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約束だよ、必ず(銀魂:新通/続編)

ふたりきりで過ごした冷たくて暖かな夜:他愛ない話を語り尽くした暁のそらのした。
気付けばいつの間にか景色が明るんできて、街は夢から覚める途中。
寒いね、なんて言いながら買ったふたつ分のココアはすっかりぬるくなっていた。

さっきまで悲しい目をした君はもうここにはいなかった
だから僕は安心して、また君の傍にいることが出来るんだよ、


君の歌を一緒に口ずさみながら。






「…あ!」


それは、突然のこと、だった。

ベンチからさっと立ち上がり、僕を見下ろすのはさっきまで大粒の涙をこぼしてしくしくと泣いていた女の子。
その瞳の奥にはもう不安や迷いなんかなくて、いつもの明るくて、僕の憧れの彼女の姿があった。


『どうしたの、お通ちゃん…?』


ためらいがちに訊ねると、目をパチパチさせながら僕にひしとすがりついてきた。
ビックリして言葉を失っていたら、慌てた様子で彼女が口を開く。


「どうしよ…っ、私、レコーディング会場、抜け出して…!」

『……あ!!』


すっかり忘れてたその事実に思わず大きな声が出ていた。
予想外の待ちぼうけに、彼女を知っている人は何を思っているのだろう。今の僕たちと一緒に焦っているのだろうか。
お互い様と言えばお互い様 だけど、非はこっちにある。
それくらい分かっていた。

僕も思い出したかのように立ち上がり、何とかならないかと身体のあちこちを必死に漁るけれど出てきたのはタクシー代にもならない小銭だけ。
彼女も首を横に振り、「私もお金ない…携帯は忘れてきちゃったし」と、弱々しく呟いた。


『レコーディング会場の電話番号とか、マネージャーさんの連絡先とか分かんない?』

「…ごめんなさい、レコーディング会場の場所は分かるんだけど…」


しょんぼりと、叱られた子犬みたく寂しそうに項垂れるから。
ここは男の僕が何とかしなきゃ  そう、思った。


だけど、どうすればいい?


考えれば考える程頭が真っ白になって、情けないことに動揺することしか出来なくて、目につく無表情な景色に助けを求めていた。


そうして、日の光を浴びて輝く遊具達、の中に ポツリとあったそれ。


『…あれだ!』


叫んだその先にあったのは、木の中にうち捨てられていた一台の自転車。
駆け寄って状態を確かめる。捨てられているだけあたて今にも壊れそうだけど、なんとかふたつの体重を乗せて走ることは出来そうだった。


『お通ちゃん!これ!』

「え…自転車?」

『僕が漕ぐから、お通ちゃんは後ろに乗って!』

「でも、新八君が大変じゃあ…」

『僕のことは気にしないで、今は君の方が大事なんだ!』



だって、折角大好きな君がだいすきな君を取り戻せたんだから。
もう見失って欲しくないんだ。


「……うん、分かった!新八君、お願いします!」

『任せて!』


ぎいい、と錆び付いた車輪が悲鳴をあげて走り出す。
白い指先がおずおずと腰に回されて、くすぐったいような恥ずかしいような。


「近くの駅まで行ければ、後は電車で何とかなるかも!」

『分かった!しっかり捕まっててね!』


ひんやりとした朝の空気を置き去りにして、風よりも速く颯爽と駆け抜ける自転車。
まだ少しだけ眠っている都会の中、ひたすらヒビが入ったペダルを漕いだ。

静かに寄りかかってくる微かな体温だけが本物の証。
新八君、速いよ!と、訴えるけれど何だかその声は楽しそうに弾んでいたから、何故かそれが遠く感じて、目頭がうるりと熱くなった。


駅に続く、線路沿いの緩やかな坂道をゆっくりのぼる。
息も絶え絶えに目指すのは、あの坂道の上にある建物。


『も、う…ちょっと…』


てっぺんに辿り着いた時にぴかりと出迎えてくれた眩しい朝日に、わあ、と後ろから聞こえた感動に似たため息。
広がる街並みはひかりを浴びて、自ら発光。

僕たちは、その中心部にふたりぼっちだった。


「きれい…朝日って、こんなに眩しかったんだ…」


そうだね、と言おうとして唇がためらう。

ふたりを包む、短い沈黙。単純な言葉すら生まれなかったけれど、それが無性に心地よくて。
目を閉じたら後ろにいる君の笑顔が簡単に想像出来たから、振り返ることをしなかった。

