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引っ越しで

すみません、職場の関係で引っ越しすることになりまして、更新が止まっていました(>_<)

一度止まるとそのままになっちゃう、という思いで、ブログに浮上しようと携帯から書いてます。

本日は会社で大勢の来客があり、プレゼン(^^;;

無事に帰宅して、なにか少し続きを書きたいた思います…!

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王子様とならず者 53 (月赤)

元の様子に戻っていくパーティー会場を王座から見下ろして、ムーンマリアは「よかった」と心の底から思った。

一瞬にして起った、会場の混乱は悪夢のようだった。

突然の悲鳴、真っ黒なマントをなびかせて突き進んでいく人影。

エクリプスだ、という誰かの叫び。

同時に起った、おひさまの国のプリンセスがいないという事件と帰還。

自分が真っ先にプリンセスの前にゆくべきだったろうか。

自分が状況を理解し、判断するより早く、息子が動いていた。



「おひさまの国の方々には、まず自分がお詫びに行きます。母上は王座から、皆の混乱をおさめてください」



強く、鋭くだされた息子の指示を、そのまま実行した。


そっと、ムーンマリアは自分の額に手をあてる。


異変を感じ取って近衛兵をいち早く動かしたのも息子のようだ。

近衛兵達から、いま、詳しい状況を受け取っているのも、自分ではなく息子の方だろう。
それどころか、息子の手配で、心を和らげるためのハーブティーまで届いている。
詳しいことは誰も教えてくれない。メイド達は皆、自分が今夜、発作を起こさずに眠れるかについての心配ばかりしてくる。

「シェイド……」


母の唇からかすかに声が漏れた。


(母は、知らぬ間に、こんなにも無力になっていたのですね)


元から体力のある方ではなかったが、本格的に身体を壊し始めたのはここ2,3年のことだ。
専門家によれば、月の国の、ひいてはふしぎ星のエネルギーの流れに異変が現れ、そういったエネルギーを自分の身体が受け取ってしまったというのだ。

月の国の王族は、代々、神秘的な力を持って生まれてくるとされているが、それが悪影響をおよぼした。

それを誰よりも早く察知したのは、夫だった。
あれはもう、10年も前のことか。

「君の身体になにかが起る前に、すべてを解決してくる」


そう言ってある日、月の国のキングは誰にも行き先を告げず、姿を消した。
残された幼いシェイドと自分は、キング不在のまま、なんとか国を治めてきた。
政治で判断に困ると、よく執事に相談した。頭の良い男で、様々な問題を解決してくれた。だんだん、その男は城内で実権を持つようになり、いまでは月の国の大臣として、国の重要な決定権を持つに至る。

けれど、その間に、幼かったシェイドも成長してくる。

プリンスとしてのマナーレッスン、武術の稽古に加えて、法律、経済の勉強。
驚くくらい大人びて育ち、一時期はまわりに誰も寄せつけないくらい気を抜くことを知らない少年になってしまった。

そんな時、王妃である自分は高熱に倒れた。
夢うつつの中、自分の前に現れたのは失踪したキングだった。

夢の中でも、ムーンマリアはキングの姿を、体温をハッキリと感じた。

「必ず戻る」

彼はそう言った。


目が覚めたとき、ベッドの中の自分は10日間、昏睡状態にいたことを聞かされた。
シェイドは自分の側で泣きすぎて、白い顔をしたやせっぽっちのこどもになっていた。

けれど、この昏睡状態から奇跡が起きた。
第二子を身ごもったのだ。

夢に出てきたキングの子だと、自分は疑わなかったが、無事に出産するまで、妙な噂も流れた。

生まれたのは女の子で、ミルキーと名付けた。父親であるキングと同じ髪の色だったことをもって、周囲から誤解を受けるような噂は払拭した。

そして、この妹の存在が、兄であるシェイドにもう一度、穏やかな笑顔を取り戻してくれた。


キングは息子のために、もう一度、姿を現してくれたのだ。そう思うだけで、あと何年先になろうとも、彼の帰りを待って国を守ろうと誓った。


だが、それからまもなくして体調は本格的に崩れてきた。

めまい、頭痛、昏睡状態。
月の満ち欠けによっても、その日の体調が違う。


いつの間にか、月の国の大臣に政治の全てをゆだねるようになってきた。
息子や娘と一緒にいられる時間も減っている。


だから、せめて。
他国の王室に比べて、孤立しがちな息子のために、次のパーティーを開くとしたら、月の国が会場になると自分から名乗りをあげたのだ。

そうして、今日のために、慎重に体調も整えてきた。

そんな中、突然わき起こった、エクリプスという侵入者の事件。
自分は知らなかったが、ここ最近、各地に暗い影を落としている不審者らしい。

そんなことで、このパーティーを台無しにしたくなかった。


いま、会場を眺める。
美しく朗らかな調べ。それに合わせて楽しそうに踊る人々。揺れるドレスと各国の特徴を表した礼服。
宙を見やると、星形の乗り物に乗ったミルキーが、しずくの国の紋章が刺繍してある服を着た小さなこと、仲良くクッキーを食べている。


