先日の「自殺志癌者」イベでイヴリンをドルインサマイグに検体として送る案が浮かんだのは、実はドルインサマイグでイベントしたかったからなのだった。
そもそもが、ニキータさんの飛空艇製作で、イベを一緒にやらないかと誘ってもらった際に、じゃあドルインサマイグでやりたいね、となったことが発端で。
ただ、もうやらんと思うので、作った導入だけ供養で載せておく。
このイベは、発狂を楽しむイベです!!!!
【ドルインサマイグ設定】
・感染病を蔓延させないため、街は何区画かに区切られており、物理障壁、結界障壁が完備されている
・各病院にも結界障壁、エアフィルター(防毒)有り(シェルター施設になるように)
・隔離後の物質搬入は病院にある転送装置(一方的)によって行われる
・自警団的な組織アリ→警務隊
・病院、診療所、薬局、研究学院などが多く、ちょっとした風邪でも診療所に行くのが街人常識
・予防のためにマスクして歩くのも常識
(療花隊のスキルアップのため、ドルインサマイグへの一週間研修の話が持ち上がったのは半年前。ドルインサマイグの医院研修および、自警団と似た組織である警務隊の視察を含めた内容で、一週間後にはペティットに戻ってくる予定だった)
(ーーしかし、一週間を過ぎても彼らは戻ってこなかった。そうして、二週間近く経った頃、自警団詰所にやってきたのは、ドルインサマイグの警務官だった)
警務官>私はドルインサマイグの第三警務隊の副隊長トルク・マーヴィンと申します。現在、ドルインサマイグはある感染病が爆発的に拡がっており、研修に来た療花隊の方々を含め、多くの市民がドルインサマイグから出られない状態です。まずは、これを聞いてください。
(そうして差し出したのは、一つの蓄音石だった。再生された音声はやけに明るい声だ…)
『ハーイ!皆はんのお耳の恋人、シシムラでーす!!ドルインサマイグの水際戦線から、こちらを録音しております!!時間がないのでチャッチャッと用件だけ言うていきますねェ!』
『先に結論から言うと、この病は「恐怖感染」で拡がります!恐怖を覚えた瞬間、幻覚、幻聴が始まります。これがstage1です!さらに恐怖が高まると恐慌状態になって、周りを無闇に攻撃し始めます。これがstage2です!この区画では、一部のstage2が突然暴れだし、一気に恐怖が拡散。アウトブレイクしましたー!おかげで、この街の二区画を閉鎖!隔離結界と物理的なバリケードで、対処しとりますが……「恐怖」が感染経路ですからなァ!隔離した安堵感で他区画の方々もメンタル保っとるでしょうけど、隔離結界が緩もうものなら、感染するのも時間の問題です!』
『さらに、閉鎖区画の中におるボクも「万が一」を防ぐため、向精神薬をガンガン打っとる状態で…簡単に言うたらヤクでラリってまーす!ほんでも、この薬も精神安定のマジックアイテムも、そろそろ限界で……かなり切羽詰まったところで、レッツポジティブシンキング!!ペティットの皆はんを頼ろうと思いましてなァ!』
『皆はんにお頼みしたいのは、こちらで取った解析データを、外の区画にある研究所に運んでもらいたい、ちうことです!今、解っとるのは、これは呪術ウィルスであり、この呪術プログラミングを解析すれば、治療魔術も開発出来るはずです!ただ、呪術師も魔術師も、こちら側には足らんのですよ。既に院内の医師も警務隊の方々も、療花隊員らも発症して、……もうボクしかおらんのです。はははははは!!』
『元々、ボクは呪術に耐性があったから、この通りまだなんとか正気ですけど、恐怖はここでは増幅されるようで。些細なことにすら、ゴリゴリ正気を削られますよ!皆はんも、精神汚染への対策を立ててから来てください。それから、襲ってくる方々がいても、全員、患者です!治る見込みがある以上、絶対に殺さんといてくださいよ!!』
『患者同士が襲い合うことがないことから、呪術ウィルスには何かしらの抑制力が組み込まれてるのは間違いありまへん!仲間と見なしたら襲わない、的な発想でええと思います。この抑制力を再現できれば、治療もしやすくなります。せやから、こちらで取れたデータを…発症する前に皆が必死で解析した分を…!そちらの研究所で解析を続けてください。この病はstage3まで進行することが確認されとります。stage3になるとーーーブツッ』
(蓄音石の音声は急に切れてしまった)
警務官>…この蓄音石は、先日、マジカルレターにくるまれた状態で私の元に届きました。私は療花隊の皆さんに詰所案内などをしていましたから、それで私宛に届けたのだと思います。マジカルレターには「ペティットに救援要請を」と一言だけありました。
警務官>感染が始まったのは、丁度、今から10日前。一部地域で暴動が発生したとの通報があり、現場に向かった警務隊の者から「この暴動は普通じゃない」と通信が入りました。それを皮切りに、あちこちで暴動の通報が相次ぎ、鎮圧に向かった者たちとも連絡が取れなくなってしまい……向かった警務隊からの最後の通信は「これ以上の被害拡大を防ぐため、区画を封鎖する」と。まもなくして第五区画と第六区画が、区画内から物理障壁と魔術障壁によって封鎖されました。
警務官>感染病発生当時、運悪くペティットの療花隊の方々は第五区画にあった『カナリア医院』で研修しておりました。恐らくは、今も医院にいるのだと思われます。
警務官>本来なら、我々だけで対処するべきですが、隔離区域の調査で向かった警務隊は皆、戻ってこず……隔離外の区画でも不安が拡がっており、そちらの対処に追われているのが現状です。この蓄音石が送られてこなければ、恐怖感染であることも解らず、街全体が感染されていたかもしれません。
警務官>自警団、冒険者問わず、どうかドルインサマイグを助けてください。(トルクは深々と頭を下げた)
突然、脳天に突き刺さる鋭い痛み。脳ミソにメスを突き立てられ、ぐりぐりと掻き回されたかのような、激痛と不快感と込み上げる嘔吐感…
それらを感じた瞬間、ぷつりと痛みだけが欠落し、鼻から、目から、耳から、掻き混ぜられた脳と体液と血が、生暖かく、どろりと流れ出していくリアルな感覚、感じる恐怖。たまらず吐き出せば、咥内を生臭く、なんとも言えぬ苦味と錆鉄の味が満たす。吐いたものを見下ろせば、ぬるりと泡立つ体液に混じる赤黒い肉片…
見えるのは血と錆と膿と、飛び回るハエと沸き出す蛆と、……そして、自分が恐怖したものと。
まだ言葉はしゃべれるだろうか。目はまだ開いているだろうか。開いていても、きちんと現実を見れているのだろうか。自問自答に意味はなく、狂気が精神を緩やかに蝕んでいく。今、自分は何を見て、何が聞こえ、何に恐怖を感じたのか。
───強制発狂。