な事態。
皆が心配するから早く戻ろうとは思うのだが、
あまりの吐き気にトイレから出られない。

しばらく洗面台に縋り付き、ふと顔を上げると、鏡に映ったルッスーリアと目が合った。

「調子悪いの?」
皆、心配してたわよ。

と独特のオカマ口調で話しかけられる。

なんでてめぇ女子トイレに入ってんだ。
と、いつもの憎まれ口も出てこず、普段から白い顔を更に白くさせた獄寺は大丈夫ではないことを目線だけで告げる。

最近続いていた食欲不振のせいで、先ほど食べた料理なんて少量に過ぎない。
既に胃からは全て出てしまっているはずなのに、吐き気が収まる様子が一向にない。
まさか……毒?

「10、代目は無、事か…?」

「えぇ?……あぁ、いつもどおりよ。別に食事に毒が盛られていたわけじゃないと思うけど。」

獄寺の言葉の意味を正しく理解し、的確な答えを返す。流石ヴァリアークオリティだ。
兎にも角にも、10代目で狙いでないならそれでいい。
そしてルッスーリアがここにいるということは、ヴァリアーも全員無事だということ。つまり、
「俺、狙いか……」


こんな生活をしているのだから、恨みを買うのは当然だし、復讐されても仕方のないことなんて星の数ほど行ってきた。
それにしても料理に毒を盛られるなんて……そんなものが入っていたら、匂いの時点で気付いたハズだ。
むしろ全く分からず食べ続けるなんて、俺の注意力でも落ちていたのだろうか。

「そんなに心配しなくても、その症状は毒物関係じゃないと思うわ。
だって、アナタの食事に毒が入っていたらベルが気付くし、食べさせないもの。」
沢田綱吉のに入っていたって無視するでしょうけど。

「馬鹿いってんじゃねぇよ」

後半、とんでもない言葉が出ていたが、食って掛かる余裕もない。
とりあえずあのナイフ野郎が食べさせないって意味が分からねぇが、
毒じゃないと言い切るのであれば、一体これはなんだっていうんだ。

そうこうしているうちに、また吐き気が襲ってきて、出すものもないのに洗面台に縋り付く。

「そういえばアナタの部下から聞いたけど、最近体調が思わしくないんでしょう?病院には行ったの?」

……誰だ、オカマに情報を流してる奴は。
「ずっとダルそうにしてるし、食事もろくに取らずに吐いてるし、って心配してたわよ。」

シャマルにでも見せればいいのよ。というか、別にアジトにいる医者なんてシャマルだけじゃないんだから、とにかく誰かに見せなさいよ。
と一頻り呟くと、ふと黙り込む。


「……もしかして。」

なにか思い当たる節でもあったのだろうか、ごそごそと大き目のポーチを漁り、
小さな箱を取り出す。

「これ、使ってみなさいよ。」

そう言われて見れば、パッケージにはでかでかと『妊娠検査薬』と書いてある。

「は…?なんでこんなもの……」

お前が持っているんだ。
この世で最も必要のない人種だろう。

と、思ったが失礼過ぎるので黙っておく。

「いいから使いなさい。」

獄寺の心露知らず、無理矢理手に握らせ個室に押し入れる。


こんなもの……と、思いつつも思い当たる節は見境なくある。
というよりも身に覚えがありすぎて冷や汗すら出てきた。

大丈夫大丈夫そんな訳ない。
と念じながらも
恐らく、間違いなく、反応が出てしまう気がする。
何故今までこの可能性に気付かなかったのだろう。


「………嘘だろ。」


完璧にはっきりと線が出ている。
何回見ても、何度見ても陽性だ。

「ど、うしよう…」

何がなんだか分からない。
誰の子かなんて一目瞭然。
でも、だからって……!!


