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小ネタ(ボーカロイド・目覚めた瞳のその先に・ネギトロ)

目が覚めたらライブの映像。それが初音ミクとの出会い。



「…巡音ルカ、起動します」

とある研究所の一室において、一人の女性が横たわっていた。いや、正確には女性型ボーカロイドと呼ばれる存在であり、一目見ただけでは人と見分けるのは至難の業であろう。
そんな彼女が静かに目を見開き、ゆっくりと起き上がる。そして、まず彼女の瞳に飛び込んできたのは一台のモニターであった。

〜〜〜〜〜♪

目の前のモニターからとても心地よい澄んだ歌声が流れてくる。モニターに映し出されていたのは緑髪のツインテールの少女であった。
初音ミク。もちろん、ルカのメモリーには彼女のデータはこと細やかに入っている。ただ、それがどうして目の前で流されているのかは分からない。

「おはよう。気分はどう?」

起き上がったところで、白衣の女性が声をかけてきたことに気が付いて、そちらを見やる。
朗らかな笑顔。もしくは友好的な笑顔とでも言えばいいのか。そんな表情で彼女は見つめてきている。
おそらく、開発者の一人なのであろう。ルカは静かに頷いていた。

「はい、問題ありません」
「そう、よかったわ」

とりあえず世間話を始めるように問いかける形で簡単にチェックをしていく。チェックを済ませたところで、ルカは湧き出てきた疑問をぶつけていた。

「あの、モニターの…」
「ああ、ミクちゃんのこと?」

まるで予測できていたかのように彼女は明るい笑顔で返事をしてくる。見透かされたことに戸惑ってしまったのか、ルカの方が言葉に詰まってしまった。

「ええ、まあ」

言葉を濁したように返事をすれば、それを可笑しく感じたのかクスクスと微笑んでくる。とはいえ、それも一瞬のことですぐにルカの問いかけに答えてきた。

「そこにいるミクちゃんのたってのお願いということでね」

苦笑いを浮かべる彼女の視線を追えば、ルカが横たわっていたベッドにミクが座り込んでいた。ただ、今はベッドに伏せたまま静かに寝息を立てている。

「ぜったいルカちゃんが起きるのを見るって聞かなくてね。待ちきれなかったのね」
「…はあ」

気のない返事をして、ルカはミクを見やる。確かに目の前にいるのは初音ミク本人であり、相変わらず幸せそうな寝顔をしていた。
…やはり何度考えても彼女がここにいる理由が分からない。そんなルカの戸惑いに気付いているのかいないのか、白衣の女性はにこやかに語りかけてきた。

「ミクちゃんはね、貴女が開発されると聞いた時からずっと貴女のことばかり話しているのよ」

その表情はまるで母親が娘を自慢するみたいに誇らしげで、力強く輝いている。
目覚めたばかりのルカにはそのことが分かるはずもなかったが、彼女の生き生きとして話す姿はうらやましく思えた。

「それでミクちゃんから相談を受けていたのよ。ルカちゃんにどうしたら好印象を貰えるのかなって。
いろいろと考えたあげく自分の歌声を聞かせてみようということになったんだけどね」

ここでようやくミクのライブ映像が流れていたわけをルカは理解していた。
しかし、それでも分からないことはある。

「どうしてこんなことをしてみようと思ったのでしょうか?」

表情を動かさず、ルカは頭をひねらせている。素っ気ないものではあったが、ルカの中で何かが芽生え始めていることに白衣の女性はどこか満足げだ。
からからと楽しげに微笑んで、ルカに温かな視線を送っていた。

「ミクちゃんはルカちゃんが好きだから好かれたいと思っているだけ。ただそれだけよ」
「…好き…ですか?」
「そう、あの子も暴走しちゃってるとこもあるけどね」

ほんのりと苦笑いを浮かべて、次に彼女はミクに視線を送る。相変わらずの温かみを帯びた視線に、ルカの心の底からじんわりとしたものが湧き出ていることを感じ取っていた。

「あの、好きとはどういう感情なのですか?
さっきから胸の奥がもやもやとします」
「そうね。説明するのは難しいけど、貴女が今この子にしてあげたいと思っていることなんじゃない?」

