「隼人、今のは僕の聞き間違いか何か悪い冗談かい?」
「っ!!」
そういって顔ギリギリに投げつけられたのは、愛用のトンファーではなく、英和辞書。
(こ、こんなの、好きな女にやることじゃねぇ…!!)

当たりでもしたら、間違いなく顔が潰れる勢いで飛んできた辞書に、
一瞬、恭弥の怒りは嫉妬からくるものかも、と思ったがやはり違う。
これは、単なる怒りだ。おもちゃを取られた子供のような。やっぱり俺の事は好きでもなんでもなかったんだ…!!

「きょ、っ!!」

話し出そうとした獄寺の顎を、雲雀の片手が捕らえ、開いた口を閉められる。
「ぐっ、ぅ…!」
「あれだけ大人しく僕に抱かれておいて、沢田と付き合うだって?僕を馬鹿にしてるのかい?」

完全に目が据わってる。
閉められた顎が、とてつもなく痛い。

「あれだけ毎回好きだってうわ言のように言ってたのは、僕を沢田にでも重ねて見てたのか?」

俺が、恭弥に好きって言ってたのか。
確かに、俺は恭弥が好きなんだろうけど、まさかそんな不毛なことを口走っていたとは。無意識とは恐ろしい。
それに、お前を10代目と重ねて見るなんて、そんな恐れ多いことする訳ないだろう!

とりあえず何か反論しなくてはと思い、両手で恭弥の腕を掴むがびくともしない。
まさか、ここまで力の差があるとは思っていなかった。


「その度に『好きだ』と返した僕の言葉を、キミは沢田からの愛だと思って受けていたの?それとも馬鹿な男だとでも思ってせせら笑ってた?」

………なんだって?


「これだけ分かりやすい位置にキスマークまでつけたっていうのに、告白してきただって?
キミも許せないけど……まずは沢田だな。殺してくる。」


そう言って、掴んでいた手を思い切り振り子にしてソファーに横顔から叩きつけられるように投げ捨てられる。

「ってぇ…、ちょっと待て恭弥!!」

強い衝撃に頭がグラグラして焦点が合わないが、形振りなんて構っていられない。
このまま行かせてしまったら、10代目は血祭りに上げられるのは確定だし、俺との縁も切られてしまう。
それだけは、嫌だ!

「お前、俺のこと好きだったのか!?」
「……だったじゃなくて、今も好きだよ。」

馬鹿なこと聞くな、と言いたげに此方を振り返りもせず戸口に向かう恭弥に、何も考えず思い切り叫ぶ、
「じゃぁ、俺と付き合え!幼馴染じゃなくて、恋人になれ!」
「……………………ちょっと待って話が見えない。何、沢田はもういいの?」


怒りがどこかにすっ飛んだ様子の恭弥をもう一度定位置に戻し、
よく分からない、と言ったので10代目が殺されないよう、事細かに説明する。
詳細はこうだ。

10代目が「雲雀さんに、俺に告白されたから付き合うって宣言してみたら?」と提案してくださったのだ。もちろん、それは俺が恭弥の何人もいるセフレの中の一人だったら嫌だ。と言ったから、なんだけど。
恭弥が10代目と付き合うことに対して怒ったりすれば、俺のことを渡したくないっていう証拠だから、そのまま俺から告白すればいい、と。
もしも、恭弥がなんでもないように、俺のことを10代目に引き渡すのであれば、それは本当に俺のことをなんとも思ってなくて、単なるセフレとしか見てないのだから手を切れ、と。

「そういう訳だったんだ。」
「ちょっと待って、何人もいるセフレの中の一人って何の話。」

「え、山本はセフレが何人もいるから、恭弥もそうなんだろ?
っていうか、俺の事好きなら全員と手を切れよ。」

そう言った獄寺に、「馬鹿な子」と言って綺麗に笑った後、獄寺の横っ面を引っ叩いた。

「〜〜〜〜ってぇ!!」
「馬鹿じゃないの!隼人以外にいる訳ないだろ!っていうか僕をなんだと思ってるんだ!」

殴られた頬を自分の手で押さえるが、すごく熱い。絶対手形が残ってる。
っていうか恭弥がブチ切れている。

怖い。

「僕の好きっていう言葉は、買い言葉に売り言葉だとでも思ってたの!?」
「あ、いや……最中は気持ち良過ぎて、意識殆ど飛んじまってるから覚えてねぇんだよ……。」

そういって真っ赤になっていしまった獄寺に、雲雀の怒りも消沈する。

(この子、どうしてこの空気の中でそういうこと平気で言えるんだろう。)
「………」
「俺、恭弥に好きって言われたこと無いと思ってた。」

続いて、しゅんとしてしまった獄寺に、

「……分かった、よく覚えていられるように、今日からは注意して抱くようにするよ。」
「うん。」

折角、夜用の顔で囁いていったのに、
赤くなるどころか満開の笑顔で頷かれてしまっては、もうどうしようもない。


非常識な隣人

「で、もし僕が沢田のところに行けって言ったら、どうするつもりだったの?」
「そのときは責任とって、俺と付き合おうって10代目が!」
「へーぇ、」


「って聞いたんだけど。覚悟できてるよね?」
(ひぃぃぃぃ、獄寺君空気読んで!!)

 



END

 


あとがき、という名の懺悔


和姫さま、50000hitフリリク参加どうもありがとうございます。
そして、多大なる放置、どうも申し訳ございませんでした。
本当、すみません。もうどれだけ放置していたのかすら分からないほど置きっ放しにしていてごめんなさい。

当初頂いた
雲♀獄←ツナで、「ツナに告白されて、雲雀に別れを告げる獄寺」というリクを、
雲獄←ツナと間違えて一本書いてしまったが故に、全く思いつかず「なーにやってんだ私、」と(_ _ )

一応、幼馴染設定にしてみましたが、
ツナの告白というよりも「俺と付き合って。」は「俺の作戦に付き合って。(棚から牡丹餅待ち)」みたいな構図になりました。

結果、シリアスではなくギャグです。あくまでも。

本当、すみません。
何と言ったらいいか、謝る以外にないです!すみません!

もしもしもし、こちらの文字でよろしくれば
和姫さまに限りお持ち帰りください><
書き直し、別リク追加、なんでもお応えいたしますので、なんなりとお申し付けください!!

 

夕菜