「じゅ、っじゅうだいめぇぇぇぇぇぇ!!!」

「え、ちょっと待ちなさい!!」


止めるルッスーリアの言葉も聞かず、検査薬を持ったまま女子トイレを飛び出した。

 

 

 

 

 

 


++++++++++++

 


「いや、俺は今までよくデキなかったなって思うよ。」

あまりのパニックに、検査薬の陽性反応を沢田に見せつけながら、
ボロボロ泣き、言わなくてもいいような雲雀との性生活を語った結果、
返ってきた言葉がコレだ。

「じゅ、十年間こんなことなかったから……」

大丈夫だと高を括っていた。

「あ、10年も前からそんな関係だったんだね。」
「おれ、子供なんて出来たらっ、マフィアとしてやっていけない…!!」

遠くを見ながら話す沢田の声は全く届く様子もなく、
ぐずぐず泣きながら、どうしようどうしようと焦る獄寺。

獄寺をあやすルッスーリアと、聞きたくもない二人の性事情を聞かされて顔面蒼白の沢田の後ろでは、ベルとスクアーロが荒れている。
「雲雀殺す」と直接的な言葉が聞こえてくるこらいだ。


「俺、今すぐオロしてきます…!!!」
「え!?ちょっと駄目だよ!!」
「そうよやめなさい!」

とんでもない決断をさくっと決めて立ち上がる獄寺の肩を、
これでもかという強さでイスへと押し戻す。

「いいえ、子供なんて必要ありません!!」

それでもなお立ち上がり、このまま放っておいたら自分の腹を子供ごと刺して殺しそうな勢いの獄寺を必死でとめる。

「必要ないなんてなんでそんなこと言うんだ!」
「初めての子供をオロすと、次出来にくくなっちゃうんだからね!!」

必死で止める沢田は今にも掴みかかってキレそうだ。
人の命を大切にする沢田には、獄寺の言った「子供は必要ない」という台詞に怒りを覚えたのだろう。

しかしながら現在の獄寺は妊婦。
そんな無体も出来ず、
強く怒っては半泣きになる獄寺を見て、オロオロと出しそうになる手を彷徨わせている。
論点がズレているルッスーリアは、この際無視だ。

「じゅうだいめぇ…」

「こんな時に甘えた声だしても駄目!
雲雀さんだって相談してないのに、そんな事言ったら絶対怒る。
二人で作った新しい命じゃないか!」

「ひ、雲雀には言わないでください!!」

蒼褪め、叫ぶ獄寺に驚き、
「え?だって雲雀さんとの子供で間違いないんでしょ?」と言葉をなくしていると、

「アイツ、たしかにゴムも付けずに、毎晩毎晩2回3回とサカってますけど、別に俺達付き合ってるわけでもなんでもないんです!
ただ、アイツがアジトにいる間は、外の女と会えないから俺を使うだけで……
あ、あと後ろからガツガツ突っ込んでも、抜かずに何回も無茶しても、俺が頑丈で面倒がないから、本当それだけの理由なんです!
実際外で仕事してるときなんて、一切俺の相手はしないんです!っていうか外にいるときはいつも女つれて歩いてるし、帰ってきた直後なんて女物の香水の匂いが体中からするんです!
……でも、俺の腹の中にガキができたって知ったらアイツ絶対責任取るとか言うと思うんです。
だから駄目です!!アイツの枷になりたくないんです、言わないでください!」


いきり立って言う獄寺に、
あの他人に興味のない雲雀がアジトにいる言い寄ってくる沢山の女にも目もくれず、毎晩わざわざ獄寺を選んで相手にするのに、使い捨てだなんてそんなわけねーだろ。
しかも後ろからとか、抜かずに何回も…とかそんなくだりいらねーよ。と心の中で毒づく沢田とルッスーリア。
確かに任務の遂行上、女と寝て情報を得なくてはいけないこともあるので否定はできない。
しかし、どうでもいい女との間に子供が出来るだなんて最も面倒なヘマをあの雲雀がしでかすハズがない。

「『孕めばいいのに』とか言いながら、ナマでやるからいつも止めるんですけど、全く言うこと聞かないし……
アイツ、体力が底なしの馬鹿だから、俺が意識飛ばすまで何度もナカで出すし……」

