月が綺麗な夜だった。
月しか見えない夜だった。
「本気で逃げるつもりだったのですか?」
草原が広がるこの土地は、街の光すら届かない。
月の光が草原を照らし、風が通り過ぎる度、光が走る。
草原の中心に立つリンクの金色に輝く髪は、月光によく似ている。
そのリンクの表情は傍目に分かるほど怒りを表し、アレンと向き合っていた。
「逃げられるとでも思っているのですか?」
リンクの言葉に、無表情だったアレンは皮肉に笑う。
「逃げられるかどうかじゃないんです。ただ、逃げたかっただけ‥‥」
そう言って笑うアレンに、リンクの顔は険しくなるばかりだ。
ただ逃げたかった。
アレンのその言葉に嘘偽りは無い。
逃げたかった。
運命からか、自分を押さえ付ける強大な組織からか、それはアレンにも分からなかったが。
しかし、今こうして睨みつけるリンクと向き合ってしまえば、もう無理に逃避する気にもならない。
アレンは諦めたように笑って、リンクを見つめた。
「逃げようと思って逃げられるものじゃありませんよね‥‥‥」
「逃げる事はおろか、逃げたいと考える事すら腹立たしい」
リンクは言葉通りの苛立ちを隠しもせずに、俯くアレンへ手を伸ばし、肩を掴んだ。
「ホントに‥‥教団から逃げようとする事が、馬鹿馬鹿しいですよね‥‥」
「私は、そんな事を怒っているのではありません」
「え‥‥?」
アレンが顔を上げると、今だ睨みつけていたリンクと視線がかち合う。
戸惑いを見せるアレンに、リンクの目は細められた。
なぜ分からないのか、と、訴えるように。
「教団から逃げる事に対して、私はキミを咎めたりはしない」
「‥‥言っている意味が――」
「――ただし‥‥!」
風が止み、無音の世界で、リンクはアレンに一歩近づいた。
「‥‥私から逃げようとするな‥‥‥」
息がかかるほどの距離で、リンクは強い眼差しのまま、アレンは瞳を大きく見開いたまま、まるで時が止まってしまったかのように動かなかった。
強く気丈に振る舞うキミは、美しく気高い。
誰よりも他人を守り、誰よりも自分を蔑ろにするキミは、優しく哀しい。
そんなキミを、一番近くで見てきたのは私だろう。
強さも弱さも、キミは私には見せてくれた。
なのになぜキミは‥‥
もとから近かったリンクの顔が、さらに近づいて、アレンの唇と僅かに重なり合う。
触れ合うだけの一瞬のキスは、アレンに目を閉じさせる暇も与えない。
見つめ合ったまま、リンクは再度口を開いた。
「私からは、逃げるな‥‥ウォーカー」
ただ呆然と見ていたアレンは、瞬きを繰り返し、リンクの眼差しの強さを確かめる。
「一緒に‥‥‥。僕と、一緒に逃げてくれるんですか‥‥?」
「そうで無ければ何だと言うんです」
当然だと怒るリンクの言葉は、アレンにはあまりにも優しすぎて、知らずに溢れた涙を止める術は見つからない。
そんな濡れた顔のまま笑えば、リンクもやっと表情を和らげた。
「リンク‥‥。戻りましょうか、教団に」
「いいのですか?」
「‥‥はい」
もうきっと、大丈夫。
そうアレンは言いながら、リンクの胸に顔を埋めれば、リンクは抱き寄せ髪を撫でた。
月夜の風がそよぐ草原での、二人だけの出来事だ。
キミとならどこまでも逃げられる気がした。
だから、キミとならどこまでも進める気もした。
End
リンクやアレンや神田って月が似合いますよね。
さて明日からやっと職場にクーラーがつきます!
やっとです!
さらにどうでもいいですが、先週初めてスカイツリーを見ました☆
高いですね。
いえ、高いのは当たり前ですが、想像を絶する高さと言うか‥‥写メしようとしても画面に全部入りきれないほどの高さ!
真下から見ると更に迫力でした。
日本って凄いですねー。
アレン君が高所恐怖症だったら面白いですね。
神田の手前、全然平気ですけど?みたいな顔をしてるけど神田の服の端を掴んだまま放さなかったり。
それで「服が伸びるだろうが!」って言いながらアレン君の手を服から剥がし、そのまま握ったままなんですよ!
リンクだったら、彼はポーカーフェースでしれっとアレン君を頂上まで連れていったり。
絶叫するアレン君に「高所恐怖症だったとは知りませんでした(嘘)」とか言って、外を見ないように目をつぶっているアレン君に、やれやれ世話のやけると言いながらしれっとアレン君の肩を抱いて歩いたりね!
素直じゃないラブも、むっつりなラブも大好きですVv
だいぶ話がそれましたね‥‥(笑)