そう言われても理解できるはずもなく、ルカは目を丸くしているばかりだ。
一方でルカの中で次第に芽を伸ばしていっていることに満足して、彼女は席を立っていた。

「とにかく、今の疑問について真剣に悩めばいいと思うわ。それが今後の役に立つと思うわよ?」

出ていく間際で振り返り、彼女は先ほどのセリフを残していく。
結局、答えを得ることは出来なかった。わけの分からないままルカは静かにため息を吐く。もやもやは晴れなかったが、不思議と充実感がルカの中で占めていた。
時間をかけて考えろということなのだろうか。とりあえずそう解釈することにして、ルカはミクを見やる。
すると、まるで示し合わせていたかのようにミクが身震いをしていた。目が覚めたらしい。

「お目覚め?」
「おはようございますー」

寝ぼけ眼を擦りつつ、ミクはゆっくりと起き上がる。何度か瞳を瞬かせたところで、ガタッと立ち上がっていた。
どうやら事態を把握したようだ。

「は、はじめまして!初音ミクです!」

緊張からか、妙に上擦った声で直立不動の態勢である。生まれたばかりのルカとすでに名前を轟かせているミク。明らかに立場はミクの方が上のはずなのに、取るべき態度が正反対なのは可笑しく思えた。

「そんな固まらなくてもいいんですよ」
「だって、ルカちゃんが起きていて目の前にいてわたしとしゃべっていて!」

落ち着きなく早口で捲し立てて、ミクは混乱しているようだ。目を回しているみたいでなんだか可笑しい。
ここで、ルカはふと笑みを浮かべていることに気が付いた。同時に微かに鼓動が速まっていることも。この感覚はなかなか悪くない。

「とにかく落ち着きましょう」
「むりムリ無理!ルカちゃんが話しかけてくれただけでもう死んじゃいそう!」
「あの、どうして私と顔を合わせただけでそんなになってしまうんですか?」
「…へっ?」

ルカの問いかけにようやくミクは我へと返り、思案顔に耽っている。とはいえ、そんなに時間も掛けずにミクは満面の笑顔で応えていた。

「ルカちゃんが好きだからだよ」
「そうなんですか?」
「そう。ルカちゃんに変な印象持ってほしくないから、いろいろ考えちゃって」

ミクの無邪気な笑顔には妙な説得力があり、ルカも思わず納得してしまう。

「どうして会ったばかりの私が好きなんですか?」

ルカにしてみれば他愛もない質問だ。しかし、ミクにとっては十分過ぎるほどの言葉だったらしい。
顔を真っ赤にして、俯きながら胸の前でもじもじと指を交差させていた。

「そりゃルカちゃんは初めてかもしれないけどさ、わたしは何度も何度も会っていてこうやってお話するのが夢だったんだよ?」

静かに真剣な眼差しで聞いているルカになおもミクは続けていく。

「ルカちゃんが生まれてくるって聞いたときからさ、胸の辺りがぽかぽかとしててね。
ルカちゃんにどうやって自分のことを知ってもらおうかとたくさん考えていたんだ」

先ほどの白衣の女性と同じことをしゃべって、ミクは口を告ぐんでいた。身体中が震えており精一杯の勇気を振り絞ったのだろうと窺わせる。
最後に小声で「好きになってごめんね」という言葉がルカに突き刺さっていた。
しばしの沈黙が張りつめた空気へと変えていく。重苦しい雰囲気の中、ルカはミクの言葉を反芻させていた。
ミクの言葉がじんわりと染み渡る。『好き』という言葉の説明が難しいというのをなんとなく理解していた。

「ミクさん。私にはまだ好きという感情が理解出来ません。だからミクさんのことを教えてください。
初めて会ったばかりのはずなのにさっきからミクさんのことを知りたくて仕方ないです」

おそらく、これが好きになるということかもしれない。自然と言葉を紡げたことに戸惑いながら、ルカは微かに頬を緩めていた。
ルカの言葉にミクは顔を上げて、ぱあっと表情を輝かせる。泣いてたカラスがもう笑うという言葉の通りにころころと変わるミクの様子に心が安らいでいくのを実感していた。

「ルカちゃん、笑ったら可愛いからもうちょっとルカちゃんの笑顔が見たいな」

唐突にこう言われて、ルカは一瞬気の抜けた顔となる。どことなく垢抜けた様子がミクにとってよかったようで、満足げににんまりとしていた。

「…そうですか?」
「うん。これからたくさんわたしのこととかおしゃべりしたいから、笑顔で聞いてくれると嬉しいな」

淀んでいた空気はいつの間にやら吹き飛んでおり、二人のおしゃべりが始まる鐘が鳴る。
なんだか心地よいこの場所に身を委ねてしまおう。そう考えてルカはじっくりとミクの話に耳を傾けていた。









あけましておめでとうございます。新年一発目はネギトロになります

ルカの目覚めた瞬間から始まるミクとのお話を書いてみました

ところで、今日は01/03ですよね?

