炎はすぐに勢いを無くし、ゆっくりと消えて行く。
少年は身体のあちこちを確認し、

「よっし、動くヨー! 一瞬ゾワッとしただけ!」

まずい、とケトルは思った。
しかし即座にテロルの援護――炎の壁を作り、自分達三人と少年を分断。各個撃破を狙う形に。
先程まで集団を相手に優勢だったテロルがそうする意図をケトルは察する。遺跡はテロル達をほぼ無力化する勢いで魔法を吸い上げている。
自分がしっかりしないと、とも思う。
だが当の本人は余裕な態度を崩さず、元気に女を煽っている。

「あんたは余計な力が入ってないかしら? 抜いた方が良いわよ、神経が切れるわ」

「黙れ魔女め! 私にお前の言葉は通用しないぞ!」

「さっきから何か勘違いしてるみたいだけど、魔女の力が言葉だけだと思ってるの? 違うわ。その仕草のひとつひとつ、呼吸ひとつひとつに至ってもそうなのよ。つまり相対してる時点であんたはあたしの術中よ!」

「黙れぇぇぇ!!」

女が刺突の構えを取る。