ぐず、と鼻水をすすって同じものを見る。
何も語らない無口な世界に、ふたりだけみたいだねと錯覚を覚えた。



丁度、始発の電車がやってきた時だったらしく、辺りにやかましくベルが鳴り響いている。
彼女は軽やかに電車に乗り込むと、僕の正面に立って深々と頭を下げた。


「ありがとう新八君。貴方のお陰で…私、また頑張れる」

『こちらこそ…ありがとう、お通ちゃん』

「ふふ、新八君がお礼を言うのはおかしくない?」

『あ…なんでだろう、僕も分かんないや』

笛の音が僕以外誰もいないホームに響き渡り、ゆっくりと目の前のドアが閉まっていく。
名残惜しく思っていると、新八君、と小さく呼ばれた。


「……約束だよ」

『え?』

「また、いつか──」


同時に、パタンと閉じられる扉。
動き出す電車、壁の向こうで不安そうに見つめてくる。

僕は何も言わずに、ただ黙って手を振った。
胸の奥から込み上げてくるモノを無理矢理こころの中に閉じ込めながら。


君をのせた電車はカタコトと離れていって、とうとう僕はひとりぼっち。
さっきまで隣にいた温もりを懐かしく想いながら、澄んでいる空気を肺一杯に詰め込んで、勢いよくはいた。


『……っ、頑張れー!お通ちゃーん!!』


ぼやけた視界の向こうにいる彼女に見えるように、大きく手を振る。


『…またいつか、かくれんぼ…しようね……っ』


宙に投げ出された言葉は、もう君には届くことはないのだろうけど、


それでも君に届けばいいな、と



ひとり分の体重を乗せて、錆び付いた車輪が唄う。
かたかた、がたん。
通り過ぎたCDショップの前でさりげなく聴こえた、僕の大好きな音楽を 気付けば口ずさんでいた。


『…お前〜それでも人間か〜…』



【song by:BUMP OF CHICKEN“車輪の唄”それだけでも明日から、またの続編っぽいもの。】

家族の定義(銀魂:銀神/微妙な…)

夕焼けこやけの帰り道:ひとりぼっち。

繋いだ手の温もりは、もう記憶の隅っこにすら残っていないけれど、それでも思い出す度に懐かしくてくすぐったくて、泣きそうになった。
沈んでく夕日の向こう側の知らない星に、自分の求めていた居場所があったのだろうか なんて考える。
自分で選んだ道だ。後悔なんてしていないはず なのに、こころの奥で“私はここにいて良いんだろうか”、と言う疑問が巣食っていてもやもや、そしてぐるぐる渦巻いて。

砂場で城を作って遊ぶ親子や滑り台にいる子どもを迎えにくる親、どちらも嬉しそうで幸せそうで、ため息ポツリ。
真っ直ぐ伸びた小さな影をぼんやり見つめていると見慣れたシルエットの影が自分の影と重なった。






「こーんな所で何やってんの、神楽ちゃん」


間延びした声に反応して顔を上げると、夕日を浴びて突っ立っている男の姿があった。
銀髪がオレンジ色の光に透けて、まるで自ら光を放っているように見える。そんな神々しい姿に反して、自分を見つめる顔はいつものやる気のない顔だった。


『銀ちゃん、』

「これからは大人の時間だろーが。ほれ、帰るぞ」

『…分かってるアル』


ついこないだ買ってもらった可愛らしい日傘の下で、わざと頬を膨らませてぶんむくれてみる。
キイ、と座っているブランコが古くさい、錆び付いた音をたてた。


「何、反抗期ですかコノヤロー」

『…違うもん』

「じゃあ何でそんなに不貞腐れてんだよ」


めんどくせーな、とあからさまなため息をつきながら頭をボリボリと掻く。
その後ろを笑顔で、手を繋ぎながら仲良く帰って行く母親とその子ども。

何だか無性に腹が立って(どうして何も分かってくれないの)、切なさが込み上げてきて(ホントの親子じゃないから かな)、思わず(そんなこと言いたくないのに)声を荒げて叫んでいた。




『もぅ、あっち行けヨ!!』




言ってから後悔、した。

目をまんまるくして私を見つめる、銀ちゃん。
逃げるように視線を逸らしてから途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


