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幻想、…?

リンゼイ・ケンプ版の真夏の夜の夢を借りてきて見たわけなのである。

真夏の夜の夢のあらすじは知っていたが、見たことがなかったため借りたのだが…私の記憶が確かなら、シェークスピアの喜劇のひとつじゃあなかったろうか…
なんだあの耽美。
販売が四半世紀前なのでネタバレするが、妖精がグロい。パックが気持ち悪い(失礼)。
しかも、チェンジリング…耽美系には衝撃だろうけど、主役食っちゃって主要人物も食っちゃって、力入れたの丸わかりな何アレ、その他はオマケかよ。
愛の逃避行一行(舞台版なのであのメイクが濃い濃すぎるのは目を瞑るとして)の恋のイタズラ同性愛、しかも結果四人だし、最後丸く収まるし(どーやって!?)。脱がしただけか?
劇中劇のロミジュリがものすっごくくだらなくて笑えたけど、いきなり流れが変わるからびっくり。狂乱の一夜が明けたとたん結婚式だから。
拙いCGらは時代だからとしても、ラストチェンジリングどこいったんだよ、と思う。パッケージもチェンジリング一面に推してるけど妖精王に連れ去られたあとは出てこない。テストリーのプロモーションなのか?それなら分かるけど…


やはり喜劇は喜劇で良かったなあ。しかも字幕スーパー、誤訳っていうか誤字あるし。

喜劇は喜劇でいいのに

失敗した。これならバレエ借りれば良かったなあ。字幕スーパー間違い多かったし。

迷いすぎて、埒があかない。とりあえず今日はねて、明日考えよう。

【創作】裏庭、三

三、夜半


目が覚めた。僕を起こした風は開け放した窓から忍び込んだものだった。膝を抱え、本格的に寝入る体制に無意識になっていたことに気づき、掛け布の下でそっと衣服を整えた。
視線。ベッドの老人がじっと僕を見ている。
僕はどきりとはやる息を抑え、ベッドに歩み寄る。彼の手を取り、そっと握った。
脂気の少ない、枯れ枝に似た手だ。
骨にしっかりと吸い付き、皮下脂肪の存在を感じさせない皮、それに住み着くしみ、太さはあるのにとても軽い骨、赤に青に浮いた血管がところどころ破けて広がる鬱血、そして痣。

彼の死期はとても近いのかもしれない。
漠然とそう感じた。

「…る、」

かさついた薄い唇が何かを吐き出した。
そしてもう一度、

「かおる、こ」

と。
僕は言い付けの通り、ただ微笑み、彼の手を握り続けた。

「…ああ、あぁ」

言葉とも吐息とも判別つかない声を上げ彼は力無く僕を抱きしめる。枯れ枝の指が僕の髪を梳き、背をなぜる。
彼が僕をだれと混同しているのか、恐らく、かおるこ、という人なのだろうが、知らないその人に僕は微かに、…嫉妬をした。

僕はこのように慈しまれ抱き締められたことなど、記憶にない。
享楽的な父親と彼に逆らわない内向的な母親、見たことのない家を出た兄、養子に出された弟という家庭で育ち、時に僕は父親の娯楽費を生み出すために幾度となく売られたことがある。
その買い手たちも僕を商品としか扱わず、このように、優しく抱き締めたことなど、ない。

僕は老人が再び寝入るまでされるがままになっていた。かさついた指先がどこをなぞろうと、体臭にどこか死を感じようとも。
そして眠ったあとは彼の手を握り続け、時折、こもりうたを歌いながら夜明けを待った。

動けない、よ。

動けないよ。動けないよ。
こんな状況じゃ。こんな状態じゃ。
私は心配性だから、ね、知ってるでしょう?
動けないの。

怖くて怖くて心配で。
足が竦むの。

渦中にいるときは強いんだ。
私はね、私の中の、外面を繕う私は強いんだ。
けどさ。
本当は弱い。簡単に崩れちゃいそうで。

あなたは私の本当を知っているから、私はさらけ出してしまうから。
怖いの。眠れなくて、ああ、どうしても吐き出しそう。吐き出してしまう。
隠しておきたいのに。強くありたいのに。
動けない。動けないんだ。


…やくたたず。

【創作】裏庭、二

二、薄水色の客


案内された場所は、一目で金持ちだと分かるお屋敷だった。スモークの張られた車に揺られ、どれくらい走ったのだろうか。薄暗かった車内から外に出たとたんの西日に目を覆いつつ、視界に入りきらない屋敷を確認した。
このような仕事なのだから、客は裕福であろうことは予想していたものの、目の当たりにすれば驚いてしまう。
僕を迎えに出た案内役は、広い玄関ホールを足早に抜け奥へ奥へと先導する。高価だろう調度品が目の端を通ったが、じっくり見る余裕などないようだった。

待ち合わせ場所の定番になっているからくり大時計の下に立ち、巻き方がわからないストールを首にかけた。マダムに教わってくるべきだったのかもしれない。視線を投げかける通行人が僕を奇異に思ってないか、伏し目がちになってしまう。
どれだけも待たされただろうか。黒革靴が止まり、僕の手を取った。彼が案内役だった。

客、つまり僕の買い手ある主は、中庭に面した部屋の、キングサイズベッドに横たわり目を閉じていた。
案内役の彼はベッドの脇に長椅子を寄せ、クッションを幾つか敷き僕に座るよう促した。僕は黙って従いしかし何をすべきかを視線で問うてみる。

「あなたは、主のそばにいてくださればいいのです。主が目を覚ましたらそっと手を握って差し上げてください。
ただし、一言も話さず。何か尋ねられてもただ微笑むだけでよいのです」

それだけを言い残し彼は部屋を出て行った。僕は仕方なく長椅子のクッションに体をうずめた。慣れない女靴も脱いでしまう。
客はベッドの上で身じろぎもしない。規則正しく胸が上下するから眠っているのだろう。顔に刻まれた皺は深く、しかし柔らかい。豊かな白髪にいくつか金と銀が混じっているように見えるのは月明かりのせいかもしれない。
長椅子の背には薄水色の掛け布があった。少しだけ肌寒さを感じた僕は、首のストールをぐるぐると巻きつけ、掛け布を羽織る。

客である買い手が指定した装いで一晩過ごす、というこの仕事はそういう行為があるものだと想像していたのだが。
横たわる老人と言ってよい客を見ているうちに、僕は緩やかなまどろみに落ちていった。