夏合宿ホラーイベの、補完になるかもしれないし、謎が深まるかもしれない。
そんな、何か。
ただ、あまり気持ちのいい話ではないので、ダメそうであれば、閉じること推奨。
ちなみに、壁の穴はただの劣化で穴が空き、修復されたばかりで誰でもイジれた。
書き殴りではあるけれど、興味がある方は、どうぞ。
↓↓↓
どうして、こんなことになったのだろう。
それを考えても考えても、あたしにはちっともわからなかった。
ママが外に働きに出るようになって、弟か妹が出来たよ、と教えてもらって。
その日から、優しかったパパは変わっていった気がする。
パパはよく肩車をしてくれた。
大きな手で頭を撫でてくれた。
泣いて欲しがればお菓子も買ってくれた。
でも、今のパパは何もしてくれない。
いつも怒った顔をして、ママがお仕事に行くたびに、怒鳴ってママを殴る。
止めに入れば、あたしも殴られた。
だから怖くて、怖くて、ママが殴られても隠れて見ていた。
……ごめんなさい、ママ。
泣いて謝ったら、ママはアザだらけの顔で、笑って頭を撫でてくれた。
「パパに怒りんぼうの虫がついちゃった」って、笑ったまま泣いて教えてくれた。
でも、あたしにはわかる。
きっと、ママがお外に行くのが気に入らないんだ。
気に入らなくて、怒りんぼうの虫がついたんだ。
だから…ねぇ。ママはお仕事、辞めたよ?
パパの側にずっといるよ?
それなのに、なんで怒りんぼうの虫はどこかに行かないの?
ママはあたしを連れて、家を出た。
このままじゃ、ママが殺されちゃう。
あたしにはわかる。
どうしたら、前のパパに戻るの?
優しかったパパの絵を描いたら、思い出してくれるかな。
また、あたしを肩車してくれるかな。
ねぇ。なんでパパは怖い顔でやってくるの?
ママとあたしが逃げたから?
どうしてみんなを殺すの?
あたしが逃げたから?
ママをどこに連れていくの?
もう、ママは動かないよ?逃げないよ?
どこにママを連れていくの?
ねぇ。何をしてるの?
ママのお腹に何をしてるの?
ダメだよ。
そこには赤ちゃんがいるんだよ。
あたしの弟か妹がいるんだよ。
ダメだよ。やめて。やめてよ。
―――あ。
……どうしよう。
赤ちゃんがいない。
パパが連れていっちゃった。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
ママが可哀想だよ。また泣いちゃう。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
――そうだ。
いつも一緒のうささんを詰めたら、きっとママは泣かないかな。
お腹に赤ちゃん戻したら、ママはきっと元通りになるよね。
ねぇ。なるよね?
ママのお腹にうささんをあげたら、また起きてくれるよね?
ねぇ。元通りにしたら、起きてくれるよね?
そうでしょ?そうだよね?そうにきまってるよね?
ねぇ。ママ、起きて。起きてよ。
お腹にうささん、いるよ?
赤ちゃんじゃなきゃ、ダメなの?
元通りにしたよ?起きてよ。
ねぇ。起きてよ。
―――起きて!!
パパが来た。
あたしが好きだった歌を歌って、やってきた。
でも、もうあのパパはあたしのパパとは違う。
きっと怒りんぼうの虫が、パパを乗っ取っちゃったんだ。
あれはパパの顔をした、怒りんぼう虫なんだ。
……怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
「エレナ…そこにいるんだろう?
お家に帰ろう。ママは先に帰ったよ」
パパの優しい声がする。
でも、嘘だ。
ママはお家になんて帰ってない。
嘘だ。怒りんぼう虫が嘘ついてるんだ。
嘘だ。嘘だ。
みんな嘘ならいいのに。
みんな夢ならいいのに。
「エレナ…」
あれはパパじゃない。
あれはあたしのパパじゃない。
あれは怒りんぼう虫で――
じゃあ、パパはどこにいったの?
「エレナ……」
パパ。パパ。
助けてパパ。
パパは自警団さんなんでしょ?
とってもとっても強いでしょ?
パパ、助けて。
ママもエレナも赤ちゃんも――
みんな、みんな、助けて!!
「エレナァアアアアア!!!!」
ドンッ!
…………あ。
あれ…?
あたしの…むね、に……あ…な……
――ねぇ。パパ。
なんで……ママが、働きにいったか…
知ってる?
あたしのせいなの。
あたし、ドラゴンに乗りたかったの。
ドラゴンに乗って、パパとママと――それから赤ちゃんと。
みんなで旅行に行きたかったの。
ドラゴンに乗りたかったの。
だから、ママは働きに行ったの。
だから、全部全部、あたしのせい。
あたしが悪いんだ。
だから、あたしが返さなきゃ。
ママに赤ちゃん返して、元通りにしなきゃ。
だから――ねぇ、パパ。
あかちゃんを どこにかくしたの?