※10年後で雲獄。同棲してると思って読んでください。
若干DVあり







冷たい手、
冷たい態度、
向けられる、冷たい瞳――――――、





こんな雲雀、俺は知らない。



 

+++++++
俺達は珍しく喧嘩した。

喧嘩の理由は嫉妬。


雲雀は髑髏に、俺は骸に嫉妬した。



普段は10代目や山本にしか嫉妬しない雲雀が、珍しく髑髏に嫉妬した。

たまたま髑髏と任務が一緒になった帰り、
難航すると思われていた商談が、意外にも上手く進み、
お互い浮かれていたのも手伝い、晩飯を食いに行った。

普段からお互いの趣味が合うので、
話も弾み、珍しく酔うほど飲んだ。



俺より先に潰れてしまった髑髏を家まで運び、雲雀と共に住む部屋まで帰ってきたのが3時過ぎ。
髑髏と飲んで帰る、と連絡しておいたので流石に寝ているだろうと思ったが、部屋の電気がついていた。



俺が帰ってくるのを待っていたのか、と思い玄関を駆け上がる。


「恭弥っ!」


きっとそこにいるのであろうリビングのドアを思い切り開くと、そこには…


「…む、くろ…?」


何故か、雲雀ではなく骸がいた。



「おや、隼人君おかえりなさい。」

「あ、た…ただいま…、」


何故、犬猿の仲である骸が此処にいるのか。とか、何してるんだ。とか言いたいことは沢山あるのに、何一つとして言葉が出てこない。


「きょ、……ひばり、は…?」


声を絞り出し、此処に居るはずである雲雀の存在を聞く。


「そこにいますよ。」


指されたほうを見ると確かに毛布に包まっている塊が1つ転がっている。


「雲雀恭弥、雲雀恭弥、」


塊を揺すって、寝ているのであろう雲雀を起こす。

「………な、に…」


「僕はそろそろ帰ります。」


「…あぁ、悪かったね、」


「いいえ、構いませんよ。先に誘ったのは僕ですし。」


「……ねぇ……今日のこと、隼人には、……黙っておいて。」


「クフフ、……はいはい、分かっていますよ。」


俺が此処にいることに気が付いていないのか、
内容は理解できないが、何か親密そうに話す二人に酔っていた気持ちが急に覚めていくのを感じる。
(黙ってて、って…なに、)


「では、帰りますね雲雀恭弥。」


「………あぁ。」


「クフフ、…………隼人君、おやすみなさい。」



最後の最後で俺に声を掛けた骸。
その台詞に、寝ていた雲雀が飛び起きる。


「なっ、……隼人!? 」


「クフフフ、では。」


ワザと俺に声を掛け、この場の空気を乱したのに、
そのまま俺の横を颯爽と通り過ぎる骸に声を掛けることすらできなかった。

だって、俺の前にいる、布団から出てきた雲雀の上半身には、何の衣類も身に着けていなかったのだから。







「ひ、ひば……、」

何故服を着ていない。
何故骸がここにいる。


聞かなくてはいけないのに、先程の会話がその答えを示しているようで、喉まで出掛かっている言葉は怖くて発することができない。



「はやと、」

気まずそうに視線を逸らされ、心が押しつぶされそうになる。


「雲雀…、何してたんだ……」


「別に。何もしてない。……君こそ、クローム髑髏とこんな遅くまでなにしてたのさ。」


「っ、俺だって何もしてない!飲んで帰るって連絡しただろ?!」


「はっ、飲んで帰る…?こんな時間までどこで飲んでたって言うの。もっとマシな嘘つけよ。」


「、」


この10年間で、幾分か気が長くなったつもりだったが、
今の投げ捨てるような言い方に、流石の俺も…キレた。



「ふ、ざけんなてめぇ…!!
言わせておけば勝手なことばっかりいいやがって!!」




「っ俺はお前と違って誰彼かまわず寝るような奴じゃねぇ!一生骸とよろしくヤってろ!」



―――ズガンッ!

「……何だって?」


低く唸るような声と、凶悪な破壊音に目をやると、自分の顔ギリギリに投げられたトンファーが壁に突き刺さっている。


殺気は剥き出し。射抜く瞳は恐怖。
(……うわ、マジギレか…。やべぇ、殺されっかも。)


だが、こんなところで怖じ気づくなんてありえない。


「……骸とヤりてーなら俺は出てくっつったんだよ。」


返す言葉は反撃。
絶対に、譲れない。



「なに、僕を捨ててあの女のところに行くってこと、」


「っそんなのお前に関係な―――っ!」



急に訪れた後頭部への痛み。
殴られた、そう気付く頃にはもう、俺の意識とは反対に全く動かない手足。


(コイツ……わざと麻痺させやがった…、)


すべてが飛んでしまいそうな痛みに、
意地とプライドだけで、意識だけは持ちこたえる。


「この僕から逃げるなんて……絶対赦さないよ。」


「ぐっ、あ……!!」

言葉とともに腹に入れられる一発。


そのまま捨てられるようベッドに放り投げられる体。


「ひ、ば…」

「喋るな。」

ガンッ

上から覆い被さられ、打ちつけられる拳。



「……僕から逃げるくらいなら、このまま殺してしまおうか、」



ぼんやりとした意識の中、見えた雲雀の表情を映さない冷たい顔。


振り上げられる腕から見えたのは、寂しそうな瞳。

(なんで、お前が、そんな泣きそうな目してんだ、)




(嗚呼、俺ホントに死ぬかも……)




end