スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

我が征く道は196

凪子はゆっくりと身体を起こした。宝具展開が安定期に入るまでの数分は、凪子はアトゴウラから離れることができない。
凪子はその位置から、忌々しげに自分を見下ろすギルガメッシュを見上げてにやにやと笑った。
「すごいでしょう。最高にネガティヴになってた時に出来上がった絶対拒絶領域宝具がこれだ。聖杯の泥であろうが、お前の対界宝具の攻撃であろうが、この結界にはヒビひとつ入らない。これは一種の、精神の守りだからね。私の場合は守りたいとかそういうきれいで可愛い気持ちはないから、いっそ呪いの域に達しているけれどもね」
「………ハッ。そうして防ぐだけに何の意味がある」
ギルガメッシュは忌々しげな表情を浮かべながらも、いたって冷静な様子でそういった。なまじ王様や英雄であり、また千里眼を持つというだけのことはある、といったところか。
凪子は、チッチッチ、と指を振った。
「防ぐだけ?そいつは違うなぁ。言っただろう、私は参戦しに来たと。とりあえずその少年の邪魔はしないけど、少年とお前の勝負がお前の勝ちで終わったら、次の相手は私ってことさ」
「ほぉ?聖杯戦争には関与しないのではなかったのか?人形は見捨ておいたというに」
「そりゃああれは、サーヴァントとサーヴァントの戦いだったからね。でもこの戦いはそういうものじゃあない。お前という人間と、世界の戦いだ。そうであるならばそれは聖杯戦争の枠組みを超える。私は世界の側についた、というだけのことさね」
「貴様がそれまでに人間に入れ込んでいたとは意外だな」
「その言い方はちょっと語弊があるな。確かに人間は嫌いじゃあないが、私がその少年の手助けという形をとってまでお前の邪魔をする理由はただひとつ」
「?」
すらすらと、互いに流れるように言葉を交わしていた二人だったが、ギルガメッシュがわずかに不可解そうに眉間を寄せた。凪子は、ピッ、と中指をたててギルガメッシュに向けた。

「―お前は私に喧嘩を売った。お前は私を怒らせた、ただそれだけのことさ」

「……っく、ははは!この期に及んで世界の命運なぞではなく、私事だけで動くとはな!!全く、貴様に振り回される人間はたまったものではないな!」
「そっくりそのまま、その言葉アンタに返すわバカヤロウ。おい、少年!エミヤシロウ!!」
「うぇっ、」
ぽかんとしたような、呆然としたような様子で腰を抜かしていた士郎は、凪子の突然の呼び掛けに肩を跳ねさせた。凪子はじとり、とした目で士郎を見下ろす。
「はよ立て。お前が倒すんだろう」
「な……言っておくが、俺はまだアンタを許しちゃいないからな!」
「そいつは結構。それは人間らしい感情だ、君には大事なことだ。忘れちゃいけないよ。君は、人間だ。それから逸脱することは可能な限り避けなきゃいけないよ。…私のような化け物にも成りきれない、生き地獄になるだけだ」
「………?あんた、何を言って…」
「攻撃来てるぞー!」
「!!」
士郎は突然凪子が語りだした言葉にきょとんとしていたが、気持ちを建て直したらしいギルガメッシュが扉を展開し始めたのをみとめた凪子はわずかに声を張り上げた。
はっ、と我に帰った士郎は両手に双刀を―見慣れた双刀を投影し、ギルガメッシュに向き直った。凪子も凪子で、槍を手元に呼び出し、ぱしりと握る。
「…アンタのこと、信用していいのか」
「それは君次第だな。信用するのもしないも好きにしな、私は君が私を信用しようがしまいが、やることは変わらない」
「…ったく、アンタも大概厄介だな!」
「っは、青二才が言うじゃないの!」
ギルガメッシュが扉から武器を射出にしたのに合わせて、士郎は地面を蹴り、凪子はぐるりと槍を手元で回して構えた。
続きを読む