『──…私と、銀ちゃんは、“カゾク”じゃないネ。
だから、私のことなんてホントはどーでもいいアルね。

……家族、じゃない…アル…』


唇が千切れるくらいにギュッと噛みしめる。
何を言ってるか自分でも良く分からなかったけど、言葉に出来ない感情だけがこころの中で高ぶって、


『何で、銀ちゃんと私は、家族、じゃない…アルか……?』




黄昏の中に溢れた、本音と涙。
手の甲で、ぐしっと乱暴に拭うと胸がずきんと痛んだ。

宙に千切れた可愛いわがままひとつ、キラキラと輝いて散らばって。
ただ恨むは違う血の色。異なる種族。


住む世界が違うんだ、と誰かが言った。
その誰かさんは私の手を黙って引っ張ってくれていた。のに、私はその手を振りほどいた。


なのに、どうしてこんなにも苦しいんだろう。


「バーカ、」


いつもより柔らかな声、が、私の頭を滑るように撫でた。


「…家族ってモンはよォ、血が繋がってるとか、名字が一緒だとか、そーいうのは大して重要じゃねー。
大事なのは心だ。心が繋がってりゃあ恋人や兄弟、家族にだってなれるんだぜ?」




現に、俺とお前がそうだろが。
そう、私と自分を交互に指差して言った。


『こころ、アルか…』

「おう。それとも何だ、俺とお前は家族じゃねーってか?」

『家族ヨ!』


その言葉に反応して視線を上げると、さっきより深くなった橙色の中に私の大好きな笑顔が、ぽっかりと浮かんでいた。

そんなことで悩んでんじゃねーよ そう、言ってくれたから。
あったかくて、これまで隠していた気持ちが揺らいで、見て見ないフリなんか出来なくて。
ありがとう、ごめんね、それからありがとう。


嬉しさと戸惑いの間、何を言おうかと迷っていたら、不意にぐらりとブランコが動き始めた。


『ぅ、わっ!?』

「オラ、しっかり捕まってろよ」


細い木の板に、ふたつ分の体重
ぎいこ、ぎいこ、軋むブランコ
振り子のように行っては来たり、で
繰り返し繰り返し、遊ぶこころ達。

響くは遠く、遥か彼方まで家族のような笑い声。


『銀ちゃん!ちょ…怖っ!怖いアル!!』

「この無重力なカンジがいいんじゃねーか、ほれほれ、もっと漕ぐぞ」

『ギャー!吹っ飛ぶアルぅ!!』

「このまま手ェ離したら鳥になれそうじゃね?あ、今なら鳥になれそうな気がする」




シアワセ家族計画



私はここにいていいんだ、小さな幸せを噛み締めながら、風に揺られる。

新しく覚えた温もりを、きっとずっと忘れないだろう。

第XX訓:赤信号はみんなで渡れば怖くない(銀魂:万事屋)

なんだって一人より大勢でやった方が安心だし安全だ。

赤信号もしかり、怪談話とか心霊現象の番組とか、ボイアハザードみてーなゲームだってみんな一緒だったら怖くない訳で、むしろそーいうのもみんなで見たら「何これ、ヤラセじゃねーか?」って笑いながら馬鹿に出来る。

でも、いざ寝る時になったらちっちゃな家鳴りに反応しちゃったりカーテンの微妙な隙間が気になったりしねー?いやあるはずだ!
幽霊の気配がした気がして眠れなくなるのはぜってー俺だけじゃない!誰もいないって言い聞かせながら無理矢理寝ようとするのは俺だけじゃない!


い、言っとくけどなァ、こ、怖い訳じゃねーよ?これ、あの、人間の摂理ってやつだ。次のテストに出るからお前らちゃんとメモっとけー。以上!






