「そう言えば」

イルが思い出したように言う。

「さっき窓が変になっていなかった? お店の中がおかしな感じで見えたの。だから心配になっちゃって」

「それ、あたしがまどをもち上げたからです」

フランが挙手すると、イルはソーマと顔を見合わせた。

「……どういうこと?」

「こちら実はタペストリーになってるんよ」

フィルがややぎこちないセールストークを始めるのを、フランは見上げる。視界の端に、手持無沙汰そうなヘリオスが映る。

「おひまですか、ヘリオスさん?」

小声で問えば、

「馬鹿言え。あいつのつたない店員ぶりを眺めるのに忙しい」

鼻で笑われた。