我が征く道は195

「――ほう。骨の髄まで燃え尽きたと思っていたが、まだ生きていたとはな」
「…!て、めぇ…っ」
山門を抜け、境内に足を踏み入れた凪子に先に気がついたのはギルガメッシュだった。寺の本殿の屋根の上にたつギルガメッシュは、片手にエアを持って凪子を見下ろしている。にやにやと笑うその顔に、べー、と舌を出し、ギルガメッシュに次いで反応した士郎の方を軽い気持ちで凪子は探した。
士郎は攻撃でも食らったのか、服のあちこちを焦げ付かせながら地面に仰向けで倒れていた。ぜぇぜぇと肩で息をしながらも、気持ちだけは元気なようで凪子を睨み付けるように見ている。
凪子はやぁ、と、士郎に対してはヒラヒラと手を降ったあと、ギルガメッシュを見上げた。
「骨の髄まで燃え尽きた、と言ったな。成る程道理で再生までに時間がかかったわけだ」
「再生…か。もしやあの塵の状態から一から組み直したとでも?」
「そこは自動でやられることだ、よくは知らん。少なくとも確認している限りじゃあ新しいのが生えたりとかはしないんでね。私の蘇生はそういうもんさ。残念だったねぇ、対界宝具まで使った相手が結局無傷で」
「…………ふん、まぁよいわ。で、何をしに来た雑種。観戦というには些か勝手が過ぎるが?」
「そりゃあそうさ、観戦じゃあない。参戦しに来た」
「何?」
ぴくり、とギルガメッシュの眉が跳ねた。士郎も驚いたように凪子を見上げている。
凪子はポケットに突っ込んでいた手を出し、す、とその手を上にあげた。
「――北欧の天地、7つの大地、3つの大海。
 我が在りしは何処にもなく
 我が還りしも此処にはなし」
凪子は詠唱を開始する。それに合わせて足元に広がるのは、アルギス、ナウシズ、アンザス、イングスのルーン。――つまりは、アトゴウラ。
凪子にとって、赤枝の騎士団が持つような相手に対する束縛のゲッシュとしてての意味は持ち合わせてはいないが、凪子の退却を封じる楔のようなものだ。
大地に繋ぎ止め、その存在を“固定する”。
「………」
忌々しげに凪子を見たギルガメッシュは宝物庫を展開し、いくつかの宝剣を凪子めがけて投げつけた。だが、それは凪子の手前で見えないなにかに弾かれたように砕け散った。
「何――?」
「――我が在りしは今、我が還りしもまた同じ
 過去はなく、未来もなく、郷愁も羨望もこの身に有らず――!」
ぶわり、と、アトゴウラの陣から風と、赤い光とが溢れ出す。それと合わせて、ばらまいてきたルーン石がある位置からも、細い、まばゆいばかりの赤い光の筋が立ち上る。
「なんだ…?!」
事態を飲み込めていないらしい士郎の戸惑った声が凪子の耳に届く。ギルガメッシュも予想がついていないのか、凪子への妨害も忘れて辺りを見回している。畳み掛けるなら今しかない。
凪子は上げていた手を勢いよくアトゴウラに振り下ろした。

「我が魂に隙間なし 我が魂に行き場なし―
 我が征く道は虚無の道!
 我が在る場所は伽藍堂!
 我が存在 我が行い ヒトの世に在って意味はなし!

 ――グ・レイル・スタクル・クルー・ラーヘ
 “全て無意味な有形存在” !!」

――第二宝具、展開。
立ち上った光の間に、透明な光の筋が走り、そうして半透明な壁が空に浮かんだ大聖杯によって開けられた孔を覆うように展開された。
「更なる宝具だと?!」
苛立ったようにギルガメッシュが声を張り上げた。
凪子はアトゴウラに手を添えたまま、そんなギルガメッシュの様子ににやりとした笑みを浮かべた。

―全て無意味な有形存在。
それは、凪子がかつて自分を評した言葉でもあった。確かに存在しておきながら、その存在はどこにも居場所はなく、どこにおいても意味がない。
選択された領域内で起こりうるその全てを、無意味に帰する絶対防御宝具、それが凪子の持つ防衛宝具だった。