目の前のテレビに映っている二人組の司会が、今までのおどろおどろしい雰囲気とは違う呑気な口調で番組を締めくくっている。


『さぁ、いかがでしたか?“全身が凍る、世界の恐怖映像出しまくりスペシャル”!
2時間お送りしてきた訳ですけどねー、もう僕さっきから鳥肌立ちっぱなしですよ』

『本番中にちょっとしたハプニングもありましたけど、まあ無事に終わって良かったです。
それではまた会う日まで!さようなら〜』


パチパチパチ、と拍手に包まれENDの文字が出る。と同時に、テレビの前を陣取っていた神楽がブラウン管に向かって指を差した。


「これこれ!この男が“女性エイト”でパパラッキョに美人とのツーショットを撮られた男アルよ!」


神楽のその一言に、台所で洗い物をしていた志村新八が手を止め、テレビに目をやる。
パパラッキョじゃなくてパパラッチね、と自分の役目を果たしてから言葉を続けた。


「ああ、この人ね。確か相手の人は有名モデルさんだっけ?」

「フン、そんなのどうせ一夜限りの恋アル。朝が来たら何もかもがなかったことになってるネ。男はみんな汚いヨ」

「か、神楽ちゃあぁぁん!?銀さんアンタ何教えてんのォォ!!」


神楽の一言に動揺した新八が、ソファーに寝転がっている坂田銀時に問いかける。
銀時は頭をかきながら「んあー?」と間延びした声で返事をして、


「銀さんは悪くないよコレ、俺の育て方に不備はないからねコレ」


そう、自身の容疑をあっさり否定すると手をひらひらさせながら「新八ぃー、立ってるついでに冷蔵庫からいちご牛乳取ってー」と新八に言う。
新八は呆れながらも冷蔵庫の扉を開け、ピンク色のパッケージのそれを取り出し、銀時に手渡した。

すると、それまで正常に映っていたテレビの画像に、突然ノイズが入りだした。
テレビと向き合っていた神楽がその異変にいち早く気付く。


「ぉろ?何かテレビの調子がおかしいネ…」


立ち上がり、本体を軽く叩くが雑音の音が大きくなるだけで一向に良くならない。


「銀ちゃーん、新八ぃ、テレビが何か変アルよー」

「アレ?本当だ、どうしたんだろ…」


神楽の一言に、新八もテレビに近寄って不具合を確認する。
チャンネルを変えても、電源を消しても、直る気配が全くない。


「ちょっと銀さーん、黙って見てないで手伝って下さいよ」


銀時の方に視線を向けるが、当の本人はそっぽを向いていて知らん顔をしている。
銀さん と新八が口を開こうとした時、ノイズ音より大きな電話のベルが閉鎖された部屋に鳴り響いた。


「…電話か、誰だろ?」


新八はすぐにデスクの上に置かれた電話の元へ向かい、受話器を手に取ると慣れた口調で応対する。
それを訝しげに見ていた神楽だが、彼の口から「ああ、姉上ですか」という言葉が漏れるとパッと笑顔になった。
新八は二言三言お妙と話すと、分かりました、と言って電話を切った。電話の内容は帰宅を促すもので、彼は銀時に帰ります と告げようとした、が。


「…って、銀さん?」


さっきまで寝転がっていたソファーに銀時の姿がない。
キョロキョロと辺りを見回すと、部屋の隅っこで小さくなって震えている見覚えのある後ろ姿。

新八は駆け寄り、「何やってんですか銀さん!」と軽く肩を叩いた。

その時である。


「っひぎゃああぁぁ!!?


