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キミに質問(リンアレSS)

 


「一目惚れをどう思いますか?」

「‥‥‥」

今日はいたっていい天気だ。
任務も無く、事件も無く、穏やかな時間だけが流れて、日頃とはまるで非現実世界に居るようだ。

「ウォーカー?」

「あ、はい」

「人が質問をしているのに、何を一人でたそがれているんですか」

「いや、だって‥‥あまりにもリンクに似つくわしくない言葉がリンクの口から出たから幻聴かなって」

「では私に似つくわしい言葉とはなんです?」

「そう言われてもなぁ‥‥」

「まぁいいです。それより、一目惚れについてキミはどう思いますか?」

「(やっぱり答えなきゃいけないのか)いきなりそんな事聞かれても‥‥リンクはどう思うんですか?」

「あまり良くは無いでしょうね」

「なんで?」

「軽率ですね。会ったばかりで何の情報も無い相手に対して恋愛感情を持ったと思い込むのですから」

「思い込みなんですか!?」

「思い込みでしょう。そう簡単に他人に対して恋愛感情なんか持てますか? もしそうでないにしても、外見だけで好意を持つと言う事なのですから、相手にとって大変失礼です」

「ずいぶん辛口ですねー‥‥。べつに外見だけって事も無いと思いますけど」

「他に何が?」

「例えばその人の雰囲気とか‥‥オーラって言うか、何か解らないけど惹かれる物があるんじゃないですかね。俗に言う運命の相手みたいな」

「ずいぶんメルヘンですね」

「う、うるさいなぁ!」

「ではウォーカーは一目惚れに関して悪い気はしない、と?」

「まぁ、そうですね。僕は悪くは無いと‥‥‥‥何でそんなに顔を近づけるんですかッ!?」

「‥‥‥」

「‥‥っ!」



今日は、いい天気で、任務も無くて、のんびりとした、実に穏やかな日だった。
ただ少し事件が起こって、リンクが僕を抱きしめるなんて前代未聞の事が起こっている。
コレは何事だ。



「ウォーカー」

「はっ、はい!」

「私がキミに一目惚れした。と、言っても悪い気はしませんか?」

「‥‥っ」



僕を抱きしめる腕が強すぎて少し苦しいのに、なぜだかリンクの声の方が苦しそうだ。

一目惚れ。
一目見た瞬間から惹かれる事。
きっと馬鹿みたいに真面目なキミの事だがら、僕らの立場とか、未来とか考えて悩んだんだろう。

もうずいぶんと一緒に居る僕達。
そんなに長い間、悩んでいたんだろうか。
そんなキミから感じるのは、決断の苦しみと、優しさと、愛おしさ。

一目見た瞬間から惹かれるのを一目惚れと言うのなら、今頃惹かれている僕の気持ちは、何と名付ければいいのだろう。



「今僕、世界の誰より恋してる気がする」

「‥‥‥私には負けますよ」




end












気がつけばブログに拍手が!
亀更新なのにありがとうございます(;∇;)


 

その場所俺の(ラビ→アレSS)

 


人は、人と付き合うにつれて関係性が出来上がってくる。
例えばアレン。
クロス元帥とは師弟の関係だし、リナリーやジュニーとは良き友人関係だ。
ユウとは喧嘩友達で、リンクは監視と監視対象の関係。
そして俺は‥‥

(兄弟‥‥てのか一番近いンかな)

もちろん血が繋がっているわけではない。
ただ、アレンは俺を兄のように頼ってくれるし、俺も悪い気はしない。
たまに俺を年上と思ってないだろってなぐらい暴言を吐くが、甘えの一種だと思えばかわいいものだ。
しかしだ、この関係も悪くないのだが、そろそろ脱却したいとも考えていた。
たとえば、“恋人”の関係‥‥とかに。
まぁ、長い間、俺はアレンをそういう目で見てきたわけだが、いかんせんアレンは良き兄から変わらない。
これはきっと、何かしら行動を起こして大きなきっかけを作らなければ、ずっと続くのだろう。

ならば行動あるのみ! と俺なりに動こうとしたのだが、じゃあどうすると問われれば答えは出ない。
下手な事をして傍に居るのさえ出来ない関係になってしまったら?
アレンが俺を避けるようになってしまったら?

