「神田‥‥すみません‥‥」
「気にすんな」
弱々しい声を発するモヤシに、俺は出来る限り何でもないように言った。
それでも、モヤシは申し訳なさそうに伏せる。
三つ年下のモヤシとの関係は長い。
幼なじみと呼ぶぐらいに。
そんな幼なじみは今、ベッドで軽く息を荒げ、必死で病と戦っていた。
ただの風邪なのだが、こいつは熱に弱い。
37度でバテるぐらいだ、さらに2度上がった今は、そうとうなモノなんだろう。
そして、こいつの親は今日は居ない。
明日も分からない。
仕事で居ないのか、どっかを遊び歩いているのか。
つまり、こいつの親はそういうヤツだ。
モヤシが寝込んでいるなど、無論知らないだろう。
よって、幼なじみであり、昔から何だかんだで世話をしてる俺が看病役をしているわけである。
「何か食いたい物あるか?」
「ううん、さっき食べたから‥‥‥」
「‥‥‥」
モヤシが食い物を拒んだ。
これは思ったより重症だ。
だからと言っても、先ほど栄養のある物は食わせたし、薬も飲ませた。
そして、温かいベッドで横になっている今が安静な状態と言えるだろう。
これ以上自分に出来る事は無い。
モヤシの額を手のひらでおおってみる。
かなり熱い。
あの薬、不良品じゃねーのか。
「──‥‥い‥‥」
「ん?」
薄く開いた唇から、言葉が紡がれたような気がして聞き返す。
すると、額に乗せていた手にモヤシの手が添えられ、薄く微笑んで言った。
「神田の手‥‥、冷たくて気持ちいい‥‥です」
「っ、」
襲撃だった。
虚ろな目は少し涙で濡れているし、頬は色付き息は荒い。
体は火照り、薄く開いた唇からは赤い舌が覗く。
見ないようにしていた。
見ないようにしていたのに‥‥
(‥‥コイツはッ)
いつからだろう、こんな感情を抱くようになったのは。
ただ、気づいた時にはどうしょうも無いほどに膨らんでいた。
それからは、本当に苦難の連発だ。
この幼なじみときたら、俺を兄としてしか思っていないものだから、不意打ちで抱きつくのは当たり前、風呂や就寝まで共にしようとする事さえある。
モヤシは無防備ではない。
人の感情に敏感で、思いを寄せられると、気づかないふりをするか、やんわり距離を取る。
ではなぜ俺の思いにはこうも鈍感なのか。
それはたぶん、近くにいすぎたのだ。
よっていまだに、兄の枠から抜け出せずにいる。
この立ち位置が恨めしい。
コホッ、と控え目な咳の音。
「大丈夫か」と言葉が出る前に、絶対見てはいけないモノを見てしまった。
咳をする前、モヤシは口元を手で押さえた。
そのため、肩までかかっていた掛け布団が捲れ、そこにはパジャマの第三ボタンまであけたモヤシの体。
隙間から覗く白く滑らかな肌。
あと少しズラせば胸の上の果実まで見えそうな──
「───なっ、なんかコンビニで買ってくるからな!」
ヤバい、これはヤバい。
今手を出せば確実に拒否られる。
まだ早すぎる。
なのに、今のこいつの破壊力はテポドンよりヤバい。
早々にこの場から離れなくては。
しかし、それは掴まれた服により叶わなかった。
振り返ると、正体はモヤシ。
「あ、の‥‥」
何かを伝えようとするモヤシに、ベッドに手をかけ聞きやすくした。
用件があるなら早く言え。
そんな目で俺を見るな。
なるべくモヤシを見ないようにして「何だ」と訊いてやると、熱い息を吐きながらモヤシは言った。
「‥‥ここに‥‥、居て?」
もうどうにでもなれ!!
