けれど

「少しでも楽しんでいただけたらよいのですが」

彼が少しはにかみながらそう言ったのを見た瞬間、ファインの心から気構えが抜けてしまった。

ふいに見せたその表情は、とても少年らしくて、急に彼を親しみの持てる存在に変えてしまったのだ。


「それでは母上。ご案内して参ります」
「ええ、お願いしましたよ。どうぞ皆様、素敵な時間をお過ごしください」

ムーンマリアの笑顔を後にして、一行は王の広間から出た。

そしてシェイドについていく形で月の国の王宮の中を進む。