この日と03/01はネギトロの日にしたいなあとか寝言をほざいてみたいと思います

小ネタ(ボーカロイド・おひるねぎとろ)

とある冬の日の晴れた昼下がりのこと、初音ミクは冷えた身体を温めようとこたつのある居間にやってきていた。

「うー、なんか寒いし」

ほんの前まで暖かかったのが嘘のように空気は冷え込んでおり、がたがたと震え出す身体が温もりを求めている。
とにかく、助かりたい一心でミクは勢いのままこたつに飛び込んでいた。

「あー、いーきーかーえーるー」

すでにスイッチが入っていたのかこたつの中は温まっており、妙に間延びした声でミクは幸せいっぱいに頬を緩めてしまう。
だらしがないと言われてしまえばそれまでのことであるが、この寒空の下で動き回るというのも酷な話だ。
こたつの中でだらけた青春を謳歌しようと、ミクはいっぱいに足を伸ばしていた。

「…ん?」

しかし、コツンと何かがぶつかり、ミクは怪訝そうに眉をひそめる。どうやら先客がいたらしい。頭の中がこたつで埋めつくされていたせいか、全く気付いていなかった。
それならすでにこたつが温まっていたことも納得のことで、ミクはおそらくこたつの向こう側にいる人物の顔を拝もうと這いつくばっていく。

「誰がいるかな、誰がいるかな?」

自分でもよく分からない歌を口ずさんみながらこたつの向こう側に回り込めば、そこには静かな寝息を立てている人物がひとり。

「…ルカだったんだ」

巡音ルカは胸を上下に動かしており、心地よい眠りに身を委ねているようだ。先ほど足をぶつけたにもかかわらず起きる気配が見られない。
とりあえずルカの寝顔を堪能しようと、ミクはルカの真上に身体を置いていた。

「…ルカ、ルーカー。寝てる?」

問いかけてみたもののやはり起きる気配は見られず、相変わらず規則的な寝息を立てている。整った顔立ちが無反応であることを際立たせているようだ。
とはいえ、その弾むような唇はとても魅力的で引き込まれそうになってしまう。

「…やっぱ寒い」

しかし、体温を一瞬で奪っていく寒さには勝てることも出来ず、ルカの隣に潜り込んでいた。
ルカの豊満な肉付きの良い身体は保温性も強く、小柄なミクの身体をすぐに温めていく。無論、過剰に身体が火照ってきているのはそれだけが理由ではないが。

「…そんなに無防備だとキスしちゃうぞ」

ルカの耳に届くか届かないかという小声で話しかけている辺り、もう少し勇気を出せればと後悔の念が押し寄せる。
仕方ないので身体を寄せてルカの顔を覗き込む。このじっと見つめている時間ばかりがルカを独り占めしている気分となってミクの頬を弛ませていた。
ほんの数秒か数分か、二人でいられることに満足して、ミクはうっすら瞳を閉じていく。程無くして、うつらうつらと眠気が襲ってきて、ミクの意識は徐々に薄れてきていた。



それからルカが目を覚ましたのは、数える程度の時間が過ぎた後のことである。突如現れた違和感に身体を起こしてみれば、隣でミクが気持ちよさそうに寝息を立てていた。

「ミク…?」

いつものように甘えられているんだろうかと思いつつミクを見やる。その寝顔が何か落ち着きと安らぎを与えるようだ。
そんなことを考えながらルカはミクを起こさぬようにミクの髪に手を伸ばしていく。
二つに束ねられている片方をさらさらと流していき、もう一度拾い上げてはまたさらさらと流していた。
どこか楽しげに微笑んでおり、ルカはミクの額をそっと撫でている。

「まったく…、可愛い寝顔を私以外の誰かに見せるつもり?」

問いかけようにも当然のように返事はなく、ミクは小さな寝言を立てているばかりだ。
それが可笑しくて、ルカは何度も何度もミクの頭に手を伸ばす。途端にふにゃりと顔を崩してしまうものだから、ルカは肩を震わせて静かに笑い出していた。
胸に温かいものが込み上げてきて、ルカは自然と頬を緩ませる。この可愛らしい寝顔を一秒でも長く見つめていたいと、ルカは宝物を扱うようにミクの髪を溶かしていた。

