※獄寺視点
アスファルトからの照り返しと、太陽から直接くる日差しとで、目の前の地面がゆらゆら見える。
久々の私服デートだが、せっかくキメてきたのに、こんな暑さじゃ意味がない。
(あちぃ〜〜〜、)
この暑さでイライラするのは分かる。すげー分かる。
だけど、そのイライラを雲雀にぶつける馬鹿がこの並盛りに存在するとは思ってなかった。
どこぞの不良かは知らないが、雲雀を見て古傷でも疼いたのかなんなのか。
あろうことか、食いさしのコンビニのサラダパスタを投げつけてきやがった。
それを横目で見つつ、雲雀なら避けるであろう姿が容易に想像できたので、たいして声を掛けることなく、容器から落ちるパスタを見ていた。
「『え?』」
目の前にはサラダパスタをぶっかけられた雲雀。
「っな、なにやってんだよお前…!!」
そう思ったのはきっと俺だけじゃない。
投げつけた不良でさえも唖然としている。
「……はやと、ちょっと待ってて。」
そう言い、パスタを被ったまま不良を引きずり路地裏へ消えていく。
まぁどうせ咬み殺して戻ってくるんだろう。
にしても、あんな幼稚な攻撃をかわさないなんて。
この暑さで雲雀の注意力が散漫になってたなんて思えないし、なんで――――、
(あ、)
ふと下を見ると、路地裏を見つめたまま動かない小さい少女。
(小さすぎて、気付かなかった。)
俺の膝あたりまでしかない身長。
もしかして、
(この子がいたから、避けなかったのか?)
多分そうだろう。
でも、頭からパスタ被ることないのに。
馬鹿だ、きっと雲雀は暑さのせいで頭が茹だっていたに違いない。
そうじゃなきゃトンファーで弾き返してる。
そんな簡単なことも思い付かなかったなんて、
そう思い、路地裏から帰ってきたパスタの変わりに返り血を浴びた雲雀を見た瞬間、「カッコいい」とか、その優しさに「惚れ直した」とか思ってしまった俺は、馬鹿を通り越して大バカだ。