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かわいい!<4>

 

「なぁユウ」

「あ?」

「最近さ、見すぎじゃね?」

「だから何がだ」

「美術科のヤツ」

「ブホッ」

放課後の教室で、神田は飲みかけのお茶を吹き出した。

「な、に……言ってんだテメェ!」

吹き出したお茶にむせて咳き込みながらラビを睨むが、それはラビの言葉を肯定しているようにしか見えない。

「マジかユウ!」

「見てねぇよ!」

「ユウわっかりやすいさぁ」

慌てる神田に対してラビも多少驚きを隠せずにいた。

「まぁ人の趣味をどうこう言うつもりは無いけどさ、しっかしまさか美術科にねー」

「……どうこう言ってんじゃねぇか」

「あれ、ユウどこ行くんさ?」

突然席を立ったユウに、ラビはニヤニヤとあまり神田が好きではない笑いを向ける。
居心地が悪くなって逃げるのだろう。
神田はラビの問いかけに答える事なく教室を出ていった。



***



「ラビ、どうだった?」

椅子を傾けてユラユラ揺らしながら座るラビにリナリーが話しかけた。

「んー……。ほぼ確実っちゅーか」

「やっぱり! 最近美術科の子達と会っても逃げようとしないからおかしいと思ったのよね」

「前は喧嘩してたらしれっとどっか行こうとしてたもんなー」

「私が逃がさないけどね」

一通り喋り終えたリナリーは、神田が座っていた席に腰を下ろし深く息を吐く。

「しっかしさ、あのユウがまさか美術科にね……」

「あら、友達として応援してあげないの?」

「応援はしたいさ? ただ素直に応援できるかって言ったら自信ないかも」

「もぉ……。まぁずっと喧嘩相手だったから気持ちは分からなくもないけど。でも私はなかなかお似合いだと思うのよね」

「そうさ?」

「神田と正反対って感じじゃない? そういうのってけっこううまくいくと思うのよね」

「んー……。でもさぁ、まさかユウが……」

「もぉ! しつこいわよラビ」

「だってさぁ! まさかユウが……。


………ロードを好きになるなんてさ」

「……応援しろとは言わないから、せめて邪魔しちゃだめよ?」

「努力するさ」



人もまばらになった教室で、話はあらぬ方向に曲がって突き進んでいた。



end






ホントはアレン君の誕生日に間に合わせたかったのですが……無理でした(笑)


 


 

レス☆12/16

19:05『ウサギシリーズ可愛〜』の方☆


こんにちは!
お返事が遅くなりましてすみません……。
久しぶりにちょっと長めの話を書いているのですが、コメントを頂けて嬉しいですVv
ピュアな神アレを書いたつもりですが、かわいいと言ってもらえて良かった(о´∀`о)
まだ数話続く予定ですが、お付き合い頂けると幸いです!
そして嬉しいお言葉にリッセも癒されましたVv
拍手とコメントありがとうございました!


 

かわいい!<3>

 


良くもまぁ飽きないものだと思う。
もしかしたらホントは仲が良いのかも、なんて思ってしまう。
でなければ、こう毎日毎日顔を合わせるものだろうか。

ぼんやりと、どうでも良いような事を考えながら賑やかな彼らを眺めていた。
今日はティキ先輩まで加わって喧しい事この上無い。
今回の口論の発端な何だったかもう分からないが、大抵はロードやティキ先輩が面白半分で喧嘩を売っているような気がする。
相手を煽るだけ煽り、相手の反応を見て面白がっては飽きたらさっさと帰る。
同じ美術科ながらホントに質が悪い。
そしてなぜ自分はいつも彼らに付き合わされるのだろう。
おかげで僕まで普通科の生徒に睨まれているのだからたまったもんじゃない。

「おい」

「……あ、神田」

「何ボーっとしてんだ」

「いえ、ちょっと考え事してただけです……」

知らぬ間に傍に来ていた神田に驚いて、反応が遅れてしまった。
考え事をしていたのは事実だが、神田が僕に話しかけてくるとは思わなかったから余計に驚いたのだ。

「しっかし……毎日毎日飽きませんよねー」

「あぁ」

「付き合わされる僕らの身にもなってほしいですよね」

「あぁ」

「ロードと先輩がからかうのも悪いですけど、ラビ達も相手しなければいいのに」

「あぁ」

「……神田」

「何だ」

「……いえ」

なんとなく神田が上の空のような気がしたが、人の話を聞いていないわけでは無いらしい。
たいして彼の事を知らないが、日頃から話さないタイプなのだろうか。

(だとしたらあまり話しかけない方がいいのかな)

しかし話しかけて来たのは神田なわけだし、日常化した普通科vs美術科の言い合いはまだ終わりそうにない。
かと言って黙ったとしても、今さらの沈黙は痛い。

(どうしよ……、せめて神田から一言でも話をふってくれたら話しやすいんだけど……)

「お前、ウサギが好きか」

「えっ! はい、あの……えーっと」

あまりのタイミングの良さに声が裏返ってしまい、変なヤツだと思われただろうかと、神田の顔を除き見たが、神田は僕を見てなくて……と言うよりわざと顔をそらしているようで、神田の方がよっぽど挙動不審のように見えた。

