「隼人君!フルーツ持って来ました!」


ニコニコと笑いながら、両手いっぱいにフルーツを持って、
愛しの隼人君のお部屋に華麗に侵入☆


「おう、さんきゅー!……じゃねぇよ骸!窓から入るなって何回言やぁ分かるんだ!」

「クフフ、そんなこと言って…玄関から来ても開けてくれないじゃないですか。」
全く隼人君は照れ屋さんですねぇ。
僕が来て嬉しいからって、早速ツンモードで攻めてくるなんて…
変態ドSの僕には、その冷たくされる感じが堪らないのですよ。

分かってやっているのなら、とんだ小悪魔ですがね。



「……俺、黒耀ランドに合鍵送らなかったか?」

「……え?」


「………見てないのかよ。まぁいいや。」

ちょっ、まっ…!全然よくない!全然よくないですよ!!
誰か他の奴にその鍵盗まれていたらどうするんですか!

し・か・も!何ですかその、急なデレは!

「そういうこと言う時はあらかじめ言って下さい!録音しますから!」


「は?意味分かんねーよ。…まぁ、とりあえず座れよ。晩飯の時間だ。」


「あっ、いやお邪魔でしたら帰りますよ。」

「ん?いや、お前の分もある。なんか骸が来そうな気がしたから多めに作ってた。」


うわぁぁぁぁぁぁ何ですかこの隼人君の可愛さ!
犯罪ですよ犯罪!!こんな可愛い行動するなんて、今僕の両手にフルーツさえなければ押し倒してるところですよ!


「っはや、「あ、骸。フルーツこっち寄越せよ、冷やしとく。」


「あ、はい……どうぞ。」


「さんきゅ、」

なんですか…またツンですか!
この僕を振り回すなんて、やってくれますねぇ。


「ほら、骸食べようぜ!」


隼人君の愛妻料理を頂こうと、テーブルの前に座ったはいいが、

(……………異臭、)

よく見ると、机の上の食べ物であろう物体は真っ黒だ。
米だけが異様に白い。


「は、はやとくん…、」

「あ?…あ〜大丈夫大丈夫。ちょっと焦げたし、味と見た目はアレだけど、体調は悪くならないハズだから。」

「……はい、頂きます。」

黒い。黒すぎる。
何をこんなに一生懸命焼いたんですか。
もはや原型すら分からない。

「米は自信作。」

でしょうね。その一言は、口に含んだ異物と共に飲み込んだ。


ガリガリガリガリ、


「どう?どう骸っ!?」

目をキラキラさせながら聞いてくる隼人君。

(……飲み込めません、)

噛んでも噛んでもガリガリガリガリ、
全く細かくなる気がしない。

ので、無理矢理飲み込んだ。


「……斬新な味でした。」
喉越しも食べた感があって凄かったです。


「そう?良かった。俺あんまり自分で作ったことないし、姉貴の料理ばっか食ってるから、味とかよく分かんないんだよな!」


嗚呼、そうだったんですか。
では貴方にはこの味の凄さを一生分からずに過ごすんでしょうね。


「ほら、骸こっちも食べてみろよ!」

「え、………はい頂きます。」

隼人君がまさかの「あ〜ん」の体勢……!!
でも、何かの目がこっちを見ています…、普通に怖い。
真っ黒こげな何かから、目だけが出ているこの感じ…。


「ほら、骸っ!」

「………」

もう仕方ありません。
味わうように、隼人君の箸に口付け、
決して味わうことの無いよう、そのまま飲み込む。


「…どう?」

「…………おいしいです。」


「そっか!」


ニコニコしながら机に並べられている物をつつく隼人君に眩暈を覚える。
僕といえば、さきほどの目の正体はどうやら魚だったようで、喉に骨が突き刺さっている。

(一応噛めば良かった。)


しかたがないので、隼人君の自信作の米で骨を流し込もうと口に含む。


「っ!」
(………硬ッッ!!!!)



炊けてない。炊けてないです。米、炊けてないです!!!























++++++++++++++







あれから幾度となく聞かれる、隼人君からの「美味しい?」の一言に、全て「おいしい」で返し続けた僕を褒めて欲しい。


米すら上手く炊けていない、全てが黒こげ状態の物を全て飲み込み、
今は隼人君とのくつろぎタイムです。

僕の膝の間で、僕にもたれ掛かりながらテレビを見る隼人君。
今日のテレビは、『世界不思議100連発!』とかいうモノで、時折「おー!!」とか「すげー!」とか声をあげながら、僕の腕の中でジタバタ動く。


……正直、動かれると辛い。
胃の中の物が動いて出てきそうです。

柄にも無く、冷や汗が背を伝う。



「あ、そうだ骸!さっき骸が持ってきたフルーツ食べようぜ!」

「っそうしましょう!僕剥いてきます!」

口直しには調度いい!なんて口が裂けても言えませんが、とにかく先程食べた物の上から何かを食べて上書き保存しないと、僕死にそうです。


「隼人君、桃でいいですか?」


「桃!?」


言った途端、嬉しそうに駆け寄ってくる彼。


「骸だからパイナップル持ってきたんだと思ったぜ!」

「クフフ、そう思って桃にしました。」

桃を剥き始めた僕を興味深そうに覗き込む隼人君。

「包丁、使わなくても桃なら剥けますから、隼人君にも簡単に出来ますよ。」


「そっかー。あっ、骸、垂れてる。」

「え、」

グイっと、僕の手を持ち上げて、腕に垂れている果汁を舐めとる。

「なっ、隼人君…!!?」

「んぁ?」

「な、何してるんですか…!!」

「は?舐めた。」

舐めたって…!!!!

「貴方という人は…、」

「えっちょ、骸…!!!」







(何すんだ骸!も、桃は!?)
(桃は後にしましょうね。先に…貴方を頂きます。)



End