もう黙れ。と言ってやりたい。
獄寺のこの余分な発言のせいで、
スクアーロとベルは怒り狂い、既に武器まで装備している。

ルッスーリアに関しては「私、ちょっとあの子に興味でてきたわ〜v」なんて頬を染めている。

いくら興味があるといっても、絶対にルッスーリアなんて相手にしないだろう。
まともなのは俺だけだ。

と思いつつも、ルッスーリアと雲雀さんだったらどっちがどっち?と考えている沢田も、最早まともとは到底言える状況ではない。


混沌とした雰囲気の中、意を決したように
立ち上がる獄寺。

「俺、決めました。」

突然、凛と響いたいつものはっきりとした声に、
とうとう正気を取り戻したか。と別世界に飛んでいたそれぞれの思考が戻ってくる。


「おろすのが駄目だって仰るなら……俺、山本に頼んできます。」
「何を?」

何故、ここで山本の名前がいきなり出てきたのか。
基本的に山本の名前が挙がるときは、良い話は出ない。


「コイツの父親になってくれって。」
「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」


どう決心したらそういう結論が出るのだろう。
雲雀の枷にはなりたくないのに、山本には他人の子供を押し付けるなんて、
なんという失礼な心を持ち合わせているのだ。

「雲雀に似たとしたら、日本人の容姿で生まれてくると思うんです。だから、山本なら…」


山本なら、なんなんだ。


「そうと決まれば膳は急げです!いってきます!」


そう言って目にも止まらぬ速さで駆けていった獄寺を見て、
あぁ、母体に急激な運動は禁物だよ。と、どこか遠い気持ちで見つめる沢田。


何故山本に言う前に、雲雀さん本人に直接言わないのだろうか。
雲雀さんを思って言わないことはよく分かったが、それは間違っていると思う。

山本には無茶苦茶なお願いができても、雲雀さんにはできない。

そこまで雲雀さんに遠慮するなんて、獄寺くん自身が雲雀さんを好いてない限り、こんな思考は出てこないだろう。
まぁ、その思考事態が間違っているのだけれども。


とりあえず、獄寺くんが山本に「結婚してくれ」とでも言うよりも先に、今の事態を正確に山本に伝えなければ。
本当の間違いが起こってしまう。


「おい、沢田早く姫を止めにいけよ。」

なんで俺、こんな役回りなんだろう。

 

無我夢中に非難

「っていうか、山本武よりウチのボスの方が最適よねv」
「…もう黙ってください。」

 

END

 

 

more...!

アニカレ


※女体注意!サンジは19設定です。







「お届けもので〜〜す!!」

そう言ってチャイムも鳴らさず、我家にでも帰ってきたかのように家に上がってきたのは、家が隣のエース。
目下、姉の恋人の座を狙い奮闘中…だそうだが、当の本人は全く気付いてない。
報われない恋をもう長いこと。本人曰く「初めて会った時から、ずっと好き」ということらしいので、少なく見積もっても10年だ。(1の単

位は切捨てだ。)


「お、エースか。なんだなんだ?」

そう言って、晩御飯の食器を洗っていた手を止めて、リビングの扉を開いて出迎える。
ピンクのエプロンが、きれいなハニーブロンドと白い肌に良く似合う姉は、現在キャミソールと惜しげもないほど太腿を晒しているショートパンツを着用している。

あ、やばい。と思ったが時既に遅し。
「え、ちょ、何、どーしたの!?えっ!?」と焦ったエースのうろたえた声が聞こえたので、おおかた裸エプロンだとでも思たのだろう。
そんなエースに全く気付く様子もなく、
「おぉリンゴかぁ〜。」という嬉しそうな姉の声が聞こえたので、恐らくエースには見向きもせず、
お土産のリンゴに夢中になっているのだろう。


「隼人〜!エース、りんご持って来てくれたぞ!」

という姉の声につられて目をやれば、
耳まで真っ赤にしたエースが、姉の後ろをバツが悪そうに歩いてきた。

姉が両手に抱えるように持っているリンゴの箱。
女性に対して甘いエースが、決して軽くはないであろうダンボールを姉に持たせているこの状況を見ても、
もはやエースに冷静な判断ができていないことが見て取れる。

というか、エースの両手は自分の顔を押さえている。


姉に重い物を持たせるなんて、使えない奴。
と罵りながらも、正直哀れでならない。


「まずは生で食べたいよな!」

と意気揚々と台所に引っ込んで行った姉を確認し、
へなへなと、腰砕け状態で座り込んだエースに近寄る。

「ドンマイ」
「……俺、男として意識されてないわけ?」
「ドンマイ。」


…まず、生で頂きたいのはリンゴじゃねーよ…
とボソボソ聞こえてきたが敢えて無視。

正直、自分もエースは好きだし。将来兄として迎えてやってもいいとは思っているが、なにぶん相手があの鈍感な姉だ。
もうちょっと押してみろよ。と助言でもしてやりたいところではあるが、面倒なのでやめておく。


