胸につかえてた、ストッパーがかちりと外れた。あんなに頑丈だったのに粉々です。

外してくれたのはまわりの素敵な大人たち。誰か一人がこじ開けるものとばかり思っていた。みんなだったのね。

人に詩を書くことがふえて、そのたびにぼくの宇宙は違うことばを選ばせてくれる。そうして初めて「あ、人間は一人一人違うんだ」と気がつくのね。なんとまあ不器用なんでしょうね。


でも、書いて気がつく、をしないと生きてることを感じていられなくなっちゃったし、自分じゃない異物で作られた枷がなくなったんですもの。書いてもいいじゃない。

それができるのは、抱擁して許してくれる大人がたくさんいて、いつだって夜空が明るいからで、本当に嬉しいです。

そんでね光と色に出会いました。
生きててよかったよねえ。
どっちもぼくには不可欠だったのね。
知らなかったなあ。


ぼくはわがままだから、いまは形にしたいの。そのためには、鎖を断ち切っていつ暴走するかはわからない列車をきちんと停車させてくれる駅がないといけなくて。駅を出たら違う別の駅、また別の駅になるはずなのに、いつだって終着駅の表示はあなたになるから不思議でたまりません。



これは愛だの恋だのでなくて、禍々しい暗闇でも足りない。ことばはいつも心に足りないよ。生半可の正反対で、鞘から露になった研ぎ澄ました刀を前にして、いつもだったら逃げていたのに。それが処世術とやらなのに。


たとえ斬られてもいい。
その覚悟をしたときに降ってくる星屑のぜんぶが初めてで。光が飛び込んでくるの。
あのね、ブラウン管越しにマリンスノーをみたときみたいなね。深海だね。そんな輝きなの。突き動かす衝動で飛び続けたいの。



ああそうか、戦場で出会ってしまった武士たちはこういう景色をみていたんだね。だから辞世の句が美しくなるんだね。綺麗だね。愛しいね。びっくりするくらいに寂しいね。





目に文字が書いてありました。
思いだそうとすると消えてしまいます。
近づくと消えてしまいます。


最後の手段で持ってきた、双眼鏡で見ようとしたら文字は透明になってしまいました。
ぐすんぐすぐすぐすん。


涙をだしつくしたら、一枚の紙切れがポトリ。目の裏側から、真っ赤な血のインクで刷られてでてきました。


「ねえ、ちゃんとみてよ」
「光の屈折に乗りなさい」


一瞬、自分の目にも文字を書こうと思いました。
それが正解だと思ったのです。
そう教わってきたのです。


でも、たしかに、止まれ!と叫んで足を揃えてぴたりと止まりました。


ふと、光の先を思い出したのです。
信じることにまた臆病になる前に。
あの角を曲がった、斜め前にある景色がぼんやりと見えたのです。


掴んだら火傷しちゃう。
それでもいいのです。


どんなに焼けても灰にならないから。


星はそういう生き物でしょう?


文字に辿り着くまで、生きてやるんだ。