ムーンマリアは微笑んだ。

それからまた、会場に目をやると、息子の姿が飛び込んできた。

シェイドが誰かと踊っている。
あれは、先ほど戻ってきたおひさまの国のプリンセス・ファイン。

ダンスはステップの難しい曲になった。
けれども、まあ、二人ともとても上手いわ。
もしかしたら、この会場の誰よりも、息が合ってるんじゃないかしら。


思わず彼女は二人の動きに見惚れた。


知らなかったわ、あの子があんなに踊れるなんて。


「知らないこと、だらけね」


ムーンマリアはもう一度、かみしめるようにつぶやく。


明日から、もっと息子のことを。息子のまわりのことを。そしてこの、月の国のことを知っていこう。

彼女は目をつぶって音楽に身を任せた。

*********
なんていうか、この回。
自分の頭の中にあった月の国超勝手MY設定がダダ漏れしたというか。
なんだこの中学生のお話設定ノートみたいなの(滝汗)




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王子様とならず者 52 (月赤)

そのレインの背中を、優しくポンポンとたたく手があった。

「あ…ブライト様?」

顔をあげると、いたわるようにブライトがこちらを見下ろしている。

「あなたは間違っていませんよ、プリンセス・レイン」
「ブライト様〜」

ふしゅっとレインが涙目になった。

それをよしよしするように、彼は彼女の頭を撫でる。

「エクリプスのことで強く意見を言ったのはあなただけじゃないです。僕だって…。いや、僕が一番、彼のことを快く思ってはいないでしょう。レイン。ファインはあなただから、誰よりも好きで安心できるあなただから人一倍訴えてくるんですよ。あなたにだから感情的になれるんだ。それに……シェイドの言っていたように、僕だって不公平なことはしたくない。もしも、ファインが言うように、エクリプスにたいするみんなの意識に誤解があるのだったら、僕だってあらためますよ。彼になんらかの事情があるのなら…。とにかく真実を見つけ出しましょうよ。真実を見て、聞いて、そしてみんなで考えたらいいじゃないですか」

ブライトがしゃべっているあいだ、レインはずっと、うんうんと頷いていた。

「だから、ね。僕たちも踊りましょうか」

最後にブライトはそう言った。

「考えてばかりでも疲れます。今日の終わりは素敵なダンスで。そしてまた、明日から考えましょう」
「はい…」

レインとブライトは手をとって踊りに行った。

キャメロットとルル、プーモはそれを見送る。

「プリンス・ブライトは慰め上手、と」
「ルル、またですか」
「さて、キャメロット様、私達も踊りましょうか」
「は!? なにを言っているのですか。ルル?」
「だって、私たちだって、ダンスのひとつでもしないとやってられません。しばらく姫様方も戻ってはきませんでしょうし。ね、気分転換しましょう」
「まったく、帰ったらどう報告したらいいか。私はスローテンポしか踊れませんよ。あ、腰に負担がかかる動きは…」
「はいはい、大丈夫ですよ、キャメロット様」

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王子様とならず者 51 (月赤)

ファインの頭に、嫌でもエクリプスの言葉が蘇った。

ーー俺は変装をしてるんだ。月の国の王子様そっくりにーー

(変装、なの?)

