時がとまったような静寂のなかで、ふいに背後からパチリという鋭い音がした。
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ふたご姫 二次創作ブログ 月赤・宝青で夢みてます
時がとまったような静寂のなかで、ふいに背後からパチリという鋭い音がした。彼はビクリと震え、振り返ったが、それはどうやら暖炉の中でマキがはぜた音だったらしい。
「そうだ、パン生地が……!」
暖炉のそばの作業台の上に、ひとり残されたようにして置いてあるパン生地が目に入る。彼はかけよると生地にふれた。
生地は先ほどと変わらないあたたかさを保っていて、青年はホッと安堵の息をつく。生地の息遣いを確かめるように彼は手のひらでそれを包むと、もう脇目もふらずにふたたび生地をねり続けていった。
青年は最後に生地をきれいにまるめると、大きなボールにいれてフキンをかぶせる。
「さあ、あたたかいところに置いて、発酵させよう」
青年は作業場に備えつけてある発酵機にそれをいれると、きちんとドアをしめた。一仕事を終えると、彼は思い出したように窓のところへ戻り、もう一度、静かになったカミナリ山を熱心に眺める。
「明日、ブラパンマンたちに調べてもらおう」
そういって、彼は空を見上げた。
いつのまにか雨はあがり、空の高い所では雨雲がちぎれ飛ぶように流されていく。その後ろからふたたび姿を現した月は、冴え冴えと澄みわたり、静かにパン工場とカミナリ山の両方を照らしだしていくのだった。