end
今週のジャンプは色々衝撃でしたが、とりあえず蝋花とアレンの仲を邪魔するリンクが面白かったです(笑)
独占欲が強いんですかね☆
「早く来いよモヤシ」
ご機嫌な声が僕を誘う。
しかし僕は、立ち尽くしたまま動けない。
ちなみにココは僕の自室。
ご機嫌な声の主は、僕を失礼なあだ名で呼ぶ先輩エクソシスト。
「‥‥モヤシじゃありません‥‥」
いつものように言い返してみたものの、語尾が小さくなってしまった。
そもそもこの人、僕の部屋で何やってんだよ。
勝手に人のベッドに寝そべって、体と顔は僕に向け、片手はベッドにつき上半身を軽く上げている。
そしてもう片方の手は、ポンポンとベッドを叩き、早く来いとベッドへ誘う。
行くわけないだろそんなトコ。
気持ち悪いぐらいご機嫌な彼は、楽しむような笑顔を大盤振る舞いだ。
これゴーレムに録画してラビに見せたら「キモッ!」って言うだろな。
そんな笑顔の目には、なにやら怪しい光。
そんな彼に、僕が近寄るわけ無いだろう。
ベッドの上にアレが無ければ‥‥。
「‥‥神田」
「何だ」
「それ返して下さい‥‥」
「だから取りに来いってさっきから言ってんだろ」
やっぱり楽しそうに神田は言って、ベッドの上のアイスクリームをまた少し自分に近づけた。
そう、そこにはジェリーさん特製のミックスアイスがあるのだ。
「もぉッ、返して下さいよ!! 溶けちゃうでしょ!!」
「だから取りに来いよ」
「神田がもって来て下さい!」
「いやだ、ダルい」
「だったら自分の部屋で寝ろー!!」
そうこうしている間にも、きっとアイスクリームは溶けだしている。
最近暖かくなってきた事を喜んだが、今はこんなにも恨めしい。
厳選素材で特別に作ってもらったミックスアイス。
もうアレだけしか無いんだぞ。
食べたい、物凄く食べたい。
きっと一口食べたら幸せが僕を包むだろう。
あぁ早く食べたい。
食べたい、が、あそこに行けば僕が蕎麦に食べられる。
「〜〜〜〜〜ッ、神田の変態蕎麦ぁぁあ!!!」
力の限り悪態をついても、そこを動く事は出来なくて。
けっきょくどちらかが折れるまで、それは続いたのだった。
折れたのは僕だ‥‥。
end
とっても美味しかったそうです☆
『藍蓮様☆』
初めまして藍蓮様!
ありがとうと言われたのは初めてです!
こちらこそありがとうございますVv
そうなんですッ
アレン君は腹黒い時もありますが、基本的に良い子なんですVv
そして可愛い☆
あんなに可愛い子他にいません☆
「ウォーカーは俺(私)の嫁」(笑)
素晴らしいです萌です(爆)
学パロ大好きなのですよ〜♪
特に先輩後輩関係が☆
藍蓮様にも大好きと言って頂けて嬉しいですVv
コレからも応援して下さると言う事はコレからも来て頂けると言う事ですか!?
もういつでもお待ちしておりますとも!!
そして御報告本当にありがとうございます!
藍蓮様から教えて頂くまで気が付きませんでした‥‥。
あんな書き込みは初めてでビックリです;
しかし藍蓮様の言葉で凄く救われました‥‥。
私にはもったいなさ過ぎる言葉ばかりで赤面です(笑)
とりあえず藍蓮様のおっしゃる通り気にしないようにしてみます!
もうホントーに言葉に出来ないほど嬉しかったんです‥‥。
たぶん藍蓮様の心強いメッセージが無ければ拍手文を削除していたと思うので;
最後になりますが、ホントにありがとうございました!!
