「へぇ、うちの野球部のエースは女を寝込み襲うような変態だったんだね」

「あ…、いや、これは…!」

 

別に寝込み襲うつもりなんかなかったが、そんなこと言い訳にしか聞こえないだろう

とりあえず今は、獄寺を連れて早くこの場を去らなければ…

 


「わ、悪い!すぐ獄寺起こすから!」

「起こさなくていいよ」

「え?」

 

雲雀の言葉に、俺は首を傾げた

 

「寝不足だった上に、無理させたからね。もう少し寝かせてあげて」

「え……無理って、」

 

ふと獄寺に目を向けると、乱れたブラウスの隙間から赤い跡を見つけ、雲雀の言う無理が何を指しているのかを瞬時に理解した

 


「っ……雲雀!お前、獄寺に何をしたんだよ!?」

「何って……君に怒鳴られる筋合いはないよ。ちゃんと同意の上での行為だからね」

「なっ!!!」

 


同意?じゃあ獄寺は、自分の意思で雲雀に抱かれてたっていうのか?


雲雀と獄寺は………恋人同士だとでもいうのか?

 

 

「理解出来たみたいだね?なら、僕のおもちゃにもう触らないでよね」

「っ……僕の、おもちゃ?なんだよその言い方!!!獄寺はお前のおもちゃじゃ…!!!」

「ん、うー……なんだよ雲雀、うるせぇな。誰のせいで寝不足だと…………って、山本!?」

 

俺の怒鳴り声に、流石に目を覚ました獄寺は、俺を見るなり驚愕に目を丸くした

 


「な、なななんでお前が此処に!?」

「っ……獄寺、帰ろう。ツナが心配してるぜ」

「え、10代目が…?」

 

未だに状況を理解出来ずにいる獄寺の腕を掴むと、俺はそのまま応接室を飛び出した

 

「邪魔したな」

 

そう雲雀に言い残せば、雲雀は無表情のまま黙って俺が獄寺を連れていくのを眺めていた

その余裕そうな雲雀の態度に、俺の苛立ちは頂点に達した

 

 

 

 

 

 

「おいっ、山本!?いい加減腕離せ!!」

「え?あ、悪ぃ…」

「なんなんだよ、たくっ」

 

俺が腕を離すと、獄寺は不機嫌そうに…そして、どこか気まずそうに顔を歪める

 


「今、見たこと……10代目には言うんじゃねぇぞ」

「……本当に、獄寺と雲雀はそういう関係なのか?」

「それは…!っ……お前には関係ねぇだろ!?」

 

獄寺が、頬を真っ赤に染めながら言う


こんな獄寺の表情……見たことがない。
俺の知らない獄寺が居る。


俺が欲しかった、獄寺が…もう、雲雀のものに…――

 

 


「雲雀は、やめとけよ」

「だからっ!お前には関係なっ…」

「関係ねぇけど!だけど雲雀だけはダメだ!!!
アイツ、お前のことおもちゃって言ったんだぞ!?獄寺は雲雀にからかわれてるだけなんだ!!!
遊ばれてるだけなんだよ!!!」

「っ…!?」

 

俺の言葉に、獄寺の瞳が哀しく揺れた

 

 

「んなこと……テメーに言われなくたってわかってんだよ!?」

「っ……獄寺!?」

 


獄寺は、そのまま教室の方へと走り去っていった

 

わかってるって……わかってるならどうして、今も雲雀の側にいるんだよ


自ら傷つきに行くようなもんだろ!?

 


雲雀なんかより、俺が……俺の方が獄寺を大切に出来るのに…

 

 


「絶対、認めねぇ…」

 

 

雲雀には、譲らない


獄寺は俺が守る