カタカタカタ…

小さな音が聞こえだす。

ファインが音の元を目で探すと、それはキャメロットのカップが、その下のソーサーに小刻みにふれる音だった。
彼女の手が震えているのだ。

「それは…大変な問題です。国際問題ですよ…!」

怒りを押し殺した声でそう言うキャメロットに、ファインはドキリとした。

「でも、エクリプスが助けてくれたし…」
「そんなの問題じゃありません!」

ピシリと響くキャメロットの声に、ファインだけでなく、ルルも小さくなる。

「いいですか、ファイン様! ファイン様はお命を狙われたのですよ? 大の男達に! それも1人は月の国の装束を着ていたなんて。
我が国のキングとクイーンが知ったらどれほどショックを受けるでしょうか。

シェイド様は、エクリプスとやらを捕まえると公言していましたが、それよりもまず、その2人の悪漢の逮捕が先です! そやつらは一体、どうなったのですか?」

「…わからない」

ファインが答えた。

「わからないの。聞いてない。…ああ、そういえば、私の靴も返ってこない」

「靴? そういえば、ファイン様、昨夜は見たことのない靴を履いて帰ってらっしゃいましたよね。まるでメイドが履きそうな靴で」
「月の国のお城のメイドさんに借りたの。私の靴は、男の人達から逃げる時に脱ぎ捨てちゃったから」

ファインの言葉を聞いて、キャメロットが、「本当に恐ろしいこと」とつぶやきながらさらに頭を抱える。

「必死だったから…。あ! あと…」

ファインの顔がサッと青くなった。

「レインが…! レインがくれた髪飾りも…落としてきちゃった」