「…ん」

しかし、それも長くは続かずミクはゆっくりと目を開いていく。少し残念ではあるけれど、気付かれないようにそっと戻して笑顔で迎い入れていた。
はじめは焦点が合っていなかったようで、うすらぼんやりと目をしぱしぱと瞬かせている。しかし、それもつかの間のことで目の色に光が灯ると一気に起き上がってきた。

「ル、ル、ルカ?」
「ルが多いわよ。少しは落ち着いたら?」

そうは言われても、起きたら間近にルカの笑顔があったら慌ててしまうのも無理はない。
口をぱくぱくとさせながら、内心穏やかでもなく、ミクは顔から湯気を吹かせていた。

「だって起きたらルカの顔が!」
「あら、先に隣に潜り込んどきながらそういうことを言うの」
「…ルカは意地悪だ」

急に不機嫌になってしまったようで、ミクはふてくされて頬を膨らませている。ころころと変わっていくミクの表情が可笑しくて、つい声に出してしまっていた。

「笑うことないじゃん…」
「…ごめんね?」

ますます機嫌を損ねてしまったミクのご機嫌直しにと、ルカは自身の唇をそっとミクの額に当てていく。
分かりやすいくらいにカアッと頬を紅潮させて、ミクはルカの顔を上目遣いで見上げる。
しかしそれも長くは続かず、すぐに顔を背けてしまっていた。やはり簡単には機嫌は直してくれないようだ。

「そんなんじゃ騙されないんだから。どうせなら唇にしてほしかったよね」

とはいっても口調はふてくされてはいたが、にへらと表情を崩しているあたり満更でもなかったらしい。
ルカは少し困ったように眉を潜めて一息吐いていた。そして、何か考え事をしたようなポーズを取ると改めて口を開いていく。

「そうね。寝ている隙に唇を奪えないようじゃ、まだまだ早いわね」
「…!お、起きてたの!?」

ルカの声を聞いた瞬間、表情を爆発させたように真っ赤にして、ミクはあたふたと身悶えさせながら、動きが怪しくなっていた。
もちろんルカの予想ではあったのだが、見事に図星だったらしく、俯いたまま完全に黙り込んでいる。
しばらくは赤ら顔でふるふると黙っていたが、やがてキッときつい眼差しで睨み付けてきた。

「……………るいんだから」
「…え?」

うまく聞き取れず、ルカは思わず聞き返してしまう。我ながら間抜けな顔をしているに違いないと胸の内で苦笑いを浮かべていた。

「…ルカが可愛いのが悪いんだから!」

思わぬ反撃にルカは先ほどの崩れた表情のまま固まってしまっている。ミクの言葉が次第に反芻していき、少しずつ表情に赤みを帯びてきていた。
なんとなく空気がぎこちないものとなり、お互いを意識して視線を反らせてしまう。とても近い距離にいるはずなのに、その距離が微妙に感じられてなんだかもどかしい。
そんな中、ルカの小指にミクの指が触れる。ほんのわずかな感触だったけれど、ミクを少しでも感じていたくてそっとミクの手に重ね合わせていた。
そうすると、ミクも気付いたのか手のひら同士を合わせて指を絡ませてくる。
二人の外れていた視線が再び重なりあう。ミクは機嫌よくにへらと活気溢れる笑顔を浮かべていた。

「何が可笑しいのかしら?」
「そっちこそ。ルカがそんな笑顔見せるの久しぶりだよ」

二人とも可笑しくて仕方ないようで、声を抑えることが出来ないでいる。
ただただ笑い声を上げて、二人はお互いの手を握り締めていた。

「ねえルカ。みかん食べたい。食べさせて」

そして、いつものようにミクは甘えてくる。みかんを取って丁寧に皮を剥いて差し出してきた。
さすがにこういうことには慣れているようで、ルカはミクの小さなわがままに付き合っていく。さらに小分けした一粒のみかんをミクの口元に運んでくる。

「ん、おいし」

ルカの指に食いつかんとする勢いでみかんを頬張っている姿が微笑ましくて、ルカは微かな笑みをこぼしていた。
もう一口と口を開けるミクにみかんを一口放り込む。
こうして幸せに満ちたミクの笑顔を眺めるのはルカにとって至福の時だ。