妙に甲高い叫び声が部屋を包む。
一瞬の静寂の後、銀時がバッと振り向いた。そして震えた声で、


「な、なーんだ新八君じゃないか…あれ程背後に回る時は気配を消すなって言ったのにぃ」


と、引きつらせた笑顔を浮かべて言った。
そんな銀時を軽く無視して新八が「僕もう帰りますから。じゃ、おやすみなさい」と、帰路につこうとする。

が、踵を返した新八の腕を銀時は反射的に思い切り掴んでいた。


「あいたたた!ちょっと何するんですか銀さん!!」


あまりの力の強さに顔をしかめるが、銀時はまるで聞いていない。それどころが、


「頼む新八君!!帰らないでくれお願いだから!!!」

「…は?」


なんて言われたから、驚き。
神楽の、「…銀ちゃん、何言ってるアルか気持ち悪い」という一言で銀時は現実に戻ってきたらしく、しどろもどろに言葉を紡いだ。


「あ、いや、だからな、ほら!外は暴風大雨注意報が出てる訳だから、今外に出たら寒中水泳がお前のフトモモを」

「言ってることが全然分かりません!っつーか外めっちゃ静かですけど!?」

「おま、分かってねーな、これから雨とかあられとか、槍とかテリー佐藤とかが降ってくるんだっつーの!
だから今日はここに泊まれ!!」


そして銀時は呆然としている神楽と驚愕中の新八を交互に見て、


「お前ら!今日は川の字で仲良く寝るぞ!!
今こそ万事屋の絆を深める時だ!!」


と、やたら熱く宣言したのだった。




こうして万事屋3人、川の字で仲良く(?)寝ることになったのだが…。


「ちょ、銀ちゃん暑苦しいアル!もっとぱっつぁんの方に寄るヨロシ!」

「うわっちょっと銀さん!!あんまりべたべた寄ってこないで下さいよ!」

「だーもううるせーな!我慢だ我慢!!
布団が2枚しかねーんだからしょーがねーだろ!」

「もう我慢できないアル。私自分の部屋行くネ」


窮屈さに堪えきれず布団を出ようとする神楽だが、それを必死の形相で止める銀時。
お願い神楽ちゃん、俺の傍にいてェェ!!と、子どものように駄々をこねた。


「もぉーうるさいアル銀ちゃん!ピーターパン症候群気取ってんじゃねーヨ!」

「気取ってなんかねー!
お前らがさっきのテレビ番組見て眠れなさそうだったから、俺が添い寝してやるっつってんだろーが」

「誰もそんなこと言ってませんけど」

「言ったって!素直になれって!ホントは怖いんだろ?全く、まだまだガキだなぁお前らも」


そうぶつくさ言って銀時は両サイドにいる神楽と新八の手をギュッと握る。
神楽と新八の眉間にシワが寄ったのはほぼ同時だった。




「「銀さん(銀ちゃん)の手ぇ汗ばんでて気持ち悪い(アル)!!」」



 え、俺?俺は全然大丈夫だけど

 あ、窓の外に血まみれの女がいるネ!

 ぎゃあああぁぁぁ!!!!!!

 やっぱオメーが一番怖がってんだろォォ!!



【万事屋ほのぼの…のつもり。
無駄に長くなった上に駆け足でちんぷんかんぷんorz】

グッバイ&ハロー!(銀魂:3Zオール/600hit記念夢)

集合場所はいつも屋上だった。

授業中に“次の時間屋上に集合!”なんて誰かからのメールが来るのは当たり前。またか、とため息をつきながら嬉しく思う自分。
そして次の授業をサボって軽い足取りで屋上に行くと、見慣れた顔が勢揃いしているから驚き。もう慣れたけどね。

あたし忙しいんだけど、なんて口では言ってもホントはこの空間が心地よかったりして、そうしていつの間にか“次の時間屋上に集合!”ってメールを送る立場になっていて。
うざったいくらいに広がる青空の下、集まった奴らは「俺忙しいんだよね、お前と違って」とか愚痴をこぼしながらしっかり来てくれるんだ。


誰かが気まぐれで送信してくれるメールが、楽しみだった。






だからって言って集合して何をする訳でもない。
丸々一時間、みんなでだらだらするのが多かった気がする。

しりとりだけで終わったりしたこともあったし、みんなで昼寝もした。
学校の怪談を一人ずつ話したり、修学旅行の行き先を決める会議なんかもここでやったし、(主に近藤君中心の)恋愛相談所なんかもオープンしたこともある。
そう言えば昔、昼寝で爆睡してみんなに置いてかれたこともあったっけ。(そして顔にはお約束の落描き)(もちろん犯人は総悟のヤロー)

ザキが提案した“担任の銀ちゃんについて良い所を挙げていこうゲーム”は、みんなが「糖分が好きな所!」て言ってゲームにならなかったし、とにかく屋上に来ればそれまで感じていた眠気が吹っ飛んで、ただひたすら笑って。
笑い疲れて残りの授業が億劫になるくらいだった。



でもそれだけじゃない。


あたしが付き合っていた先輩に振られた時も、いつものように集合メールが届いて(こんな時に限って!)わんわん泣きながら屋上に向かうと、みんなが涙でくしゃくしゃになった顔のあたしを慰めて、励ましてくれた。
その時、いっつもあたしに意地悪言ってくる総悟が凄い優しくて、長谷川君も、キャサリンも、神楽ちゃんも、桂君も、みんなみんな優しくて。

その時、ああ、これが青春なんだなぁ…ってオバサン臭いけど、そう思った。


そう言えば罰ゲームで新八君と“タッチごっこ”もやったっけ。あれはホント恥ずかしかったなぁ。


「し、志村新八は…あの、その、えっと……」

「あ゛ぁー!!ダメガネ!何どもってるアルか!?しっかりするヨロシ!」

「新八君!!日本男児ならビシッと言うべきだ!例えばそう、俺のように!!
うおー!近藤勲は志村妙のことを「何言っとんじゃあこのクソゴリラ!!!