これからも藍蓮様のような素敵な訪問者様のために頑張らせて頂きますVv
ではでは♪♪
僕は泣いていた。
嗚咽を上げる事もせず、まぶたから溢れる涙をそのままに、泣いて泣いて泣いていた。
その溢れる涙は、一粒も落ちる事はなく、全て暖かな布が吸い取っていく。
布の持ち主は、それを止めないで、むしろ望んでいるように、優しく僕を抱きしめる。
おかけで僕の涙は止まらない。
そしてまた、暖かな布が、ラビの服の胸元が、止まらない涙を吸い取った。
「僕は、間違えてばかり、です‥‥」
ラビの服に顔をうずめているのと、泣き続けていたのが加わって、僕の声は思ったよりかすれていた。
そんな僕の背中を、あやすようにポンポンとラビの手のひらが叩く。
小さく深呼吸をして、また口を開く。
「何度‥‥も、間違えて。いつも、正しい道を、選べない」
ラビの手が僕の髪を絡める。
クシャリと、耳元で髪の擦れる音。
「迷って、さんざん、迷っても。けっきょく、僕‥‥は、間違える」
ラビの顔が、僕の額に落ちる。
まるでキスを降らすように。
「ラビ‥‥」
嗚咽がこぼれそうになるのを我慢して、ラビだけ聞こえる小さな小さな声で言った。
「‥‥僕は、ずっとずっと、間違えてばかりです」
言葉を終えると、涙はいよいよ止まらなくなった。
脱水症状になるんじゃないかってぐらい、溢れて溢れて、ラビの服を濡らす。
ラビは、また背中をポンポンと叩いて、穏やかな声で僕に言った。
「大丈夫さ」
その声は笑っているようで、僕は顔を上げ、叫んだ。
「どうして!」
案の定、ラビは笑っていた。
「どうして大丈夫なんです!」
それは自分が求めた答えでは無いような気がした。
ではどんな言葉が欲しかったのか。
あぁ、なんて自分勝手。
きっと彼は、笑顔の裏側で困っているだろうけれど、それでも僕の言葉は止まらない。
涙では流しきれなかった思いが、言葉となって僕から出ていく。
「僕はきっとまた間違える! 正しい道を選べない! これから先もきっと、僕は間違えてばかりいるんです! どうして大丈夫なの! 間違えてばかりの僕が大丈夫なワケ、ない!」
大粒の涙が頬を伝い、落ちる前に、ラビの指がすくった。
「アレンは大丈夫さ」
ラビはやっぱり笑った。
あやすようにでもなく、困ったようにでもなく、ただ笑ってた。
「アレンは間違えてばかりかもしれないけど‥‥」
僕の涙が、今度はラビの袖を濡らす。
「‥‥戻る所は間違えないから」
こんなにも涙はこぼれるのに、一粒も落ちる事なくラビの袖に止まる。
「ちゃんと正しく俺のトコに戻ってくるから。だから、大丈夫さ」
僕の濡れた瞳にキスを落として、
大丈夫、大丈夫、これから先も、きっと、
ラビは耳元で、ささやく。
僕の涙は、次はラビの肩を濡らす。
僕の涙は全部、全部全部ラビのもとへ消えていく。
「大丈夫さ」
ラビのささやきを聞きながら、僕は眠りについたんだ。
(明日はまた歩き出す)
end
戦いも終盤にさしかかった中、AKUMAの最後の抵抗がラビにふりかかった。
「ラビー!!」
アレンの目に、崩れゆくラビの姿が映る。
とっさにAKUMAに一撃を打ち込み、消えていく魂を横目で確認しながら倒れた仲間の下へ駆け寄った。
「しっかりしてラビ!!」
ラビの肩を揺すってみるが、力なく垂れた腕が揺れるだけで、反応は無い。
そして、信じがたい事実にアレンは目を見開く。
(呼吸してないッ)
一度強く奥歯を噛みしめ、素早くラビを平地へ移動させる。
「待っててラビ、今助けるからッ」
「待ちなさいウォーカー!」
「リンク!」
知らぬ間にアレンの背後に来ていたリンクが、アレンの腕を掴んだ。
「なぜ止めるんですリンク! 早く人工呼吸しないとラビの命が‥‥ッ」
「分かっています。しかしキミは応急救護には不慣れだ。だからここは‥‥
‥‥私がします」
「え?」
「──ブッハァ!!」
「ら、ラビ!?」
「いやー危ねぇ、死ぬかと思ったさぁ」
「ラビ大丈夫なんですか!? 今キミ呼吸が止まってて‥‥」
「おう、もう大丈夫大丈夫! 心配かけて悪かったさアレン。そんじゃあ戻るか〜」
「あ、はい。無事で良かったですよホントに‥‥」
(ちくしょー、あのホクロ2つめッッ)
(まだまだ甘いのですよブックマンJr.)
彼らは今日もどこかで色々なモノと戦っている。
end
アレンにキス(人工呼吸)してもらいたくて頑張って呼吸を止めてたラビ
『そんな事はお見通し』なリンク
二人の戦いはまだまだ続きます(笑)