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ファンタスマゴリア


休日出勤の代休で、月曜のお休みをもらい、お買い物に行った。

欲しかった薄手のパーカーを買って、
イヤリングを30%オフでみつけて、
紅茶屋さんでお茶をしている。



そんなまったり。



あとは、駅前まで行って服を探すか、早く帰って部屋を片すか、だ。

【創作】裏庭、二十八

二十八、侵蝕



朱鷺色の客の指名が続いた。あの夜、薄水色の死に揺れ、朱鷺色の沈黙に揺られた夜から、二日とおかずに指名が入る。今までの客たちのなかで連続して指名してきたのは海松色の客ぐらいだったたから、拭えない違和感を抱えながらも「裏庭」の仕事をした。
海松色の客であれば解る。歳が近く、「客」というよりは夜遊びの相手のようであったからだ。ただ音楽を聴きにハコを巡るのではなく、フォーマルに近い装いをし、食事と夜を共にする日々は、自分がいかに「堕ちて」いるのかを思い知らされる。報酬がはずむにつれ、僕は少しずつだが確実に、蝕まれているような気がしていた。
だが、いったい誰に?

悪友は言う。
「手の届く範囲に助けがあるのに、どうして求めない」
僕は答える。
「泥沼が底なしかもしれないのに、どうして手を取れる?」
悪友が言う。
「巻き込まれもいいと本人がいってるんだ」
僕は答える。
「巻き込みたくないと、本人がいっているんだよ」
僕たちの会話は平行線をたどり、悪友は舌打ちをする。このバイトを紹介したのは彼なのに、最近では頻りに足を洗わせようとする。「裏庭」と彼がどのような関係にあるのかわからないまま僕は仕事を続けていた。
マダムは相変わらず仕事前に珈琲を淹れてくれ、衣装を揃えてくれる。彼女のブティックが繁盛しているのかは聞いたことがない。店舗名は【GARDEN】、しかしこの仕事は「裏庭」と呼ばれているらしい。海松色の客に聞いたその話の真偽すら僕は確かめていない。
からくり時計の下には待ち合わせの人々が集う。ストールを巻く人は少なかったけれども、僕だけというわけでもなかった。その中に「裏庭」の働き手が何人いるのだろうか。複数の僕のような人間が働いているはずだったが、自分以外のそれらしい人物を見分けられたことはない。朱鷺色のストールはとても目立つのだけれど、誰か他の人がそれを巻いているところを見かけたことはなかった。
朱鷺色のストールは回を重ねる毎に朱みを増していくように思う。縦糸に鮮やかな朱が混じるのに気付いたからだ。
ストールの意味もマダムに聞いたことはない。悪友である彼にも。僕は疑問を胸のなかでかみ殺す。だけれども疑問は消えず屍をいつまでもさらしている。


ゆっくりと、蝕まれていく。
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