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王子様とならず者 57

「それでファイン様」

ファインが紅茶を吹いて冷ましながら飲んでいると、キャメロットが静かに言った。

「話してくださるんですね、昨日、起こったことを」

ゴクン

思わず熱いままの紅茶を飲み込んでしまった。喉の奥に熱さが降りてゆくのがわかる。

ファインは縮こまってそれに耐えると、キャメロットの方をみた。

すると、老世話係長の眼鏡越しの目は、小さいが意外なほど強く、じっとこちらの言葉を待っている。

王子様とならず者 56

朝食は、月の国の城に泊まった各国のプリンス・プリンセス達が揃って、ムーンマリア達ととることになっていた。

目が覚めてしまったファインは、そっとベッドから抜けだすと、なんとなくレインとプーモを起こさないように静かに寝室から出て行った。

「まあ、ファイン様、お早いんですね」

寝室を出るとすぐ、キャメロットが自分とルル用に朝のお茶を用意している姿が目に入った。どちらかというと朝に弱いルルのために、キャメロットは毎日、熱いお茶を淹れる。

二人はもう小ざっぱりとした格好になっていて、窓からほのかに差す、朝の光に溶け込んでいた。

それを見た途端、ファインは言いようのない安心感と、同時に泣きたい気持ちが合わさってきて、「おはよう」と言いながら小走りに二人の目の前まで行った。

「おはようございます、プリンス・ファイン」

キャメロットの声はしっかりとしていてた。
そして、小さなプリンセスが目に涙をためているのを感じたこの古参のお世話係は、その身体を抱きしめてあげた。

「昨日からいろんなことがあって、心がお疲れですね」

キャメロットが言う。

「さあさ、まずはお茶を飲みましょう。ルルや、ファイン様のカップを取ってきてちょうだい」
「もちろんです、キャメロット様」

ルルの声もハキハキしている。

ファインはこの二人がいてくれて本当によかったと感じた。

朝食会場に行くまで、まだ時間がある。

いまは、この大好きな二人のいる安心できる場所にいたい。

ファインはキャメロットにうながされてイスに座ると、ルルが自分の分のカップにいい香りがする紅茶を注いでいるのをぼんやりと眺めた。

お久しぶりです

ちまっと、「王子様〜」を更新しましたm(_ _)m

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王子様とならず者 55

プリンス・シェイドは本当にエクリプスとは別人なの?

エクリプスは本当に、プリンス・シェイドの変装をしているだけの別人なの?

確かに、二人はとても似ているようで、どこか雰囲気が違う。

プリンス・シェイドは気難しくて生真面目。愛想笑いが上手かと思うと、驚くほどそっけなくて、どうも遠くに感じる存在だ。

一方、エクリプスはぶっきらぼうで、荒っぽい。言葉もキツイくて、いちいち人の心を傷つけてくるが、反面、感情がわかりやすくて、優しい面もある。

ファインはもちろんエクリプスと話す方が好きだ。


ふと、ファインの中に突拍子もない考えが浮かんだ。

エクリプスとシェイドは、実はふたごなんじゃないかしら。

私とレインがそうであるように。

よく似てるけれど、やっぱり違うと言われる私達。

同じ瞬間に生まれたふたごが、なにかの事情で別々になって。

1人は王子様。もう1人はさすらいのならず者として生きる運命になった。

「なわけない、よね?」

ファインは一瞬で頭の中を駆け巡った想像に、自分で乾いた笑いを見せた。

そんなおとぎ話を聞いたことはあったけど。まさか、そんな、ね。

「でもでも、ホンットによく似てるんだもん」

ファインは大げさに頭を抱えた。

「はあ…考えてたってわからないや」

しばらくして、そう言いながらファインは頭に乗せていた手をおろした。

そうして、チラと隣のベッドを見た。そこにはまだスヤスヤと眠る青い髪をしたレインの姿がある。その近くには、木でできたカゴの中に、居心地良さそうな寝床を作って丸まっているプーモの姿もあった。

ファインは二人の寝顔を見ながら、なぜか神妙な心持ちになったくる。

(レイン、今日はきっといろんなことが起こるね)

ファインは心の中でそう呟いた。

(だけど私、どんなことが待っていても、受けとめようと思うんだ)

プリンス・シェイドはどんなことを言ってくるだろう。

エクリプスはこれから、どんな扱いをされていくんだろう。

そしてなにより、あの怖い二人の男達のことを、自分は上手にシェイドに伝えられるだろうか。

(伝えなきゃ)


そう思ったとたん、あの男、月の国の服を着た髭の男の言葉が蘇った。

男はプリンス・シェイドとエクリプスを並べてこう言ったのだ。

ーーこの二人は私にとって、手ばかり焼かせるめんどうなふたごのような存在ですよーー


「言おう」

ファインは、はっきりした声で呟いた。

あの怖い男は、シェイドなことも、エクリプスのことも憎んでいる。

シェイドだって、狙われているんだ。










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無事に

引っ越し終わりましたm(_ _)m

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