俺のクラスには学校1のアイドルとマドンナがいる。


アイドルは俺の彼女の笹川京子。

マドンナは…俺をすごい慕ってくれていて、京子ちゃんとも仲がいい獄寺隼人。


京子ちゃんは可愛いくて、おっとりしているけど
黒川花がいつも京子ちゃんを見張っているので、変な虫が付くことはあまりない。あったとしても俺が影でシメるけど。

 

それに比べて獄寺くんは、銀髪に碧の目という日本人離れしている顔立ちで、俺から見ても綺麗だと思う。
そして天然無自覚という性格のせいで、かなりの男が彼女に言い寄っている。

当の本人は全く気付いてないが。

 

 

 

獄寺くんは何か悩みがあるらしく、授業は上の空でずっと外を眺めている。


光が反射し、キラキラ光る髪、組まれた足の細さ、頬についた手と先程からついているため息が、彼女の美しさを惜しげもなく晒している。


クラスにいる生徒だけではなく、教師までもが見惚れるほど美しい。


さっきから黒板の音も鉛筆の音もしないのはそのせいだろう。

 

 

彼女が授業を聞かないのはいつものことだが、寝ずにそしてサボらずに教室にいることは珍しい。

 

まぁその理由が今の彼女の悩みなわけだが―――――

 

 

その悩みは、どうやら彼女の恋人である雲雀さんと喧嘩したらしい。

 

しかも内容が、
雲雀さんにキスした女に見せつけるために、思いっきり濃いキスをしていたら止まらなくなり、応接室でことに及んでる最中を風紀委員数名に目撃され、あまりの恥ずかしさに獄寺くんがその場で雲雀さんに思いっきりビンタした後にドス黒いオーラを雲雀さんが放ったので逃げ出した。
というものだ。

 

 

 

まぁ元の原因はなんであれ、獄寺くんがビンタしたことで雲雀さんが怒っているなら、早く謝ればいいのに。

 

というか早く仲直りしないと、クラスの雰囲気がヤバい。

さっきまで獄寺くんを眺めてるだけだった男達がだんだん雄の目つきに変わってきた。

 


面倒ごとになる前に、早く仲直りさせよう。

 

 

 

面倒だが、俺に懐いてくれる彼女の為に一肌脱ぎますか!





++++++++





―――――――授業が終わったので、他の男達に先を越されてしまう前に獄寺くんの元へ行く。

 

 

「獄寺くん」


「あ…10代目、」


「もう授業終わったよ。今日ずっと、ぼーっとしてるけど、まだ雲雀さんと仲直りできてないの?」


「…はい。俺、雲雀に本気で怒られたことなんて今まで一度もなかったんで…あの黒いオーラが俺に向けられてたんだって思い出すたび、なんか…悲しくて…。」


「…そっか。でも獄寺くんは雲雀さんと仲直りしたいんでしょ?」


「…はい」


「雲雀さんモテるからさ、早く仲直りしないと、他の女に取られちゃうかもよ?」


「っ!そんなの嫌です!」


「うん、だったら早く仲直りしないとね。明日も明後日もこのままなんて嫌でしょ?だったら今行かないと。」


「…10代目」

 


よし、これで獄寺くんは謝りに行ってくれるな。
正直、雲雀さんが他の女のところになんて行く訳ないんだけど、これくらい言わないと行かないだろうしね。

 

 


――――ガラッ!


「ねぇ、ちょっと隼人いる?」


声のした扉の方を向くと、やはりそこには雲雀さんが立っていた。


俺と獄寺くんを見つけると、一緒顔をしかめた後迷わずこちらに歩いてくる。


雲雀さんを見た獄寺くんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ顔を背けてしまった。


「―――ちょっと、隼人。」

顔を背けた事が気に入らなかったのか、雲雀さんは獄寺君の腕を掴んで引き、立たせる。

 

「……」


「隼人。」

立たされてもなお自分を見ようとしない獄寺君にいらっときたのか、先ほどよりも強めに呼ぶ。


「―――っ、」

 

(え…―――。)

獄寺くんより高い位置で彼女を見下ろしている雲雀さんには見えていないのだろうが、
俯いていても、座っていて彼女を見上げている俺には見えてしまった。

 

(な、泣いて…、)


これは流石にマズいと感じ、雲雀さんを制止しようと声を掛けようとしたところ、

 

「…隼人?」


様子がおかしいことに気付いたのか、顔をのぞき込みながら名前を呼ぶ。

 

「え…な、んで泣いて…、」

 

それでも答えず、静かに涙を流し続ける獄寺くんを見て、雲雀さんは横からそっと抱きしめた。

 

 


「…隼人、ごめんね。泣かないで。俺が悪かったから。」


(えぇ―――!?あの雲雀さんが謝ったー!!)


…じゃなくて、
獄寺くんを普段では考えられないほど優しく優しく撫でながら、なだめるように話し掛ける。

 

「―――はやと…」


「ぅっく…ひっばり、ごめんなさっ、」


「何謝ってるの。別に隼人は何も悪くないでしょ。」


「違っ、おれ…雲雀のこと殴っちゃったもん、」


「あぁ、あれくらいどうってことないよ。」

 

「だって、ひばり怒ってたじゃんっ」


「え、あぁ。違うよ、隼人に怒ってたんじゃなくて、いきなり入ってきた風紀委員に怒ってたの。」

 

「…そうなの?」


「うん。昨日あの後電話もメールもしたのに返ってこなかったから…僕は隼人が怒ってるんだと思ってたよ。」

 

「…怒ってない。」

 

「うん。良かった。」

 

「っ俺のこと、嫌いになって他の女のとこ行くかと思って…!」


「…そんな訳ないでしょ。隼人以外の女のところになんて行くはずない。
ほら、もういい加減泣き止んで。」


そこまで言うと獄寺くんは雲雀さんに抱きつくように顔をうずめた。
そんな獄寺くんの頭を愛おしそうに撫でる雲雀さん。

 

良かった良かった。

 

まぁ1つ言うのであれば、ここが教室でもうとっくに放課が終わって、先生がいるっていうことを早く思い出してほしいな―…なんて、そんなこと言ったら咬み殺されそうだから言えないけどね。

 


とにかく、2人が仲直りしてよかった!
今回は俺のおかげ…かな?

 

 

「…ちょっと沢田綱吉。
君でしょ、僕が他の女のとこ行くかもとか隼人に言ったの。
後で咬み殺すから。」

 


あ、れ…まじで?
ちょっと!獄寺君助け――って泣き疲れて寝てる―――!!!

 

 


俺ってそんな役回りばっかじゃん…

 


end