あ、焦った…
山本が夜這いをかけにきたのかと思って、ついつい殴る体制に入ってしまっていた自分を落ち着かせる。



山本を殴るぶんには、何の問題もないがクロームはダメだ。

女だし、骸がやばい。何されるか分かったもんじゃない。


…とにかく、クロームに怪我を負わせるなんてことはあってはならない。
(第一、怪我させたくねぇしな。)


とりあえず気を紛らわす為にもう一度報告書に向かう。







+++++


―――ふと、視線をあげると、目の前には無人のソファー。


(あいつ、帰っちまったのか…?)




あれからだいぶ時間は経っているが、何も言わずに帰るなんて珍しい。
…まぁ、何か喋ること自体珍しいんだけど。


俺が仕事をしている間、ソファーに座ってジッとまっているアイツの姿を思い出し、口元がゆるんでいく。





よし、もうひと頑張り。
そう思いパソコンに向かうと、後ろから首に腕が回る。


「…クローム?」

こいつまだ後ろにいたのか…と呆れる反面、
後ろから抱きつかれている状況に戸惑う。


もしかして甘えているのでは…と思い、掛けていた眼鏡を外し、抱き寄せるようにクロームの頭に手を回す。



「クロ、」
ぱくっ

(ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!)


声に、声に出して叫ばなかった自分を褒めてやりたい。

あろうことか…あろうことかコイツは俺の耳を何の前振りもなく銜えやがった!!!


「クロ、クロー、ム………な、な、な、何して…」


「耳、弱いって聞いたから……」


聞いたから何なんだ!!
そこが一番重要だろ!!何故言葉を濁す!!




(っ耳元で喋るな…い、息が…!!!)



「雲の人…言ってた。………そうなの?」

(ひばりてめぇぇえ!!!)


あいつっ、クロームにバラしやがったのか…!!つか何で知ってんだそんなこと…!!!



「ちょ、っくろ……やめっ!!」


本当に何考えてんだ…!!!
耳を銜えるだけでなく、舌まで使ってくるなんて…!!!


「っ、ふぅっ……はっ、クローム……んっ、」


俺の制止などに全く耳を傾けず、
片耳ずつ余すことなく舐めていく。


「……隼人、左の方が気持ちいいんだ。」


(っ断定………!!!!)

クロームに弱点を見つけられたことにショックを受けつつも、
それ以上に、自分が攻められている状況が耐えられない。



「………隼人の、勃ってきた。」


いつのまにか俺の膝の上に乗っていたクロームが、自分の膝を使い、俺の自身を軽く扱く。



好きな女に、ココまで積極的に攻められれば、不能じゃないんだし、
(勃つに決まってんだろーが。)



もう、ここまできてしまっては退けない。自分も若い男だ。
それなりに欲求だってある。




「くろ、」
「…私も濡れてきた。」
「………。」


攻めよう、と思ったところで、まさかのカミングアウト。
何を言い出すんだこの女は。



無頓着というかなんというか…、


こういう無防備なところが危なっかしい。そんなんだからミルフィオーレの奴に目ぇつけられんだ。


「…挿れるね。」



本当、しっかりしてくれねぇと、俺も気が気じゃない。


―――――って、は?
今、なんて言った。



ちらり、クロームに目を戻すと、
既に下着は遙か彼方に飛ばされている。


ま、まさか…!!!
「ちょ、クローム待―――っ!!」


「あっ、んんっ、」


冗談だろ。慣らしてもないのに自分から挿れるなんて。



「クロームっ、」
「はっ、はやと……んんっ、」

己の口で、口を塞がれ、自ら動き出すクロームに、理性諸共持っていかれそうになる。


でも、
「クロームっ、一回抜け…んっ、」


「ふっ、あぁ…んっ、ん」

「くろっ、…はっ、マジで、抜いてくれ、っ頼む、からっ…!!!」


「はぁっ、なっなんで…ぁっ」


「っごむ、つけねーとヤバいって…!!!」


そう言っているのに、クロームは動くのを止める気配が全くない。



ゴムを付けずにヤるなんて、マズい。
既に限界が近い俺にはクロームを止める力なんてない。

情けない話だが、快楽に体が完全に負けている。

残っている僅かな理性が「止めろ」と信号を出しているだけだ。



「クロームっ、本当に…!!!!」


「ふっぁ、」


「ベッドに、っあ…るからっ…!!…クロームっ!!!」









「……ベット、」


ピタリと止まったクロームに、
もう出したいという下半身を押さえつけ、残る理性を総動員させ、
ひきつっているであろう笑顔でクロームを諭す。


「ほら、このままだとまずいじゃねーか。な?ベッド行こうぜ?」


「…………、」(コクン)



考え込むようにしていたが、とりあえず小さく頷いてくれたクロームに内心ほっとする。


「んっ、」

自力で抜き、ペタペタと素足で立ち上がる。

その姿が幼さを若干残していて、抱き締めたい衝動にかられる…が、

(うわ、……)


自分の自身を見てしまい、あまりの卑猥さに目を瞑りたくなった。


クロームはワンピースを着ているため、立ってしまえば全て隠れるので問題ないが、
俺の自身は、クロームの体液でベタベタ光り、かなりグロテスクな光景だ。



「……早く、」

そんな俺のモノに、なんの興味も示さず、ぐいぐいと俺を引っ張りベッドのある奥の部屋へと進んでいく。




――――ガチャ、

「クローム、」

ここは始めの雰囲気が大事だと、
先程の自分が攻められる空気を流させまいと、できる限りの甘さを含めた声色で呼ぶ。


スルリと、引っ張られていた手を離し、ペタペタとベッドに向かって歩いていく。


何をするのか…と見守っていると、もそもそ布団に潜り込む。



その場に立ち尽くしていた俺に、
ぽすぽすと隣を叩かれ、同じように布団に入る。


「隼人――――、」

名前を呼び、すり寄ってくるクローム。
次こそは流されまいと、意気込む。―――――が、


「おやすみ。……スー、」


「………………は?」


まさかの挨拶に、差し出しかけていた手を止め、顔を覗き込むが、


(ね、…寝ている………!!!!)

生殺しとは、このことだろう。

眠ってしまったクロームに手を出すわけにもいかず、煮えたぎる欲望に涙を流した――――。






まるで任務完了と言うように、スヤスヤ眠るクロームの隣で、

覚めた眠気と、持て余す精力をどうしようかと悩み、



獄寺隼人の睡眠不足は、さらに続く。





end