知らない想いとの続きです
殺風景な部屋。
ひび割れた窓からは僅かに日の光がこぼれる。
この部屋の主は神田だ。
そして、時折紙をめくる音だけが部屋に響く。
しかし、紙を、資料をめくっているのは部屋の主ではない。
「なんだかややこしい任務みたいです」
「‥‥そうかよ」
神田の隣で資料に目を通していたアレンが、ため息混じりに呟いた。
そして、勘弁してよと言うように座っていたベッドへ身を投げる。
その様子を見ていた神田の心境は複雑だ。
ちょっとしたきっかけでアレンと共にケーキバイキングに出向いたのは、ほんの数日前。
甘い物に囲まれ地獄を見たのも、今では良い思い出だ。
無論、アレンとの思い出だからこそ、である。
神田が密かに想いを募らせていた相手との外出、嬉しくないわけがない。
そして、それがきっかけなのか何なのか、とにかくその日からアレンと神田は時間を共用する事が多くなった。
この事も、神田にとっては喜ばしい事、なのだが。
(‥‥何ちゅー格好してんだ)
アレンは今、ベッドに寝っころがったまま伸びをし、そのせいでワイシャツの隙間から白く細い腹を覗かせていた。
神田を複雑な心境にさせるのはコレである。
アレンはここ最近、神田の部屋へ良く立ち寄る。
教団内で見かければ駆け寄って来るし、組み手の約束などもしたりする。
ちょこちょこ口論もあるが、それも二人なりのコミュニケーション。
要するに、グッと距離の近くなった二人なのだ。
神田は期待で胸が高鳴ったし、チャンスがあれば再度、想いを告げる気でいた。
しかし、思いもよらず近づいた今、自分が立っている位置に神田は気づいた。
(コレは‥‥、"兄"と、認識されてるよな‥‥)
いまだ無防備に白い腹を見せたままなのが、良い証拠だ。
神田はアレンに気づかれぬようため息を吐いて、白い肌から視線を外した。
縮まった距離にぬか喜びした自分が恨めしい。
そんなこんなを神田が考えているうちに、アレンは夢の住民になりかけていた。
あくびを手のひらでおおった後、寝返りをうって寝の体勢に入る。
服の乱れは直す気は無いようで、今度はわき腹から背中の肌が露わになった。
「っ、‥‥お前」
ベッドの動く気配に再び視線を戻した神田は、つい声をもらすが、意識が夢の中に行きかけているアレンには届かない。
おまけに、神田から背を向けているため、己の覗く肌を凝視されている事などもアレンは知らない。
そう、アレンは知らなすぎるのだ、何もかも。
神田はギシリとベッドを鳴らす。
両手をアレンの顔の脇につき、覆い被さった。
その距離は互いの息づかいで髪が揺れるほど。
「おい、モヤシ」
神田の呼びかけに、ぼんやりと瞼を上げたアレンだが、視界が神田しか映らないほど間近に居る事には特に驚く事は無かった。
「良いのかよ、そんな無防備で寝て」
「んー‥‥?」
寝ぼけ眼で見上げるアレンには疑問符が浮かぶ。
その様子に笑う事も怒る事もせず、神田はサラリとアレンの髪を指に絡ませた。
「襲われても、知らねェぜ‥‥」
その言葉を、やはりぼんやりと聞いていたアレンだが、不意に、花のツボミがほころぶように笑った。
ドキリと、心臓を高鳴らせた神田の下で、アレンは口を開く。
「大丈夫、ですよ。だって‥‥神田が居る、から」
「‥‥‥」
ゆっくりと紡がれる言葉は、想いを寄せる者としては嬉しいようで嬉しくない言葉。
規則正しい寝息を立て始めたアレンに、結局神田は手を出せないのだった。
end
とことんアレン君に振り回されればいいと思います(笑)
アレン君の兄の位置に立つのはラビだと思いますけどね☆
ここ最近いろいろな意味でくたばりかけてます;
何でこんなに忙しいんだろ。
今年はアレ誕祝えるだろうか‥‥。
でもコレは意地でも何かしたいところです!
なにせアレン君ですし!
しかし何も出来なかったら本当に申し訳ない‥‥;