そんな事になったら、俺はきっと立ち直れない。
自分で言うのもなんだが、俺は結構繊細だ。
もしアレンにフラれでもしたら‥‥ダメだ、想像するだけで泣けてくる。



そんなこんなを俺は考えていたわけだが、ほんの数日前、俺は間違いに気づかされた。



たった今帰って来た所なのだろう、団服を来たままのアレンを見かけた。
そのまま部屋に入ったアレンに、一言『おかえり』を言おうとノックもせずに扉を開ければ、

(‥‥──え?)

アレンが何かしてた。
何か、なんて一目瞭然なんだが、ただ、自分にはどうしても受け入れ難いモノに思考は停止状態だった。
かろうじて残っていた理性が、扉をそっと閉めさせ、俺はその場に立ち尽くした。



キスしてた。
アレンが、あろうことかあの監査野郎と。



それからどうやって部屋に戻ったか覚えていない。
しかし、数日経った今でも、あの光景はしっかり思い出せる。
少し背伸びしたアレンと、そんなアレンの頬に手を添え少し屈んだリンク。
忘れたくても忘れさせてくれない俺の記憶力に憎ささえ感じた。

俺は間違えていたんだ。
人間関係なんて、他人から見たって解らないって事。

だけど、これは知っている。

(人との関係なんて、いくらでもいくらでも変わってくるんさ?)

昨日の友が今日は敵に。
他人が家族に、兄弟が他人に。
俺だってまだ諦めたわけじゃない。
そんな簡単に諦められるなら、始めからリスク有りの恋なんてしていないんだ。
だからさ‥‥



「ア レ ンー!!」

「うわっ‥‥ちょっとラビ、いきなり抱き着かないで下さいよ!!」

俺のかわいいアレンも、俺をおっかねぇ目で睨みつけてるリンクも、ぼやぼやしてると危ないさ?
お二人さんの間に俺の入り込む隙間を必ず探し出してやるから。

「ブックマンJr.、我々は急いでいるんだが」

「お堅い事言うなさー。アレン、俺の部屋来ない? アレンが欲しがってた本が手に入ったんだ」

「え、ホントですか!?」

「ウォーカー!」

人は、人と付き合うにつれて関係性が出来上がってくる。
裏をかえせば、付き合い方によって、関係性は変わってくる。
今からでも遅くは無い。
俺達が恋人って関係になるのもさ。

「覚悟してろよ‥‥」

「は?」

「んーん、何でもないさー」

「いい加減ウォーカーから離れたらどうです。ブックマンJr.」

「やーだぴょーん」

(このエロ兎)

(うっせぇムッツリホクロ)





end

 

餓狼(神アレSS)

 



季節は春。
とは言え、日が暮れればまだ寒く、深夜ともなれば上着無しでは外を歩けない。
そんな時刻に、野外とさほど気温の変わらない長い廊下を僕は一人で歩いていた。

(なんだか‥‥変な感じだな‥‥)

リンクが監視に付いてからと言うもの、一人の時間と言うのは皆無に等しかった。
だが、中央庁からの急な呼び出しで僕の元から離れなくてはならなくなったリンクに、代わりの監視は見つからず、教団から出ないと言う条件付きで今は野放しにされている。
そして廊下を歩いている理由だが、理由らしい理由はない。
しいて言うなら散歩だ。
理由も宛もなくぶらぶらと気ままに歩き回っているだけ、ただそれだけだが、もしこれでリンクが付いていたら、彼はたいそう嫌がっただろう。
無意味だ、時間の無駄だ、任務に向けて睡眠を取れ‥‥などなど小言があられのように降って来る事は間違いない。
だからこそ、鬼の居ぬ間にかって気ままな事をしているのだが、時刻が時刻なだけに誰にも会う事は無い。
やはりもう寝てしまおうかと、人知れずため息をついた時、薄暗い廊下に僅かな明かりが差し込んでいるのを発見した。

(神田の部屋だ‥‥)