我が征く道は194

――――そうして、夜が来た。

凪子は昼間のうちに、大聖杯のある地点を中心に、半径3キロの円を描くようにルーン石を適当に設置しておいていた。本来なくても平気なものだが、念には念を、というやつだ。
そうしてその作業を終えたあとは、事が起こるのを寺に続く参道の下で姿を隠し、待っていた。


夜もふけた頃、セイバーが一人姿を見せた。そのまま参道をかけあがって寺に向かったように見えたが、そのセイバーの行き先を塞ぐようにアサシンが姿を見せた。
「(…あいつまだ生きてたんか。タフだな……)」
キャスターはとうの昔に倒れている。いくら契約のよりしろがキャスターというより山門であり、ここが魔力に満ち溢れている場所であるとはいえ、単独行動スキルを持っているわけでもなく、マスターを失ったサーヴァントがまだその存在を保っているというのはいささか驚きだった。
どうやらアサシンはかつてセイバーと誓った再戦の時を待っていたらしい。セイバーにしてみればそれどころではないだろうに、どうやら受けてたつようだ。
「(まぁ、こうやって私がいるわけだから、万が一ということはないけども)」
凪子は階段で戦闘を始めた二人を遠目に見ながら、小さくため息をついた。今はあまり観戦をしている気分ではなかったし、それで肝心のものを見落としても困る。
凪子はあくまで、意識は寺の方へと向けていた。

――事が起こったのは、それからそう幾ばくも経っていない時のことだった。
「―――始まったか」
空にぽっかりと、暗い穴のようなものが開く。そしてそこからあふれでる、泥。
間違いない。ギルガメッシュが大聖杯の起動を始めたのだ。
「(…さて、セイバーがアサシンに捕まっちゃった以上、恐らくギルガメッシュの相手をしているのは少年一人。凛ちゃんは聖杯の起動を止めるべく動いてるだろ。小聖杯の器が誰になったのかは知らんが…どうせ凛ちゃんのことだ、それがなんであれ、器の人間そのままに壊すことはできないだろうからな。全く、確率よりも自分の信念を大事にするんだから世話がやける。まぁ…そういう若さ、嫌いではないけどさ)」
凪子はそんなことを思いながら目眩ましの魔術を解き、腰をあげた。そのまま戦闘を繰り広げるセイバーとアサシンに構うことなく、階段に足をかける。
「…ッ!?一般人?!」
先に気がついたらしいセイバーがぎょっとしたように凪子を見、動きを止めた。それでアサシンも凪子に気がついたらしい、おお、と小さく声をあげた。
「今宵は姿隠しもしないのか?春風殿」
「!?貴様の仲間か、アサシン」
「いいや?」
「やぁ、頑張るねぇ佐々木の小次郎。まぁでも気にしなさんな、私が用があるのはアッチだ、今日は観戦じゃない」
「…!何者かは知らぬが貴様、聖杯に何の目的がある」
ふられた言葉に返しながら横をすり抜けようとした凪子に、セイバーが剣を向けた。凪子はそれを見下ろしたあと、ちら、とセイバーを見た。
「そう威嚇しないでも、私は聖杯を横取りしようとかはかんがえちゃあいないよお嬢さん」
「なっ――」
「君らはあの金ぴかを阻止するためにきてんだろう?でもはっきり言わせてもらって、凛ちゃんとあの少年程度じゃ例え最終的なものは防げたとしてもそれまでの周辺への被害は絶対に防げない。私はとりあえずそれを防ぎに来た、ただの通りすがりの凪子さんだよ」
「…………貴様…一体何者だ?なぜそこまで知っていて、」
「君にそこまで説明するつもりはない。ああ、安心するといい、万が一君のご主人たちが失敗したとしても奴の企みはちゃんと止めてやる。これは、私が奴に売られた喧嘩でもあるから」
「!」
「が、だからといって君のご主人たちを守る気はない。そこまで興味ないからね。まぁ、二人の命が心配なら早く決着つけることだね、じゃあね」
凪子はそれだけ言うと更なる追求が面倒なので、強く地面を蹴って数十段階段を飛び越え、山門へと向かった。セイバーは一瞬追いかけてくる気配を見せたがそれよりも先にアサシンが攻撃を再開し、しばらく視線でのみ凪子を追っていたようだったが、アサシンとの勝負に戻っていった。