「それじゃ今度はわたしの番だね」

ルカにまじまじと見つめられることに照れたのか、ルカの手からみかんを取って「あーん」と告げてくる。
ミクの指がルカの唇に触れるか触れないか微妙な距離を保っているのはわざとであろうか。
しかし、そんなやり取りも二人にとって大事な時間である。
ルカはミクの指先にキスをするようにみかんを啄んで、それからミクの手を取ると、その指先をミクの唇に押し付けていた。

「そんなことじゃ、いつまで経っても私の唇なんて奪えないわよ?」
「…むう」
「ひょっとしたら、私からミクにキスしてるかもしれないわね」
「やだ。わたしの方からキスするんだから」

喧嘩するほど仲がいいというのだろうか、睨み合ったまま二人はお互いに視線を外さない。
しばらくは続くと思われていたが、それも耐えられなくなったのかどちらともなく吹き出して終わりを告げる。

「分かったわ。けど、あんまり待てないわよ?」

もしかしたらルカはキスしてくれるのを楽しみにしているのだろうか。そう考えるとミクの胸の内は熱くなる。

「うん、努力する」

二人はからからと朗らかな笑顔で、次のみかんに手を伸ばしていた。
ミクの美味しそうにしている姿をじっくりと堪能して、ルカは慈愛の笑みを浮かべている。
ゼロにはまだ程遠いけれど、確実に縮まっていく距離に充実感を覚えて、二人はそっと寄り添っていた。









ついったさんで名前に@おひるね百合は好きですか?と付けているのでなんか書いてみようと思ってたらこんなのが出来てました

ほのぼのを目指していたのになんとなく違うような気がします。ほのぼのなんてあったの?というツッコミはなしで

小ネタ(ボーカロイド・巡音ルカの新婚生活・ネギトロ)

「おかえりなさい。お風呂にする?ご飯にする?それとも、わ・た…」

帰って玄関を開けるなり、エプロン姿でいきなりこんなことを言われてしまえば、大抵の人は驚いて玄関を閉めてしまうだろう。
巡音ルカもその一人で何かの間違いではないかと表札を見てみる。

『巡音ルカ・初音ミク』

確かに表札にはこう書かれており、自宅であるのは間違いないはずだ。
とりあえず、バタンと大きな音を立ててしまったので近所迷惑ではないかと周りを見やる。
幸い、どこのご家庭も騒がしい時間帯であるらしく、出てくる様子は見られない。ただ単に、面倒事に巻き込まれたくないという可能性もあるが。
改めてルカは表札を確認して大きく息を吸い込んだ。玄関のドアをしっかりと握り締め、ゆっくりと扉を開けていく。

「…ただいま」
「ルカちゃんひどい!せっかく新婚生活の定番で気分を和ませようと思ったのに!」

案の定、玄関を開ければ目の前の彼女―初音ミクは相当おかんむりのようで、頬を膨らませていた。

「帰ってきていきなりあんなこと言われたら誰だって驚くわよ」

しかし、そんなミクの怒りを前に特に気にした様子もなく、ルカはミクの前に立つと額に唇を落としていく。ついばむようなキスは怒りで真っ赤になっていた表情を洗い流し、みるみるうちに程よい紅色に染め上げていた。

「ルカちゃんはずるい。そんなことされたら怒るに怒れないじゃん」
「誉め言葉として受け取っておくわ」

流すようなさっぱりとした笑顔でルカはミクの頭を撫でて、玄関から上がっていく。ミクと視線を合わせると、ミクもまた満面の笑みを返してくれた。

「おかえりなさい!」
「改めてただいま」

お互いの笑顔が一日の疲れを吹き飛ばす特効薬となって、二人はリビングまで寄り添って歩き出す。

巡音ルカと初音ミク。二人は様々な出会いを経て、同棲という形に納まっていた。もちろん、万事上手くいっているわけではないが、良好な関係を築いている。些細なケンカも愛情を育む一種のスパイスだ。
リビングに入れば温かい潮の香りが漂ってくる。どうやらルカの帰りに合わせて夕食を作ってくれていたらしい。

「ミク、今日の夕食は?」
「簡単に魚介のスープパスタにポテトサラダ。ルカちゃん疲れてると思ったから」
「助かるわ」

お互い歌う仕事をしているので、仕事帰りのあっさりとした食事という気遣いはとても嬉しい。
二人は夕食を並べられたテーブルに着くと、お互いに向き合い、たわいもないおしゃべり、和やかな雰囲気でするりとパスタを喉に通していく。