「隼人ー、リンゴ切ったぞー。」
「いま行く。……ほら、エース」


立ち上がれそうもないエースの手を引っ張って行くと、いつの間に切ったのか。大量のうさぎリンゴ。



「お、お前らそうしてると本当兄妹みてぇだな。」

屈託なく笑い、エースにしてみればとんでもない爆弾発言をかましたのにもかかわらず、

「見てみろ。すげぇ蜜だろ、食べ頃だ。」


サラリと流し、リンゴの話に戻る姉。
確信犯ならとんでもない小悪魔だ。


きっと隣で固まっているエースは、「俺を本当の兄妹にしてくれ」とか「食べ頃なのはサンジだ」とかいろいろ頭の中を駆け巡ったんだろうけど、結局1つも口にはしなかった。

もうちょっと押せよ。とも思ったが、
どうせ言ったところで通じねーから意味ないか。


それにしても、
「量、多くね?」

いくらエースが良く食べるほうだからといって、切り過ぎではないだろうか?

「ん?あまりにも美味しそうだったから、つい切っちまった。恭弥でも呼んでやれよ。」
「あ、バカっ!」
「……恭弥?」

誰だソイツ。
と言わんばかりの目で見てる。


「エース、隼人のこと大好きだもんな。このシスコン野郎。
恭弥は最近できた隼人の彼氏だよ。」

「ふーん、なんで教えてくんなかったの?」

「や、別に意味は……」

いつもニコニコしてるエースがちょっと意地悪そうに覗き込んでくる。
ちょっと拗ねてる顔だ。


すぐ言っても良かったんだけど、世間一般の父親張りに反対とかしてきそうで言い出しづらかったんだよ!
なんて言ったら本当にやりそうだから言えないけど!

「あぁ、そっかエースはまだ会ったことねぇもんな。ついでだし紹介してやれよ。『お兄ちゃんです。』って。」
「や、それ……」
どういう意味を込めて言ったらいいんだよ。誤解生むぞ。
っていうかこれ以上余計なこと言うんじゃねぇ!!

「…どんなやつ?」

あ、ちょっとエースの機嫌がよくなった。


「普通だよ。普通。」

っていうかあんまり会わせたくない。アイツ愛想とか良くねぇから、親への挨拶とかには絶対向いてねぇ。
……エースは親じゃねぇけど。

「普通って?」

俺に聞いても無駄だと、長年の付き合いで分かったのか、
代わり姉に説明しろ。と目で訴える。

「あー、…俺は結構気に入ってるぞ。
なんつーかそうだな、目が鋭くて隼人以外の前だとかなり殺気だってんだ。
例えると、昔のゾロみたいだな!」

「へぇー……ゾロ、ね。」

ぎゃぁぁもうやめて!
気に入ってるとか言ったあとにゾロの名前とか出すんじゃねぇ!
エースの目、据わってるから!

「あれだ。愛嬌とかなくて愛想も悪ぃな。エースとは正反対だな。」

「俺と正反対で、サンジは気に入ってるんだ。」


地雷だ。
もう怒りと嫉妬で口だけが笑ってる。

大好きな姉が、今日は憎い。


「隼人、彼氏さん呼んでくれる?俺、見てみたい。」


ニコリともしない顔で言われれば、頷かざるおえない。
縦に首が千切れるんじゃないかってくらい振る。

つーか、エースが怖い。

「なーに怒ってんだエース。そんなに隼人に彼氏ができたのが悔しいか。」

そう言ってカラカラ笑う姉に、本物の殺意を覚える。
いつもは姉が笑っていると、柔らかい顔して見つめているエースも顔が強張っている。


「恭弥、可愛いんだぜ〜」

そんなエースの様子に気付くことなく、ニコニコと喋りかける姉は、
肝が据わっているというか、神経が図太いというか、馬鹿というか……


雲雀を褒める=ゾロを褒める
みたいな図式がおそらくエースの中に成立しているのだろう。

こんな状態で紹介される雲雀の身にもなってほしい。
なんていうかもう、最悪の事態しか予想できない。



そうこうしているうちに、玄関のチャイムが鳴る。
雲雀だ。

とうとう来てしまった…
けど今はやばい、なにがやばいってエースの目が据わってて、
徐に玄関に向かいだしたのがヤバイ。

「ちょ、エース待って俺が出るから!!」


急いで大きな背中を追い越して扉をあける。
ゾンビみたいに歩くエースを追い越すなんて造作もない。


「雲雀っ!」
「こんばんは。どうしたの血相変えて?」

どうしたもこうしたもねぇ!
最悪の場合、お前殴られるぞ!あの太い筋肉付の腕で殴られたら、いくら雲雀でも意識飛んじまう!!
つーか顔が変形する!!