「局長!じゃなくて、委員長が屋上から落ちたァァ!!」

「…恐るべし志村姉」

『妙ちゃん…スゴすぎ』


まあ、近藤君は無事だったからいいんだけど。(血まみれなのに普通に動いてた)

桂君と人妻について熱く語ったこともある。
あの時は桂君の目がキラキラ輝いてて、なんだか可愛かった。


「普通の女子には興味はない。
私は、人妻と言う肩書きにしか萌えないのだ」

『えー!人の物は取っちゃダメだって先生に教わったじゃん!』

「それがいいのではないか!一線を越えてしまった禁断の関係…誰にも言えぬ純愛…」

『…昼ドラの見すぎじゃない?』

「ああ、未亡人は最高だな」

『いや誰も聞いてないし!』


気が付けば、屋上はあたしの学校生活に欠かせない場所になっていて。
居心地いいと言うか、青春の中心と言うか、屋上ではあたしの全てをさらけ出せた気がする。

信頼出来る仲間がいて、日常化した集合のメールが来て、馬鹿みたいに笑って、泣いて、また笑って、それが全てだった。




『今日で終わりかぁ』


誰にともなくぽつりと呟くと、隣にいた妙ちゃんがそうね とどこか寂しそうな口調で言った。


『濃いメンバーだったね』

「でも楽しかったアルよ!」

「ええ、毎日学校が楽しみだったわ」

「ホント、僕らのクラスは笑いが絶えませんでしたね」


いつもと違う朝、教室にいるみんなはいつもより制服をぱりっと着ていて、まるで入学式を迎える新入生みたいだった。

ちらりと見た携帯の受信メール数は0:今日は来ないって分かっているのに、ため息をついた。


「何泣きそうな顔してんでィ」


ふと、総悟に話しかけられた。後ろにはトシや近藤君、ザキまで一緒にいる。
みんなが揃って真面目に制服を着ている姿を見るのは初めてだった。ちょっぴり違和感、


『泣きそうな顔…してた?』

「泣きそうな、っつーよりしかめっ面だな」

「なんだ、腹でも痛いのか?俺が女子トイレまで付いていってやろう!」

「委員長、それ、セクハラです」


あたしはそのやり取りを見て、何故か目の奥が熱くなった。
ぐっと下を見て堪えると、あたしの顔を総悟が覗き込んでくる。


「なんでィ、卒業式前に泣いちまうなんてフライングもいい所でさァ」


きしし、と意地悪っぽく笑う総悟。
あたしは『ち、違うもん!』と顔を隠しながら反論した。


『こんなうるさい毎日からようやく解放されるから嬉しいんだもん!
くだらない呼び出しに付き合うのもうんざりしてて…』

「とか言っといて、一番呼び出してたのはお前だろ」

『……確かに』


トシの容赦ない言葉にあっさり折れたあたし。その事実は否定出来なくて。
くすくすと笑いながら、妙ちゃんが口を開いた。


「それにしても、本当に色々あったわね」


そうアルな!と神楽ちゃんが妙ちゃんの一言にみんなが便乗してきた。


「卒業だなんて、考えられないですね。未だに実感が沸かないんですけど」

「ホント、今日でみんなとお別れなのかぁ…」

「何言ってるアルかザキ!
卒業しても、またみんなで集まるアルよ!」

「そうだな!幹事はこの俺、近藤勲に任せろ!」

「近藤さん、センスねーからなぁ…」

「猿の惑星とかに連れていきそうですねィ」


あはは、と教室に笑いがこぼれる。

そんな中、あたしの脳内ではみんなで過ごした日々が突然走馬灯のように蘇って、なんだか置き去りにされた遠い過去が懐かしく思えた。

机に書いた落描きも、壊した窓ガラスも、柱につけた傷も、この席から見えるこの景色も、あの「糖分」の文字も、やる気のない担任の先生も、全部今日でさよなら  、だなんてこころが考えられくて。


『ねぇ、』


無意識に唇から零れていた言葉は、飾り気のないあっさりとしたものだったけど。



『またみんなに、集合メール、送っていい?』



ここが僕らの笑学校!



勿論!と同時に返ってきた言葉達に情けなくも涙腺崩壊

教室に入ってきた、黒いスーツに身をまとった銀ちゃんに「もう泣いてんのかよ」って笑いながら言われた。



【song by:あつ“笑学校”

600hit記念の3Z卒業夢。
ありがとうをこめて、みんなに!】
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