「神田?」

「ウサギは好きか」

「えぇ、まぁ」

「……………。やる」

「はい?」

『やる』と胸に押し付けられたのはウサギの小さなぬいぐるみのストラップだった。

「ゲーセンでとった」

「僕がもらっていいんですか?」

「……俺がこんなもん持っててもしょうがねぇだろ」

確かに、神田と言う人間には似合わない。
が、僕だって男なんだからこんなファンシーな小物を持っていたら違和感があるんじゃないだろうか。

しかし、

「……かわいい」

恥ずかしながら、僕は男ながらかわいい物が好きだった。
とくにウサギは本物に初めて触ったときからマイブームが続いていたから、余計にそう思ってしまう。

「ふわふわしてて本物のウサギみたいですね」

「………」

「……ありがとう」

「……っ」

僕が照れと嬉しさで小さく礼を言うと、神田は僕の頭をクシャリの撫でた。
少し乱暴なようで、だけど優しい手のひら。

「そんなに好きならまたやる」

相変わらず僕の顔を見ようとしない神田だったが、大きな手はいつまでも僕の頭を撫でていて、恥ずかしいような嬉しいような、ただ、とても心地好かった。



 


かわいい!<2>


かわいい!
 』の続きです





最近、よく寝坊してジョギングが出来ない。
最近、メシの味がしない。
最近、授業がマトモに頭に入らない。
最近、気がついたらボーっとしている。
最近、




アイツの事ばかり、頭に浮かぶ。




「……――って、神田聞いてる?」

「あ?」

「もぉ! 神田ったら全然聞いてないでしょ」

「そりゃあリナリー、そんなベッタベタなラブストーリー映画はユウは興味ないと思うさ」

「じゃあラビ一緒に行く?」

「えっ!? いや、俺はちょっと用事が……」

自分の隣でお構い無しに騒ぎまくるクラスメイトは、俺の不調には気がついていない。
日頃から何事にも興味を持たないのが幸いしているのだろう、どんな会話にも反応を示さなくても『いつもの事』でかたずけられていた。

いつからこんな事になったのか、何が原因か、それは自分でも良く分かっている。
それは数日前、俺がらしくない事なんかするからこんな事になったのだ。

文化祭の準備中、ただでさえやかましいウチのクラスにわをかけてやかましい奴等がやって来た。
ラビ達も相手にしなければいいものを、いちいちムキになるから下らない言い合いが始まるのだ。
しかしここで黙っていれば回避できるわけでは無く、たまに俺にまで飛び火が降りかかるから迷惑極まりない。
適当に逃げなくては、と視線を移動させたら、ウサギみたいに白い奴が目に入った。
確かコイツは美術科の奴等の連れで、喋った事は無いがたぶんコイツも面倒事は嫌いなタイプだろう。
言い争う後ろで困ったような顔で立っているのを良く見かける。
そんなコイツは今俺の足元にいるウサギを見ていて、ちょうど良いとそのウサギを片手で持ち上げてソイツの元に向かった。
誰かと話していれば巻き込まれる可能性も少なくなるし、お互い面倒事は嫌いなわけだから利害が一致しているなら都合がいいだろう。
ウサギを押し付けるとコイツは少し驚いた顔をしたが、抱き抱えて素直に礼を言った。
後はコイツはずっとウサギに夢中で、俺はただコイツの傍に立っていた。
そう言えばコイツと話したのも初めてだが、こんなに近くで見るのも初めてだ。

髪が白いのは一目で分かるが、肌もかなり白い。
顔は女みたいに小さく、睫毛は長い。
何がそんなに嬉しいのか、ふわふわとした笑いを浮かべながらウサギを撫でていて、よっぽどウサギが好きなのだろうか。
いかんせん俺には理解出来ない世界だ。


しかしその時俺は、
ウサギを抱き締めるソイツを、嬉しそうに微笑むソイツを、

『かわいい……』

と、呟いた白いソイツを、

世の中にこんなかわいい生き物がいたのかと、思ってしまったんだ。




end


 

騒音、静寂、鼓動(ラビアレ学パロ)

 


ちょっと洒落た喫茶店。
ラビと二人で何気なく入ったその店の隣の席で、無神経な大声で喋る団体がいた。

「ずいぶん盛り上がってますね」

「ちょーっと喫茶店では場違いのテンションさね」

低い壁で遮られていて座っていると顔は見えないが、おそらく僕らと同年代ぐらいの学生だろう。
実に楽しそうな話し声だが、店内に響き渡るほどの笑い声は申し訳ないが迷惑だ。

「おっしゃ、俺がちょっと黙らせてくるさ」

「ちょっ、ラビ! 喧嘩はダメですよ!」

慌てて止めようとする僕を振り切って、ラビは隣の席に行ってしまった。
しかし、ヒヤヒヤしながらまっていると、ラビは一分足らずで戻って来た。
しかも隣の席を静かにさせて。

「スゴい……いったい何したんですか?」

「何もしてないさー。ただ、『今からずっと好きだった子に告白したいから協力してくれ』って言っただけ」

「……なるほど……、そんな裏技があるんですね。さすがと言うか何と言うか……」

呆れながらも感心すると、ラビはニカッと笑った。

「で?」

「ん?」

「返事は?」

「え? ………え、えぇ!!?」



返事をしたら、隣から拍手が沸いた。




end



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