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ごめん神田誕生日おめでとう(神アレSS)

 


「モヤシ」

「アレンです」

「‥‥‥いいだろ」

「イヤです」

「‥‥っ、何でだ!」

「イヤなモノはイヤなんです」

「いい加減いいだろうが!」

「イヤったらイヤです!」

「何でイヤなんだ!」

「言いながら迫って来ないで下さいよ! じゃあ神田は何でしたいんですか!?」

「恋人にキスしたいと思って何が悪いっ!?」

「でも恋人だからって必ずしなきゃいけないってワケじゃないでしょ!」

「うるせぇッッ、つべこべ言わねぇでこの手をどけやがれ!」

「イーヤーでーすーっ!」

「てめぇっ」

「‥‥‥神田は‥‥」

「っ!」

「‥‥こんな僕は、嫌い‥‥ですか?」



伏せられた瞳に浮かぶ涙に、俺の動きが止まる。



「──ンなワケねぇだろ」

ため息混じりに言って、モヤシを腕の中に閉じ込め髪を撫でた。




あれから数日たったが、思い出せば今でもため息が出る。
幾度と無く繰り返されたあのやり取りに。

共に食事をしたり、手を握ったり、そう言った接触はコイツから嬉しそうにしてくるくせに、そこから先は頑なに拒む。
あんな女ったらしを師匠に持つコイツの事だから、そう言うたぐいの事にも慣れているのではないかと思えばその逆。
二人の秘め事は二人だけで、そしてあの師匠のせいで何かと慌ただしい人生を送ってきたモヤシは色恋沙汰とは無縁の生活だったのだ。

それを知った俺は、ならば急かすのは酷だとモヤシのペースに合わせてきたが、

(もうすぐ半年目だぞ!)

いい加減我慢の限界だ。
自分でも呆れるほどべた惚れしている可愛い恋人がこんなにも近くに居ると言うのに、いまだキスの一つも許可がおりない。
もちろん、無理強いなどをして泣かせたくは無いが、しかしそろそろ少しぐらいは強行手段に出ても罰は当たらないのではないか。
そんな俺の考えをモヤシは知ってか知らずか、今日ものんきに俺の部屋に上がり込む。
今日は特別な日だからだ。
俺はこの日を特別などと考えた事はなかったが、モヤシが特別なのだと笑うから、俺もなんとなく特別な気がした。

今日は俺の誕生日だ。

モヤシはいつもより良く笑い、期待のこもった目でプレゼントを渡され、ジェリーに用意してもらったらしいケーキやいつもより少し豪華な料理を共に食べ(と言ってもモヤシが九割食べたが)、幸せだと自信が持てて言える時を過ごした。
だが俺は、これで終わらせるつもりは無い。



今日は特別な日なんだろう?

だったら、

お前をよこせよ。



「モヤシ‥‥」

「はい?」

《──ドンッ》

「?、何ですかこのビン?」

「日本酒だ」

「ニフォンシュ?」

「日本の酒だ。呑むぞ」

「えっ、僕もですか? 僕お酒はちょっと‥‥」

「今日ぐらい付き合え」

「‥‥ちょっとだけですよ‥‥」

小さめのグラスにそそいでやれば、確かめるように口を付ける。
それを見て、モヤシが口を付けたままのグラスを上に傾けてやった。
突然の事にまともな抵抗も出来ず、グラスの中の日本酒は全てモヤシの口におさまる。

「な、に‥‥っ、するんですかバ神田!」

「全部呑めたじゃねぇか。日本酒の味はどうだ?」

「‥‥やっぱりお酒は苦手です。でも師匠が呑んでたお酒とは違いますね」

全く呑めないわけではないと分かり、これを良しとしどんどん酒を勧めた。
俺の誕生日だからと言うのもあるのか、お前と日本酒を楽しみたいんだと言えばモヤシは好きでもない酒を俺が勧めるだけ呑んだ。
そうすれば、十分もしないうちにモヤシの白い頬は朱に染まり、トロンととろけたような目を俺に向けはじめる。

計画通りだ。

内心でガッツポーズを決め、後もう一押し、とさらにグラスにそそいだ。

俺はモヤシに無理強いをするつもりは無い。
だが、酒に酔って思考のとろけた恋人にキスをするのは無理強いでは無いだろ?
コイツも拒否はしないはずだ(酔ってるから)。

しかし、俺を動揺させる事態が発生した。
あれからグラスを三杯空にしたモヤシが予想もしなかった行動に出はじめたのだ。



「かんだぁ‥‥」

「もっ、モヤシ‥‥っ!」

「あいしてますぅ」

「おおお俺も愛してるに決まってんだろっ!」

コレは幾度と無く見た夢の続きか。
いや、夢なんかのモヤシより数百倍色っぽいぞこのモヤシ。
切なげに寄せられた眉に潤んだ瞳はまるで俺を求めるかのよう、染まった頬に熱い体で俺の膝に乗り上げ首に腕を回す。

「かーんーだー」

「もや‥‥っっ」

誠に喜ばしい事態ではあるのだが。
だがしかし、
コレはあまりにも‥‥

「僕のちゅーが‥‥受け取れないって言うんですかぁ」






ジーザス!!!


















* * *



「リナリー!!」

「あらアレン君おはよう。どうしたの慌てて」

「か、神田がっ」

「神田が?」

「朝起きたら血だらけで倒れてるんです!!」

「なんですって!? どこ!?」

「こっち、神田の部屋ですっ」

「神田っ、だいじょ‥‥──」

「すぐに医務室に運びましょう」

「─‥‥ううん、アレン君ちょっと待って」

「どうしたんですか?」

「コレ、鼻血だわ。それとそこに置いてる空のお酒は神田が呑んだのかしら」

「いえ、昨日僕が呑んだんです。神田に勧められて」

「‥‥ふーん」

「リナリー?」

「アレン君朝ごはん食べた?」

「え? まだですけど」

「じゃあ食べに行きましょ。私もまだだから」

「えっ、神田は!?」

「いいのよ神田は。これは‥‥自業自得だから」

「なんでですか?」

「神田がヘタレなくせに卑怯な手を使うからいけないのよ」

「?、はぁ‥‥」



最愛の恋人の唇を知る日はまだ遠い。




end









いまさらなお話ですみません。
誕生日に託つけてお酒の力でアレン君に迫ろうとしたけどあまりの色っぽさにノックアウトされた神田氏の話。
こんな話ですが一応神田氏の誕生日を祝ってます!
おめでとう神田☆
コレからもアレン君とイチャイチャムラムラして下さいVv



 
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