ファインはシェイドの顔をまじまじと見つめる。


ーー俺の本当の姿は誰も知らないーー


「プリンセス・ファイン?」


シェイドが蒼い瞳で心配そうにこちらを見る。


ーー俺はこの世に存在しないーー



「エクリプス……」


つぶやきが、声になって外にでた。それと同時にファインの瞳から涙がこぼれだす。


「エクリプスを捕まえないで…お願い……」


瞬きもせず、涙だけ流しながら、ファインは真っ直ぐにシェイドを見つめ続ける。

先に目をそらしたのは、シェイドの方だった。
ハアとため息をもらし、彼は彼女に向き直る。


「……事情は明日聞きます。僕だって不公平なことはしたくない。場合によっては、そのエクリプスに情状酌量もします」

そうして彼は口元にどこかイライラしたような笑みを浮かべた。

「これでいいですか? お心の優しいプリンセス?」
「エクリプスと違って、あなたは意地悪ね」

その言葉に、キャメロットやまわりにいたレイン達が驚いた。

「ファ、ファイン? シェイド様はずっとあなたのことを心配してたのよ…?」

レインが戸惑ってファインに声をかけた。

「だって、本当のことだもん」

ファインはムッとした気持ちをそのまま、隠さずレインに見せた。

「レインだって、みんなだって、ちゃんと本当のことがわかったらびっくりするから! なんならいまここでキチンとお話してもいいんだよ?」

レインにならいつもの調子で言える。ついついファインの口調が強まった。

その瞬間、サッと自分の手がつかまれる。
ビクリとしてみると、右手がプリンス・シェイドにつながれていた。

「え? あの…」

相手に腹を立てていたのに、つながれた手を見てファインは一瞬で赤くなる。
手を通して伝わってくる、相手の体温。それは少し冷たかった。

「ことはとてもデリケートな問題です。必ず話は聞きます。大勢のいるところで、これ以上騒ぎは起こさないでください」
「ご…ごめんなさい」

思わずファインは謝った。

そのまま、
つないだ手の対処にお互い困る。


「……踊りますか?」

ボソリとシェイドが言った。

「あ…はい…そうした方が、いいんなら…」

ファインが曖昧にこたえた。


「踊りましょう」


シェイドが自分にも言い聞かせるように強めに言う。
そして彼は顔をレインやキャメロットに向けると、小さくお辞儀をした。

「ど、どうぞ、いってらっしゃいませ」

キャメロットがこたえる。

二人はちょうど新しい曲が始まったタイミングで、踊る人々の中に入っていった。

その後ろ姿を眺めながら、ルルがメモ帳を取り出す。

「ファイン様と、プリンス・シェイドは不思議な関係…っと」
「ルル、いったい、なにを書き込んでいるのですか」
「だってキャメロット様」
「たしかに、私も、わけがわからなくなってきましたけど…」

キャメロットは頭を抑えた。

「頭痛がしてきましたか? ファイン様に用意した薬湯は、キャメロット様が飲んでも大丈夫ですよ」
「いえ、いま私がこの会場を離れるわけにはいきません」

クッと姿勢を直してキャメロットはファインとシェイドの姿を目で追った。
今回のパーティーでは、帰国したら報告することが山ほどだと気が遠くなりはじめながら。

取り残されたレインの肩に、プーモがとまった。

「レイン様、大丈夫でプモか」
「うーん、今日のファインは、もう、なにがなんだか…」
「そうでプモよね。あんなに心配してファイン様のことを探しまわって、無事に帰ってきてくれたと思ったら、まだエクリプスのことでレイン様にも当たってくるんですから。お気持ちはお察しするでプモ」
「私だって、ファインのこと困らせたくないのよ。でも、逮捕状もでちゃったのに……」

レインはフニャっと眉をひそめてうなだれた。

「でもあれかしら……ファインが言うように悪い人じゃないのかしら…? でも、私たちのこと何回も襲ってきたし、ブライト様にもいつも酷いことをする人よ? 私もう、どう考えたら…」

ぷしゅー、とレインの可愛らしい頭から湯気がのぼってきた。


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王子様とならず者 50 (月赤)

みんなが踊りだしたのを見届けてから、ブライト、そしてレインはファインのことを見た。

「プリンセス・ファイン…」
「ファイン…」

ふたりが様子をうかがうように聞いてくる。
ルル、プーモもファインを心配そうに見た。
キャメロットがそっとファインを抱きしめる。

「ファイン様…私がついていながら…なにもできず、本当にすみません。いまのうちにお部屋に戻り、今日はもう休ませてもらいましょう。なにがあったかお話ください」

この言葉にファインは目を光らせた。

「キャメロット…」
「ファイン様?」

ファインはキャメロットに腕を緩めるように身体を動かすと、その腕から抜け出て、強い視線でキャメロットを見上げる。

「私はもう落ち着いたよ。大丈夫。でも、誰より一番にお話したい人がいるの。……プリンス・シェイド」


ファインは振り返ってシェイドの視線をとらえる。

「私は絶対、あなたに、事情をわかってもらいたい。私がなにを見て、なにを聞いたか」

その迫力には、誰もなにも言えなかった。

「わかりました」

シェイドが静かにこたえる。

「けれど、いまはご遠慮ください。見ての通り、いまは、この会場の雰囲気を戻すだけで手一杯です」

月の国のプリンスは、苦笑いをして少しおどけたように肩をすくめた。

その動きが、エクリプスのそれと酷似していて、思わずファインの胸がドキリとする。

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