※ 雲獄ですが、暗いです。
シリアスとかではなく、ただ暗いです。









彼は時折、雨に濡れたがる。


それが、自宅のマンションのベランダであったり、歩道橋の上だったり。


今日はたまたまそれが、屋上だっただけ。






彼が雨に濡れたがる時は、大抵何か悲しいことがあった時。
彼の心にも雨が降っている時。


雨か涙か分からない水が、彼の頬を滑り落ちる。




本当は僕が、彼が何に苦しんで、
何を悩んでいるのか、聞いて、守って、抱きしめてあげるべきなんだと思う。



だけど、僕はあえてソレをしない。






彼を悩ませている原因なんて、大方あの草食動物の事だろう。

僕が彼に手を差し出さないのは、
あいつに関しての悩みなんて理解できないし、分かりたくもない…という理由が3割。

自分自身、あの草食動物に嫉妬するなんて、馬鹿げていると思う。(だって獄寺が沢田に対して恋愛感情なんて無い)



そう、心では分かっているのに苛々してしまうのは、
案外僕の独占欲が強いからだろう。




それと、
あのヘラヘラした、獄寺に纏わり付く男を連想させる雨なんかに、全身を濡らしていることへの苛立ちが2割。


わざわざ雨に当たらなくたって、シャワーでもなんでもいいじゃないか。


だけど、自分がアイツにまで嫉妬しているなんて事、知られる訳にもいかず、
ただ、獄寺の気が済むまで、雨に濡れる彼を、ただひたすら待ち続ける。



ほかって置けばいい。無理矢理止めさせればいい。


確かにそうかも知れない。


だけど、悲しみから帰ってきた、
冷たくなってしまった彼を、1番最初に暖めてあげるのは、僕の役目。



壊れてしまった彼を、傍に置いておくのは、
恋人の特権でしょ?







(彼に手を差し出さない理由の残り5割が、
もっと壊れてしまえばいい。なんて思っている僕は、
きっともっと壊れてる…)







End