「うん、美味しい」
「ありがと。今度はルカちゃんの作る甘口シーフードカレーが食べたいな」
「覚えておくわ。今度、一緒に買い物にでも行こうか」
「やった!ルカちゃんとデート!」

嬉しそうに手を合わせるミクが可愛くて、ルカは自然と頬を緩める。そんなルカの表情に気付いたのか、ミクはルカの表情を覗き込むようにじっと見つめてきた。

「うん、やっぱりルカちゃんの笑顔は可愛い」
「…なっ」

無自覚なのか、たまにミクはこちらをドキリとさせる一言を放ってくる。こういうことに幾度となくやられてきたルカは思わず赤らめた顔を誤魔化すように、残りのパスタを一気に平らげてしまった。

「あ、ルカちゃん照れてる」

そんな反応に気を良くしたらしく、ミクは実に楽しそうな笑みを浮かべて、最後の一口を喉に通す。

「…ごちそうさまでした」

どちらの意味でも通じるような台詞を残して、ミクは食器を片付けていく。なんとなく問い詰めたい複雑な気分ではあったが、諦めてしまったのかルカは言葉を飲み込んでミクを手伝おうと後を付いていた。





その後、ミクより先にお風呂で身体を休めて、今はリビングのソファーに身を沈めている。心地よい眠気がルカの意識にちまちまと襲いかかってきていた。

「ルカちゃん、隣いい?」

このまま眠気に身を任せてみようかと思っていると、湯上がりの寝巻き姿で、ミクが様子を伺うように問いかけてきた。ルカは身体をずらすとポンとソファーを叩いて座るように促していく。

「ええ、いらっしゃい」

返事をする間もなく、ミクは嬉しそうにルカの隣に飛び込んでくる。湯上がりで温まったミクの体温と同じシャンプーの香りが穏やかな安息をもたらしていた。

「ルカちゃんの身体、ふかふかだ」

そんな中、ルカの胸元に身を寄せて、ミクは甘えた声を上げる。心臓の音が聞こえるように耳を当ててくるものだから、鼓動の加速が止まらない。

「ルカちゃんの胸、どきどきしてる」
「…ミクのせいよ」

急激に込み上げてきた愛しさのあまり、思わず力一杯ミクを抱き締めて、ミクはルカの胸元に顔を沈めてしまう。ミクから伝わる温もりを感じて、ルカはミクの表情を見つめていく。
とろんとしたミクの上目遣いがルカの目に写し出された。

…やばい。

そのままミクの身体を抱き抱え、ルカの真正面に持ってくる。感情の高揚していく中、ミクの後ろから手を回して抱き締めた。

「その…、ミクの身体が湯冷めしないように」

我ながら下手な言い訳だとおもったが、ミクにとってそんなことはどうでもよかったらしい。
後ろから回された手を包み込んで、俯いている。耳まで真っ赤にしていることはすぐに分かった。

「…ううん、嬉しい」

ミクは包み込んだ手をそっと自分の胸に当てていく。ミクもまた張り裂けそうなくらい心臓がばくばくと鳴り響いていた。
考えるよりも先にミクの顔に手を伸ばし、顔が覗き込めるように上げていく。すでにルカの瞳にはミクの愛らしい姿しか写し出されてなかった。

「ミク、愛してる」

ルカはそう言うと唇を落としていく。…ミクの額ではなく、今度はミクの唇に。触れた瞬間、胸が締め付けられていた感覚が溶けてしまうように解き放たれていた。
お互いの柔らかい唇の感触と甘い吐息が混ざり合って、二人は感情を昂らせていく。

「わたしもルカちゃんのこと愛してる」

唇を離して、今度は熱い眼差しでお互い見つめ合う。時計の針はただ黙々と刻んでいて、過ぎ去ることを忘れてしまうくらい二人はまじまじと視線を交わしていた。
やがて、ミクはルカに倒れ込むように身体を預けて、そっと瞳を閉じていく。それを合図にルカもまた瞳を閉じてミクの唇に自分の唇を重ねていた。
先ほどとは違い、ルカはきゅっと優しく包み込むように抱き締める。愛しくて恋しくて、ミクの体温を確かめたくて、ミクの背中に自らの胸を当てて身体を触れ合わせていた。
ミクもまたルカの心音を感じようと身体を預ける。ルカの冷たくなった手を温めようと自らの手をそっと包み込んでいた。
二人だけの静かな時間は胸いっぱいに幸福感を満たしていく。どれほどの時間が過ぎたのだろうか。ようやく二人は唇を離すと、お互いに顔を合わせて笑い合っていた。

