起きたら全てが終わっていますように。
楽観でも絶望でもない。
褪せる色を破りたいだけ。
びりびりと。その瞬間、きっと草は歌う。
「嗚呼。咲きたい」
彼らが眠る頃、わたしたちは終わる。
だから、なにも思わない。ただ、ただ、終わる。不可思議な摂理を隅におしやり、抱きしめて受け入れよう。
紫も赤も。
青の琴線に詞をのせて。
嫌気がさすので、カチャカチャしてたらマトリックスやってた。
珈琲のみながら、湯船につかり外は嵐のような洗濯機の音。
「風呂場に鋭利なものは置かないこと」
死に際のセリフが、キスして、だなんて。
現実世界ならその遺言めいたキスをされても、明日には感触は残らない。
だから刹那、宇宙、光。そんな言葉がその残らない感触を救う。
「珈琲が赤い。これは血か?それとも聖女の涙か?」
「晴れた空を、見たかったのに」
「きみは流れてくるんだろう?」
「…」
「安心して。分解されたあとは養分になるんだ」
「………」
「踏んだところで鳴り響かない」
「叫びたいのに、口がない」
「もう一度」
引き寄せられる。吸い込まれる。
そして消える。消え失せる。一ミリも残さず。
だから、わたしは紫がすきだ。飲み込まれたいから。
なくなったあとにわたしは赤色を残したい。決して黒に染まらず、鮮やかな赤でありたい。
だから赤くなるように物を摂取する。それはいま食べたラーメンにラー油を入れたように。赤色。
たしかにイチゴジュースを見つけたときに妙に興奮したのは、赤色だったから。
気づけば赤いパンツ。上にグレーのセーターなんか羽織るから、中途半端なんだよ。
振り切れ、極地へ。
さようなら紫。明けたら赤におはようさん。
傘越しに見る水滴は透明だった。
映像とはいえ、人が手首を切る映像は初めてみたかもしれない。
だからといって何かが変わることはない。
淡々と呼吸するだけ。からだのどこかで叫び声が聞こえたような気がしたけれど。
昨夜から食欲が消え去り、きっと台風一過で全部元通りになるという楽観視。湯船で半身浴をして生を謳歌する錯覚。
覇気はなく吐き気はする。世界にか、自分にかはわからない。
瞼が開くとき、狂気の箱が私を見つめる。正面からにらめつける紫に打ち克てるほど、強くはないんだ。気づいたときには、染め上げられているだろう。
途切れ途切れの血に愛を込めて。