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梅雨

湿度があがり髪がまとまらなくなってしまう。
防湿効果のあるヘアスプレーとかないだろうか、と真剣に考える。



エコecoポイントのエコはエコロジーecologyじゃなくてエコノミーeconomyだと認めちゃえばいいのに。
環境じゃなく経済を考えます。
そうしたら家電以外にも使える。
エコはエコなくして語れず。
いっそのことエゴegoポイントにして開き直ってばらまいちゃえばいいんだ。

【幻想童話】灰かぶり、1

目の前で赤く焼けた鉄の靴を履き踊り狂う継母を見、娘は思った。

これが自分の望む結末だったのだろうか?

爪先のない上の継姉とかかとのない下の継姉たちは明らかに血の気を失い、声も出せず母の踊りを見ている。男性の手を借りず踏むステップは何と優雅で何と滑稽なことか。
灰かぶり、とのあざなをもつ娘は傍らに立つ夫となった青年を仰ぎ見た。彼はこの国の国王の息子であり、次期後継者だ。そしてその後ろに控えるのが、彼の政治的片腕であり、私生活の伴侶でもある公爵である。
煌びやかなドレスを纏った娘は自らの足を思う。幼き頃亡き父により纏足された小さな足、立つことがやっとだったあの時に比べれば大きくなったが周りの女性とはあまりにも違う。
女中として暮らした日々がなければ、歩くことも走ることも危うかっただろう。
娘の手はあかぎれ、爪はぼろぼろだ。だが縫い物はこの国の仕立て屋にも負けない自負がある。宮廷料理のつくりかたは知らないが、家庭料理をこしらえることができる。
足にびったりと張り付いた毛皮の靴は脱ぐことができない。継姉たちの血液で張り付いてしまったのだ。夫はそんなことには興味がない。手のあかぎれも足に張り付く靴も、彼にとってはどうでもよい。髪色が明るい蜂蜜色で太陽に光り、瞳は深い湖の緑、体つきが細く女のふくらみがなければよい。公爵と自分に似た子ができればよいのだ。

娘は踊る継母を見た。

赤く焼けた靴からけぶる継母の肉は、ただれていることだろう。その様を想像し娘はこみ上げてくる笑いをこらえることができなかった。
娘につられ、大広間に集った貴族たちが笑い出す。継母の踊りをはやしたて、楽団が一際賑やかな曲目を奏でた。

泣きたい嘘

耳の奥でセミが鳴いていた。


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揺れていく。


いつかは死んでしまうものだから、という諦めと理解はたしかにあった。
顔も知らない同級生を追悼する気にはなれず、トランプを続けた昼休みは無音だった。
今死にますか、と訊かれたら、いいえ、と答える。
大きな揺れを見た。折れ崩れた橋も焼けていく家々も恐ろしく口を空けた谷も、いつかは、自分たちを襲うものだった。
揺れてもわたしは残った。大きな揺れだったがわたしがいた場所は大きくなかった。
怖いけれど。
おそらく、わたしたちの町が壊れたどころで街は不変だろう。食料品は値上がるかもしれないし、変わらないかもしれない。
いつか起こることに目を瞑りわたしたちは生きている。
けれどそれすら忘れそうになる。
忘れて気づかずに死んでしまえるのならばそれをよしとするのかもしれない、ぐらぐらと揺れる頭はわたしを殴りつける。
何度も、何度も。

わたしは弱く、弱く、息を吐いた。
明日死にますか、と訊かれたら、どう答えたらいいのだろう。そんな不安に怯えることに意味はあるのだろうか。

泣きたい嘘

目を閉じても光が見えた。


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分からない。


祖父の家には手つかずのところが多い。いつからか、というと祖母が亡くなってからだ。
正確には、祖母が入院で家を空けてから。
祖父は必要なところしか手を入れず、水回りだとか庭木の手入れだとか以外は祖母がいた暮らしそのままだった。
自らの施設入所とともに家具は移動したが、母をはじめとするこどもたちがものを片付ける以外、祖母の気配は残っていた。
だからだろう。祖父が亡くなり暮らすものをなくした家を彼女が渡したくないと思うのは。
人の住まない家は荒れる。風の通らない家は廃れる。
いとこが旦那とともに住みたいとの申し出は、悪くないはなしであるはずだが、彼女のなかでは折り合いのつかないことであるらしい。
台所に残る祖母の痕を仏間に眠る祖父の匂いを、消したくないのだろう。
彼女の執着はわたしにはない類のものだ。
あと何年かで失う家への、執着が未だ湧かず、傷のついた柱さえ隠してしまう自分の、嘘。

あんたは悲しくないのね、という言葉に泣けなかった。あの家がもし無くなってもわたしには響かないのだろうか。
この家が壊されるとき、わたしは静かにまた嘘をつくのだろうか。

曇り空を浮遊する

サランラップに包んだおにぎりをひとつ左手に持って、外へ出た。
右のポケットにはたったいま閉めてきた玄関の鍵が入っている。
頭の上には曇り空。
スニーカーをぱこぱこ鳴らしながら歩く。
一時間も歩けば、左のおにぎりはまちねこにくれてやることになる。
手ぶらで着の身着のまま、気の向くままに歩く。
曇り空に見えるはずのない飛行機雲が横切った。
大きく手を振る。振りかえす。
あの雲が消えたら、ポケットの鍵を捨ててしまおう。
脱いだスニーカーを一揃い、両手に持ってただ歩く。
いつしか雲を踏む。
消えていく自分の影を見た。
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