我が征く道は193

「...春風凪子。君はこの聖杯戦争が終わったら、どうなるのかね」
それから二人は飴で魔力を回復させながら他愛のない会話をいくつか交わし、夜が明けるころにはアーチャーは凪子の拠点を出ていこうとしていた。
お互い、話すべき情報は交換しあった。あとは互いに、なすべきことをなすだけだ。
アーチャーは立ち上がり、玄関に向かったところで、ふと思い出したように振り返り、そう言った。凪子はきょとんとアーチャーを見た後、ふむ、と首をかしげた。
「...そうね。イリヤちゃん埋葬したあと、久しぶりに友人たちの墓参りでもしようかなとは考えてた。それ以外は、ま、これまでと変わらないさ。気ままに、思い付いたままに、旅を続けていくだけ。立ち止まったところで、終われるようなものでもないからね。歩き続けていくだけさ」
「...飽きないものかね」
「ははっさぁね。あんまり考えないようにしてるさ、そういうことは。でもまぁ、君が守護者であるなら、またどこかで会うことはあるかもしれないね。その時、君は覚えていないかもしれないけれど」
「.........」
「そんなかわいい顔をするな、忘れられるのは私の常だ。もう慣れてるよ
。さぁ、お互いやることをやろうじゃあないか。さようならだ、無銘の英雄。私は君という英雄を忘れないよ」
「......、それはどうも、と言っておこう。君の旅路も、幸いあるといいな。では、さらばだ」
アーチャーはそれだけ言うと凪子に背を向け、霊体化をして姿を消した。凪子はそれを静かに見送ると、次の行動までに身体を万全にしておくか、と、飴をまたいくつか含んで、奥の畳の部屋で寝転がった。

聖杯戦争が、いよいよ終わりを迎える。
人の欲望が渦巻く、醜くも、清らかな戦争。

「...介入はしたくなかったけど......さすがに、見過ごせるものではないからな。残念だったね、ギルガメッシュ。お前には運がなかった」
凪子はそう言って、一眠りするべく目を伏せた。



 次に凪子が目を開いたころには、日は高く登ったころだった。ここまでなにも起こらなかったということは、恐らくことは夜に起こるだろう。
凪子は無言のまま身体を起こすと、礼装の上から普通の服を羽織り、家をでた。
凪子は住宅街を抜け、バスに乗り、新都のショッピングモールに向かった。適当な洋服店に足を踏み入れ、ダメになったコートの代わりを探す。ルーンなりなんなりを使えば寒くはないが、それに無駄に魔力を使うのもいやだし、今後も必要になるので防寒具をさがしに来たのだ。
「んー...」
なにかいいものはないかなー、と、ぶらぶらと店のなかをさ迷う。そこでふ、と、赤いコートが目に入った。
大きなフード、ゆったりとしてファーのついた大きな襟、膝下まである長い丈。だが裾は腰元でセパレートになっているらしく、はずしてしまえば短い丈のコートにすることもできそうだ。左上から右下に斜めにチャックが走り、それをその上から止めるように3つ、ベルトがついている。セパレートできるところには腰をまくようにベルトがついており、ここに鞄も留められそうだ。
「...。これにしよ。店員さーんこれくださーい」
凪子はそれを見て少しの間考え込んだのち、値札も見ずにそういって購入を決めた。