自分が道を間違えていなければ、その光を漏らしている扉の部屋は、いつも不機嫌な彼のモノ。
そして僕の、恋人だ。

しばらく任務で不在だったはずだが、帰って来たのだろうか。
沸き上がる歓喜を抑えながら、声を潜め名を呼んだ。

「‥‥神田‥‥‥?」

そっと、薄く開いた扉から除いて中を確かめれば、揺れる人影は間違いなく名を読んだその人だった。
しかし、その様子はどこか不自然で、ベッドにけだるそうに腰掛けたまま、右手の手の平で伏せた顔を覆っている。
苦しそうにも見えるその様子に、僕は慌てて扉を開けた。

「神田? どこか具合が悪いんですか!?」

ノックもせずに入ってしまった僕だが、神田はピクリと僅かな反応はしたものの、一向に顔を上げる気配は無い。
むしろ、さらに強く手の平に埋めてしまったかのように見えた。

「‥‥かん」

「来るなッ!!」

「えっ?」

突然飛んできた僕の声を遮る強い声に、一歩進みかけていた足が止まる。

「これ以上来るな」

「神田?」

「いいから、今日は帰れ」

有無も言わせない神田の拒絶に、ただ唖然とした。
膨れ上がっていた歓喜は、その大きさのまま悲しみに変わる。
しかしだからと言って、そのまま引き下がるようなしおらしい性格では無い。

拳を強く握り、途中で止めていた歩を再び動かす。
性急に距離を詰めた僕に、また何かを言いかけた神田の顔を両手で掴んで無理矢理上げさせた。
そして、驚いた神田の顔に向かって迷惑な大声を浴びせてやった。

「お帰りなさい‥‥!!」

大声が去った後の部屋には、静寂が訪れる。
一度目を合わせた僕らは、互いに反らす事無く時間が過ぎた。
神田の目は、始めこそ驚いていたが、今はただ強く睨みつけるように僕を見る。
怒っていると、長い付き合いで分かった。
しかしそれは僕も同じ、久々に会えたと言うのに、跳ね退けられる言われは無いはずだ。

強い視線に臆さぬよう、まばたきを忘れて必死で見ていた僕の左手を、神田の右手が掴んだ。

「テメェが‥‥悪いンだからな‥‥ッ!」

「は‥‥? う、わぁッ!」

急に左に強く引かれ、とっさな受け身も取れずベッドへダイブする。
慌てて起き上がろうとする僕より早く神田は僕に覆いかぶさり、僕の両手をベッドに縫い付けてしまった。
そのまま、抵抗する暇も無く口づけられる。

強く、そして何度も。

互いの唾液が混じり合い、飲み干せなかった二人の唾液が僕の頬を伝ったが、それでも口づけは終わらない。
激し過ぎるそれに思考は追い付かず、神田にしがみつくので精一杯だ。

どれぐらいの時をそうしていただろう。ようやく唇が離れた時には久しぶりのまともな呼吸に忙しなく胸が上下し、薄く涙の張った目からぼんやりと神田を眺めていた。
神田は僕の頬へ伝っていた雫を舐め取るものだから、こそばゆくて体をねじり離れようとしたが、神田はどこまでも追って来た。

「‥‥今さら、逃げられると思うなよ」

「!」

今の神田は、捕獲者の目だ。
今さら、そんな事に気づくなんて。
鋭い矢のように、僕に突き刺さり、けっして逃げられなくする。

「俺は帰れと言った。その警告を聞かなかったお前が悪いンだからな」

「け、警告‥‥?」

キスの最中にでもされていたのか、いつの間にか全開になっていたシャツをスルリと剥ぎ取られ、胸に口を寄せていく。

「‥‥お前の事考えてた。お前に触れてキスしてめちゃくちゃにしたいってな」

「なっ!? ちょっと神田!」

「そんな時にのこのこ一人で現れれやがって‥‥」

馬鹿が‥‥と、呟いた神田は不敵に笑う。

あぁ、もう逃れられない。
再び降ってきたキスを受け止めながら、そう思うが、それすら今さらだ。

負けじと僕も神田の首に腕を回せば、神田も強く抱きしめた。



今さら僕を捕まえる?
そんなの不可能に決まってる。
ずっとずっと昔から、僕は君に捕らえられているんだから。




end









GWも今日で最終日ですねー。
何だかんだとしているうちに最終日になってました(笑)


 
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