この事態を理解しておらず、冷静な雲雀が今はちょっと羨ましい。


「よっ、恭弥久しぶり。」

そんな俺の心も知らず、暢気に顔を出す姉。
一瞬、雲雀の顔がぎょっとしたが、すぐいつもの顔に戻った。
……そーいやぁ、前から見たら裸エプロンみたいな格好だったな。


「夜遅くにすみません。リンゴ頂きにきました。」
「いや、こっちこそ呼びつけて悪かったな。」

姉の格好には特に触れず、丁寧に挨拶する。
猫被りもいいとこだ。


「……こいつが彼氏?」
ゾロ似の?と聞こえてきそうな怪訝な台詞。


確かに目付きとか喰えねぇ態度とか、猫被りなところ(なんで分かった)は似てねぇこともねぇな…。
でも、アイツの中学時代はもっとゴツくてこんなひょろくなかったし、色白すぎじゃねぇか。

とか、いろいろ聞こえてくる。
エース、大人気ねぇ……。

自分で言うのもなんだが、エースにとって俺は可愛い妹みたいなモンだ。
やっぱりゾロ似だろうがなかろうが、俺に手をつけたって時点で処刑レベルの大罪人にみえるんだろう。

だが、手ぇまでだしてこないところをみると、
ゾロとあまり似てなかったのが良かったのだろう。
(というか、俺から言わせればゾロと雲雀は全く似てない。)


「悪ぃな恭弥。
コイツ、隼人のこと妹みたいに可愛がってるから、隼人に彼氏ができて面白くねぇんだ。」

「そうですか。ということは、お姉さんの恋人?」

姉はエースの態度に一応フォローをいれている。すこし感謝。
エースもエースで、雲雀の恋人発言に、少し気分がよくなったみたいだ。

しかし、
「コイツ、エースってんだ。家が隣なだけで恋人じゃねー。
今日はエースがたくさんリンゴ持ってきてくれて美味しそうだったから、恭弥も呼んだってわけ。」

「そうでしたか。」

あっさり恋人の部分を否定した姉に、項垂れるエース。
どんまい。と心の中で合掌して雲雀を見ると、
「なんだ、恋人じゃないなら猫被る必要もないな。むしろこの家に頻繁に出入りしていて『兄』という家族のような称号を得ている男……邪魔だな」
と顔に書いてある。
というかそう思っているのが分かるほど悪い笑み。
それに、先ほどのエースの先制攻撃(主にひょろいと言われたあたりだろう)よほど堪えているのだろう。


あ、ちょっとまずいかな。と思っているとリンゴを取りに姉が台所に戻って行ってしまった。


「アナタ、お姉さんの恋人じゃないんだね。
そういう目でアナタが見てるから、てっきりそうなのかと思ったよ。
まぁお姉さんはそんな目でアナタのこと見てないようだったけど。」

「ちょ、雲雀…!!」

何、藪から棒に喧嘩売ってんの!?

「ま、お姉さんそういうことに疎そうだし、
何より、妹の恋人…仮にも血縁関係でない男が家まで来るのに、あんな格好で出向かせるなんて男として失格だよ近所のお兄さん。」

「……なかなかいい性格してんじゃねーか。」


ちょっとやばいってこの空気。
リンゴなんかいいから戻ってきて!!


「てっきり前回会った緑頭の人が彼氏だと思ってたよ。お似合いだったし。」
「よし、表出ろクソガキ。」


エースの殺気に気付いた姉が、台所から飛んできたが時既に遅し。二人とも庭に出て行った。


派手な乱闘音と罵りあう声が聞こえる。
素手のエースが雲雀のトンファーを受け流す。

「あー…あぁやって喧嘩してると、本当ゾロと被るなぁ。
恭弥の本性が見てみたくてエースに吹っ掛けさせたけど、恭弥も大概短気だよな。」


全部わざとだったのか……
姉の計算高さに驚きつつ、そのせいで争う羽目になった二人が哀れに思う。

何はともあれ姉のせいで、
雲雀がエースに認めてもらえる日は、恐らく一生来ないだろう。



END

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