「―――っおい!野球馬鹿!何すんだ!」

「ほら、いいから獄寺。あ〜ん、」

「ざけんなてめぇ!やるわけねぇだろ、果てろ!」

「そうだよ山本、獄寺君嫌がってるじゃない。」


「これは獄寺特有の照れ隠しなのな、ほらあ〜ん…」


「やらねぇっつってんだろ!」

「…ほら、」

山本が獄寺の頭を左手で後ろから押さえ、右手は先ほどから食べさせたいのだろう、玉子焼きが箸に摘まれている。
このままでは強制的にやらされてしまう!…というところで、

「ぐッ…!」

山本の体が地に沈んだ。

「!…っおい、山本?」

いくら嫌がっていたとはいえ、いきなり目の前の人物が地に伏してしまったので、さすがの獄寺も声をかける。


「獄寺君、そんな馬鹿…じゃなかった山本ほっといてご飯食べよ。」

「あ、…はい。」

犯人は沢田綱吉。獄寺の目にも止まらぬ速さで山本の首を強打して気絶させたのだ。
軽くやっての気絶ではない。あくまでも、思い切りやっての気絶だ。


「…あの〜、10代目…」

「ん?どうしたの?」

「いや、この体制は…」

山本が気絶したことにより、屋上に二人きりとなって大きく出たのか、沢田は獄寺を抱え込むように膝に抱き、食事を取っている。


獄寺に断らせない為か、いきなりハイパー化し、
「…隼人、嫌か?」

「っいえ!そんなことは!!」


やはり綱のハイパー化に慣れていないせいか、恥ずかしそうに頬を染めながら綱の膝に納まっている。


「おや…楽しそうなことをしていますね、ボンゴレ。」

「っ!骸!!」

どこから登ってきたのか、フェンスを乗り越えながら骸がやってきた。顔も容姿もせっかく良いのに…フェンスの乗り越え方を、もう少し研究したほうがいい。かなり間抜けな格好だ。



「おひさしぶりですね隼人君。
それと、ボンゴレ。」

顔は笑顔だが手にはしっかりと槍が持たれており、殺気がだだ漏れ状態だ。


「まったく、ボンゴレ。貴方だけは油断できませんよ。山本武を伸したうえで、隼人くんを膝に抱きかかえるなんて。」

「黙っていろ骸。俺は今、隼人と二人だけの世界を満喫しているんだ。」

「そうやって膝に座らせてですか?とても不愉快です。是非変わって頂きたい。
あ、隼人君今日の下着は黒なのですね。…いえ、先ほどボンゴレの膝の上に乗っていたときに見えましてね。
折角ですので、このネコ耳もつけていただけますか?」

「死ね。できるだけ苦しい死に方で、一刻も早く。」


「クフフ、あいかわらずですね隼人くん。まぁそんな貴方が愛しいのですが、」

「黙れ骸、」

ボコ!――――ガン!!


そこまで話すと、骸と綱の戦いが始まった。
あまり現状を把握できていない獄寺だが、10代目の手助けをしなければ!と思い、ボムを手にしたところで後ろから声がかかる。



「…ちょっと君たち何してるの。」

「っ!恭弥!!」

獄寺がそう呼ぶと、綱と骸はピタッと動きを止めて獄寺を見た。


「何、君たち。僕の学校で暴れてタダで済むと思ってるの?」

「雲雀恭弥…今はそんな話どうでもいいのです。」
「なんで雲雀さんのこと、獄寺君は下の名前で呼んでるの?」

「え…10代目、何でと言われますと…」

下を向き、顔を真っ赤にして視線を漂わせている獄寺は、はっきりいってかなり可愛い。


「あ…えっと、その…」
「付き合ってるからだよ。」


「「は?」」


「何?分からないの?僕たちが恋人同士だって言ってるんだよ。」


「え…何それ本当に?獄寺君、」
「ちょっと隼人君、間違いだと言ってください。」

「あの…
えっと…その、俺…
…あの、恭弥と付き合って…」


「「っ!」」


「そういう訳だから、隼人は連れて行くよ。
おいで隼人。」



そう言うと、獄寺の一言で地に伏している綱と骸を心配そうにチラチラと様子を伺っている獄寺を引きずるかのように、手を引いて、屋上を去って行った。







*************


応接室につくと、早々にソファーに投げ飛ばされる。

「ってぇ…」

「ねぇ君、本当にもうちょっと自覚して。」

「な…何を…」
雲雀の声が明らかに怒気を含んでいて、さすがの獄寺も少しどもってしまう。


「他の、男に触らせないで。って何回言えば分かってくれるの?
あとスカート短すぎ、そんなに足出さないで。下着見られたらどうするの。
ボタンもちゃんと留めて。僕以外に…気を許さないで。」


「…努力する。」


「ん…。」

それだけ言うと、獄寺をそっと抱きしめた。

抱きしめられた腕が、あまりにも優しくて、獄寺も、そろそろと腕を背中に回す。


「今日は何もしないけど、次また僕に嫉妬させたら何するか分からないから。」

「ん…気をつける。」




獄寺が了解したのを確認して、そっと口付けた。




End