「ねえルカちゃん、今日はずっとこうしていようよ」
「あら、寝かさないつもり?」
「たまにはこういうのもいいんじゃないかな」
「…それもそうね」

静かな笑い声が部屋中に響いている。お互いひとつになりたい想いからか、触れ合ったままなかなか離れない。

「なんか離れるのが億劫ね」
「うん、もうちょっとこうしていたい」
「なんかこうやってミクが欲しい気分」
「そうだね。わたしもルカちゃんがもっともっと欲しい。だからきゅって抱き締めて」

始めは温もっていたミクの体温もルカに奪われて、今ではお互いの体温を共有している。
それを幸せであると実感しながら、二人は恋人の時間をゆったりと過ごしていた。









今日はいい夫婦の日ということで、新婚さんなネギトロを書いてみました

さすがにちょっとやり過ぎたかもしれないです。新婚さんみたいな雰囲気が出せてたらいいな

あと、その後の展開とかは心の眼でご覧になってください

小ネタ(ボーカロイド・ライブハウス 1005)

とある街中にあるライブハウス。今宵もライブハウスは熱気に包まれていた。

『ミクちゃーん!!』

男女入り交じる声援がステージ上に向けられる。ステージで歌っているのは初音ミク。現在じわじわと人気を集めていて、ただ今売り出し中である。
可愛らしいステージ衣装を身に纏い、彼女の歌うポップスがライブハウスを包んでいた。響き渡る声援の中、ミクがウインクを送れば会場は盛り上がり、熱気は増していく。

「みんな、ありがとっ!」

最高潮に達し、歌い終えたところで手を振りながら、ミクは歓声の中ステージから降りていた。熱気が身体を包み、汗が流れたままであったが興奮冷めやらぬ様子が伺える。
スタッフから労いの言葉を貰い、そのまま歩いていると、舞台裏の通行口で黒く露出の高いステージ衣装姿の女性とすれ違った。

「お疲れ」
「お疲れさまでしたー!」

軽く挨拶を交わし、舞台袖から彼女を見守っていく。
彼女の名前は巡音ルカ。凛とした歌声が持ち味で、このライブハウスでミクと一、二を争う程の人気がある。
ルカがステージに立つと、観客のざわめきが消え、波が引くように静寂が訪れた。待つこと数秒、スティックの乾いた音と共に圧倒的な音がライブハウスを支配する。
しばらくの前奏の後、ルカはマイクを掴んでいた。

『ルカさーん!!』
『素敵ー!』

盛大な黄色い声がルカの声が演奏に負けていないことを示している。力強いハスキーボイスが奏でるロックは観客を魅了し、止むことない歓声を生み出す。

「…Thank you」

曲の終わりにルカの高く透き通った声がライブハウス中に響く。一瞬の静寂の後に本日最大の歓声がライブハウスを包んでいた。



その日の楽屋裏、施設内のシャワーを軽く浴びて、ミクは鏡と向き合ってメイクを落としている。
念入りに肌のケアも忘れずに努めて、ようやく一息吐くことにした。ライブでは感じなかった疲れもじわじわと実感してきて、程よい眠気がミクを襲ってくる。
しかし、ここで眠るわけにもいかず、私服に着替えて時間を潰していた。ミクの私服はというと可愛らしいステージ衣装からは程遠く、シンプルで活動しやすい格好である。
年の頃に比べて若干冷めた印象もあってか、おそらく先ほどの観客もギャップの大きさに気付かないかもしれない。

「ミクちゃんお疲れさま」

そんなこんなで時間を潰しているうちに、おとなしめで控え目な格好の女性が姿を現した。

「ルカ姉、お疲れ」

紛れもなく巡音ルカその人であり、こちらもミク同様ステージで披露した姿とはかけ離れている。
凛とした雰囲気は消え、おっとりとしたお姉さんという感じと言えば伝わるだろうか。
ルカもまたステージ用のメイクではなく、すっきりと軽いメイクで落ち着いていた。