「...さて、腹ごしらえといきますかァ」
凪子は買ったばかりのそれに袖を通すと、新都の町へと繰り出した。

我が征く道は192

凪子は冷蔵庫からドロップ缶と新しい水のペットボトルを取り出しつつ、アーチャーの方を振り返った。その顔は不適な笑みを浮かべていた。
「アーチャー。私は基本的に人間の在り方は否定しないスタンスだ。まぁ好き嫌いでいくらでも変わるから嘘をつけとか言わないでね、あくまで基本的なスタンスの話だから。まぁそうなった時、訳の分からん理屈で人類滅ぼします!なんて言う奴、放置はできんだろ。そもそも私を殺そうとしやがったんだ、許すわけないだろ?」
またずるずると四つん這いで戻りながらそう言った凪子にアーチャーはしばらくぽかんとした表情を浮かべたあと、不思議そうに目を細めた。
「……君は、人間が好きなのか」
「全部は好きじゃあないが、だからといって滅んでほしいとも思わない。それに何より、私は人間の限りある生命というところをわりと尊重しているんだ。だからさ、過去の死人が今に口出すなやって思うわけよ。ギルガメッシュは余分な人間が多すぎるみたいなこと言ってたけどさ、それはかつては必要ないと言って勝手に淘汰された人間であっても生きていける余裕のある世界になったということでもあるだろう?」
「…まぁ、一理はあるな」
凪子はぐびり、とペットボトルをあおぎ、ふ、と小さく笑った。

「世の中余分がある方がいいもんだ。完成された形、完璧なる在り方なんてものは、あとはもう崩壊するしかないんだからさ。人類が他の生物と異なり、ここまで進化し、存続しているのは、要するに余分があるからだ。無駄あるからだ。だからこそ改善の余地がある。完成を目指すモチベーションがある。……死に向かって生きるという在り方であっても、希望を生み出せる。私はな、そういう、人間の在り方は好ましく思うんだ」

「…………君でも、そんなことを考えるのだな」
いつになく真面目な言葉に、アーチャーはふっ、と小さく笑ってそう言った。馬鹿にしたような色は含まれていない。
それはきっと、凪子の言葉には、「それは私には絶対にできないことだから」という言葉が含まれていると、分かったから。
凪子はにっ、と快活に笑い、ドロップ缶をあけてジャラジャラと飴を取り出した。
「さて、色々話もまとまってきたところではい魔力」
「ま……その飴がか?」
「凛ちゃんが使ってる宝石程度には魔力つまってるよ。あぁ、大気のマナ魔力変換してるから天然よ」
「はぁ……」
ごろごろと10粒近く差し出すように言われた両手に落とされながら、アーチャーは困惑したようにそれを見る。飴とは思っていなかったらしい。
「あら、存外持つし美味しく食べられるから便利よ」
「宝石と違って飴に本来貯められるような機能はないだろう」
「そこはまぁ色々凪子さんの秘伝の技な訳ですよ。魔術協会と全面戦争やってたときとか、魔力回復が大変だったからさぁ」
凪子はそういいながら、二個ほど飴を口に放り込んだ。アーチャーも手に持ったことで確かに魔力がこもっていることが分かったのか、渋々といったようにそれを口に運んだ。
口に含んで少しして、わずかに目が見開かれる。
「……何が凛の宝石程度だ、ずいぶん詰まってるいるじゃあないか」
「まぁ凪子さんの魔力タンク的にはそれくらい些末な量ですしおすし…」
「…ふん、まぁいい。君のスタンスは分かったが、具体的にどうするつもりだ?」
「んー?少年が戦うんなら、とりあえずそれは尊重しようか。そこはそちらの戦争の話だしね。私はひとまず、聖杯が出すであろう二次災害の防備に徹底しよう。完全なる防御宝具持ってるから」
「ほう?」
「少年も凛ちゃんも失敗して、まぁ君も失敗したら、そんときは私がギルガメッシュ殺して聖杯もぶっ壊す。大聖杯は…あれには近寄りたくないから人間に任せようか。聖杯がなければ何もできないしな」
「…なるほど、承知した」
アーチャーは新たに手にした飴を口にいれ、がり、と歯で噛み砕いた。