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王子様とならず者 12(月赤)

目の前に現れたのは、白を基調としたドレスに煌びやかな宝石を散りばめた、小柄な少女。

その髪は金色に輝き、細かいウェーブはたっぷりとした量がある。

瞳は凛として、意志が強そうだ。

「……あんまり遅いから、おひさまの国のプリンセス達は欠席なのかと思いましたわ」

少し意地悪そうな目で彼女は笑う。

「違うわ。ちょっと出発に手間取っただけよ」

レインが言葉を返す。

けれど相手は笑いを消すことなく、こう言った。

「まあ、手間取ったって。あなた達のことだから、どうせちゃんと用意もしないで、ギリギリになってから、お世話係りに急かされてどうにかこうにかやってきたんでしょう」

「そ、それは…」

レインが言葉に詰まった。
ファインは困って苦笑いをする。

そんなふたごのプリンセス達に、肩をすくめたアルテッサ。そして、なんと言っていいかわからなくてただ二人を眺めるプリンス・シェイド。ミルキーはなんだかわからず、ただ楽しそうにふわふわと浮いている。

しかし、一番ダメージを受けているのは、ファイン、レインの後ろにいるお付きのもの達だ。

「キャメロット様…」
「っく。あまりに本当のことなので、なにも申しあげられない…だからあれほど、遊ぶ前に準備をなさいと言っていたのに…!」

「エヘヘヘヘ〜」
「アハハハハ〜」

もはや笑ってごまかすしかないレインとファインなのだった。
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王子様とならず者 11 (月赤)

誘われるように、ファイン、レイン、そしてキャメロット、ルル達はガーデンの中に入って行った、

すると、すぐに見知った顔に出くわす。

「まあ、やっときましたの」

高くツンと澄ました声。

「アルテッサ」

レインがその名を呼んだ。

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王子様とならず者 10 (月赤)

「……すごい」

レインが思わず声に出す。

ファインも目を見張った。

ガラスの建物はマジックミラーになっていたのだろう、外からはわからなかったが、中は立派な植物園になっており、室内楽の美し調べが聴こえる。

そして、ガーデンパーティーとして並べられたテーブルのまわりには楽しげに言葉を交わす、プリンス、プリンセス達の姿があった。

*****
ちまちま進む。
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王子様とならず者 9 (月赤)

夜空を感じさせる王の間から出て、光がさんさんと窓からとりこまれる廊下を進むと、ファインの心は軽やかになってきた。

おひさまの光はいつでも気持ちを羽のように軽くしてくれる。

歩きながら隣をゆくレインをチラと見ると、その瞳が輝いている。
頬も心なしが赤みがさしている感じだ。

熱心に注がれている視線の先はもちろん、前を歩くプリンス・シェイドの後ろ姿。

レインが口を閉じていても、ファインにはその心の声が手に取るようにわかる。

(ねえ、ファイン。プリンス・シェイドってとても素敵な方ね! クールでシャイな方のようだけど、立ち居振る舞いが上品で…。ふしぎ星には素敵なプリンスがたくさんいらっしゃるのね)

きっと、こんな感じだろう。

気持ちや考え方がよく合うふたごでも、レインのこういったときめきはファインには難しいものだった。

うっとりしているレインを眺めているのは結構好きなのだが、彼女は「素敵だ」というものを同じように「素敵」と感じることができないときがある。

もちろん、プリンス・シェイドが綺麗で人の目を引きつける魅力を持っていることはわかった。

でも、まだどんな人かよくわからないし、そもそもファインにとっては「上品」とか「優雅」という雰囲気はどこかしっくりこない。

ふたごのレインの方は、自分と一緒にかけまわるのが好きなくせに、なぜがそれと同じだけ「優雅」なものに心惹かれるる。


(私だったら…)

ファインは歩きながら、自分のつま先に視線を落とした。

(私が好きなのは…)


優雅さとはかけ離れた、もっと粗野でどこか捨て鉢な雰囲気の人。
でも、ふとした瞬間、優しい気持ちを持っていることがわかる人。

彼女の心に、ひとつの面影が蘇る。


カラスのように黒いコートに身を包んだ、あの人。



エクリプス




(…どうしているかな)



あの森で会って以来、その姿を見たことはない。


(もう、会えないのかな…)


そう思った途端、目がじわりと熱くなる。


(もう、なんで…!)

ファインはあわてて目をこすった。

いまはこんな気持ちになっている場合じゃない。

唇をキュッと結んで前を向き直る。

「さあ、皆様。こちらのテラスに出れば、そこが会場です」

日差しを浴びたガラス作りのドアの前で止まったシェイドが、振り返ってそう告げた。

「宝石の国や、かざぐるまの国のプリンス、プリンセス達がすでにいらっしゃいますよ」
「パープゥ」

プリンス・シェイドと、そして彼の肩先に浮かぶミルキーが改めておひさまの国の招待客に一礼をした。
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王子様とならず者 8 (月赤)

けれど

「少しでも楽しんでいただけたらよいのですが」

彼が少しはにかみながらそう言ったのを見た瞬間、ファインの心から気構えが抜けてしまった。

ふいに見せたその表情は、とても少年らしくて、急に彼を親しみの持てる存在に変えてしまったのだ。


「それでは母上。ご案内して参ります」
「ええ、お願いしましたよ。どうぞ皆様、素敵な時間をお過ごしください」

ムーンマリアの笑顔を後にして、一行は王の広間から出た。

そしてシェイドについていく形で月の国の王宮の中を進む。


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