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更新/ロールモニカ

■ロールモニカ戯作■
□群光オペラ、5
□モヌケノカラ、13
□モヌケノカラ、14(了)


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モヌケノカラ、終了しました。
書きたいことも余計なことも出せたと思います。(直したい箇所は多々ありますが)

マがル


久しぶりにハンドルを握った。
母の車はアクセルもブレーキもコード伸びきってるんじゃないかと思うくらい軽い。
初めてハイヒールのまま運転した。腿の前側が痛くなった。


往く道は曲がり角が多く、ぐるぐるとハンドルを切る。長い直線でスピードを上げた先、見えてくるカーブにブレーキを踏む。
(本当はこのまま、スピードを上げて突っ込んでしまいたい、と思う。カーブを曲がらずそのまま、空を飛べるかもしれないから。)
細かく曲がる道なりに様々な車とすれ違う。
(この中の何人が同じく空を飛びたいと考えているだろうか。ずっとスピードを出してブレーキを踏まず飛び出す、白昼夢。)
アクセルを踏む。
(加速して)
アクセルを踏む。
(加速して)

曲がり角を待つ。
(空の入口を待つ。)

ブレーキを踏む。
(空を諦める。)
ハンドルを切る。
(名残惜しく、空を諦める。)
そしてまた道なりに走る。


考えごとをしながらハンドルを握った。着いた先、雪かきスコップの隙間から生える草が面白い。
狭くとも空に向かい伸びる。空を目指す。
私は彼らを見逃した。

【天気予報】有給休暇前線北上中

【先日発生いたしました有給休暇前線ですが、太平洋上に横たわる憂鬱低気圧に圧され、北上せず留まっている模様です】


有給休暇前線が来ない、ということは予定していた旅行をキャンセルしなければなりません、ということです。

「ムリムリムリムリ夏から休みなく働いてんのよ年末まで休みなしなんて無理しかもキャンセル料発生してんじゃない!!」

「なんで海の向こうの低気圧の影響受けてんのよバカ!」

「ネガティブ野郎出てこい!憂鬱を伝染させんじゃない!!」

天気予報を見ながらわいきゃいしていたらニュース速報入りました。

【只今○○地方で怒号高気圧が発生しました。××地域で発生中の小さいながらも活発なご機嫌高気圧との影響で、停滞していた前線を押し上げる模様です。】

「よおっしゃこいこい!」

「前線上れ、ってより拡大しちゃえ!」

全員一致団結です。○○地方ってこの辺りですから、怒号高気圧の発生場所ってここでしょうか?

【有給休暇前線は活発化し北上する見込みです。憂鬱低気圧との境は浮き沈みの激しい気分が広がりますのでご注意下さい。】

「休暇届下さーい」

「何人体制なら動きます? 工程表とシフト表のコピー下さーい」

あらあら他部署の方たちが有給申請来ました。ニュースを見たんですね。

「休暇届でーす。太枠内に記入して判貰って下さいね。私たちの有休に影響無ければ上に回しますー」

「工程表とシフト表のコピーでーす。私たちの休みに影響ないように組んで下さいねー。被るようなら書き換えちゃいますよー」

迅速な対応です。さすが盆休みをとれず働かされた甲斐がありますね。有給休暇前線に合わせて休みをいただけるという約束でしたから、当然でしょう。
とりあえず、旅行はキャンセルせずにすみそうです。


【本日、有給休暇前線が活発化し速度をあげながら北上しています。管理職のみなさんは数多く出されると予想される有休申請にご注意下さい】

終了

銀河客船の夜、改訂版終了。
後半打ち込みに時間がかかったのと最後がやっぱり気に入らないのでまた書き直せたらなあ、と。前ヴァージョンがジョン・ヴァンニ勝利編なら今ヴァージョンはブルカロニ勝利編、次ヴァージョン作るならカンパネル勝利編かなぁ、と思う。

【創作】銀河客船の夜

17、ケヌタウラゥス祭


ジョン・ヴァンニはカンパネルを波止場に立った。気の早い烏瓜が一つ流れ着いているのを拾い上げ、刻まれた名を確かめる。

 カンパネル、

 何だい、

読み上げた名に答えが返る。この問答を何処かでしたような気がしたがジョン・ヴァンニには解らない。

 何でもない。

ジョン・ヴァンニは烏瓜を海に浮かべた。烏瓜はゆっくりと遠ざかり、沖へ流れて行く。

 カンパネル、今夜はケヌタウラゥス祭だね。

 呼びかけ、ジョン・ヴァンニは自らの他に誰もいないことに気付いた。

 ああそうだった。
 そもそも僕は最初から間違えているのだ。

ジョン・ヴァンニは立ち竦んだ。



開祭は夕暮れだというのに村の空気は落ち着きがなく、子どもたちは烏瓜の灯りを点さずに腰に下げ、角という角で星巡りの歌を口づさんでいた。
時計台の前で少年は友人を待っていた。ケヌタウラゥス祭で連れとなる4、5人の親しいものたちである。
行き交う人の中に見知った顔を見た。活版所から出てきたところだろうか、指先が白く光っているように見えた。ここの活版所で使うインクは特殊な薬品で落とす為に働く者はみな白く光る腕を持っている。
ジョン・ヴァンニだと彼は思った。級友の一人だが話をしたことはない。彼は病弱な母を養う為活版所で働いているらしい。彼も祭りには参加するのだろうか、その姿を追っていると別の少年が現れた。カンパネルだ。村一番の資産家の息子でありジョン・ヴァンニと唯一親しくする者だった。
ああ、二人は連れだって祭りへ行くのだ。そう思ったとき待っていた友人たちが現れた。

 遅れてごめん。何が変わったことはあった、

 いいや。でもジョン・ヴァンニとカンパネルを見たよ。あの二人は一緒に祭りへ行くようだよ。

 何を言っているんだ、あの二人は川に落ちたじゃないか。

 え、

 ほら、きみの腰の烏瓜も二人を追悼すりためのものだろう?

そうだった、と烏瓜に刻まれた名を確かめる。
ジョン・ヴァンニ。カンパネル。

 あの二人川へ落ちたままだから祭りに参加しに戻ってきたのかもしれないね。

少年たちはくすくす笑いながら互いの烏瓜に灯りを点した。日が落ちるには早いが落ち始めては遅いのだ。夕暮れは早くすぐに暗くなる。

放物線を描きながら飛び出したものがある。それは空に向かい放たれた銀の矢で星を目掛けぐんぐんと上って行く。

 始まった。

 早いな。

 行こう。

友人たちは互いを確かめるように背を押し合い広場へ向かう。口々に星巡りの歌を口づさみながら少年たちは去って行く。




ジョン・ヴァンニは駆けて行く矢を黙って見ていたがそれがぐんぐん速度を上げ空を見ていた自分に射かかっても何もかもを間違えていたことに黙していた。
ジョン・ヴァンニの身体は脳天から胴を貫かれ港に射留められくずおちることも振り向くこともできない。

汽笛を上げ沈み行く壮大なる客船の、丸窓から少年の姿を見た。あれは此処に来るはずのカンパネルだろうか、それとも一緒に逝くはずだったカンパネルだろうか、確めようにもジョン・ヴァンニは動くこともできない。
壮大なる客船はゆっくり沈み離れ、ジョン・ヴァンニは唯一自由に動く両の腕を肩の高さに水平に掲げただ見送るだけである。それは灯台守のようにも墓標のようにも見えた。
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