「まあ座ってよ」

どこか空いてる席に適当に促して、ミクは紙コップにペットボトルのお茶を注いでいく。
ルカにお茶を差し出して、ミクが席に着いたところで二人は軽く乾杯をした。

「ルカ姉、本日もお疲れ!」
「ミクちゃんもお疲れさま」

ルカの朗らかな笑顔が一種の清涼剤となって、ミクの身体から余分な力が抜けていく。こうしたライブの後のささやかな時間はミクにとって至福の時だ。
反省会とは名ばかりのおしゃべりがミクを癒す。
ミクとルカが初めて出逢った頃、ルカのほんわかとした様子にミクは疑いの目でルカを見ていた。あまりのユルい様子にライブが務まるのかと。
しかし、いざルカの歌声を聞けば評価は一転していた。ライブで一気に観客を魅了していく様子に、今や敬愛の念で接していくほどである。
…人を見た目で判断していたことに自分を殴りたくなったのはミクにとって内緒の話。

「今日のルカ姉もカッコよかったよ!」
「その、ミクちゃん。そんなに褒められると恥ずかしい…」

大絶賛しているミクであったが、それとは対照的にルカは真っ赤な顔をして俯いている。
なんでも派手な衣装で別人のようにならないと恥ずかしくて人前では歌えないらしい。
ミクが初めてそれを聞かされた時にルカが可愛くて身悶えしそうになってしまった。
そんな素の状態のルカの歌声を聞けるのは数えるほどしかいない。その数少ないうちの一人に含まれていることをミクは嬉しく思っていた。

「そんな恥ずかしがらなくてもいいのに」
「だってミクちゃんに褒められたのよ?」

まじまじとした表情で言ってくる辺り、本気で言っているんだろう。
なにこの可愛いひと。こんな時に漫画とかで鼻血を噴き出す描写を描きたくなるんだろうなと勝手に納得しつつ、ミクは落ち着くためにお茶を一口含む。
嬉しい。顔がにやけるのを自覚しながら、残りのお茶を一気に飲み干した。

「それに、それを言うならミクちゃんだって素敵な歌声だったじゃない」
「ありがと。ルカ姉にそう言われるのが一番嬉しいよ」
「〜〜〜〜〜っ!」

素直にお礼を言えば、さらに真っ赤な顔で声にならない叫び声をあげてますます萎縮してしまい、ステージ上で見せていた凛々しい姿は見る影もない。
しかし、そんな素のルカも可愛くて仕方ないとミクは頬を緩めて笑っていた。そして、ミクは一息吐くといつものようにルカを誘おうと提案する。

「そうだ。ルカ姉、これから打ち上げしようよ」
「いつものミック?」
「うん、お腹空いたし、ルカ姉と一緒にミックネギ食べたい」

はにかんだ笑顔で立ち上がり、思い付いたら即行動と言わんばかりにバッグを取ると、すぐに楽屋のドアに向かっていく。

「そうね。トロトロバーガー食べたいわね」
「あー、ルカ姉大好きだもんね」

ルカも乗り気なようで、すぐに自身のバッグを取るとミクに付いてきた。ルカが楽屋から出ようとするのを確かめて、ミクはニカッとルカに笑いかける。

「よっし!これからルカ姉と打ち上げデート!」

これからルカとの時間を過ごせると思うと、ミクは胸が弾む気持ちだ。

「…ミクちゃん」

そんな中、勢いよく出掛けていこうとすると、ルカが包み込むようにミクの手を握り締めてきた。
見れば、ルカのほのかな血色のよい頬が甘えさせてほしいと物語っているのに気付く。

「うん、いいよ。手を繋ご?」

ミクは満面の笑みで肯定すれば、そのままルカは黙って頷いて、指を絡めてきた。
そのまま恥ずかしそうにきゅっと握りしめ、ルカは安堵の表情を浮かべていく。
その時、ふとミクと目が合った。なにやら悪戯っぽい笑みでとても楽しそうだ。ルカもつられてかおを綻ばせてしまう。
これからどんなお話をしようと考えるだけでルカの期待は膨らんでいた。

「ルカ姉楽しそうだね」
「ミクちゃんこそ楽しそうよ?」

ミクも同じようで、お互い肩を震わせる。後は二人の時間を楽しむために、道中において絡めた手の温もりを確かめ合うようにそっと力を込めていた。









かわいいネギトロが書きたかったんです。そしたらあれやこれや詰め込んでました

反省はしてません

ちなみにミックとは全国展開しているファーストフードショップです

トロトロバーガー、ミックネギとドリンクのネギトロセット500円で販売しております

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