水黽が中脚を振り下ろし、双剣使いが掻い潜る。その間にも前肢はテロルを捕らえんと動き回る。脚を一本失ったところで、姿勢制御に問題は無いようだった。
「ふざけんなよ! 最初から前金しか払わないつもりで俺達を雇ったな!?」
「道理で金払いがいいと思った!」
傭兵達が次々と攻撃を加える。
弓使いが水黽の複眼を射ようとするが、口吻から吐かれた溶解液に溶かされて到達前に落ちてしまう。
「あの溶解液、厄介ね……」
前肢を避けて走りながらテロルが言う。
「水黽の捕食方法って知ってる? 前肢で獲物を押さえつけてから口吻を突き刺して液体流し込んで溶かして食べるの」
ケトルの脳裏に先程の光景が甦った。
「聞きたくなかった! 聞きたくなかった!!」
「でも噴射して防御に使いはしないのよ。そこは元人間の創意工夫ってとこかしら」
テロルは何かを考えているようだった。