アルテッサ、と呼ばれて人ごみから黄色の豊かな髪をゆらせた少女が小走りにやってきた。
赤紫の地に美しい模様と、アクセントとなる小さな宝石が光る浴衣を着て、光のあたりかたによって黄色から黄金に変わる髪と大きな瞳。
その瞳はエメラルド色に輝き、少女がみんなの側にきて足をとめたとき、彼女は全員をみまわしながら挨拶をした。
チラリとそのエメラルドの瞳が自分に向いた瞬間、アウラーの頭に熱がのぼってクラリとくる。
しかし、目があったのは一瞬のことで、アルテッサはすぐに兄と話しだした。
どうやらブライトとはぐれてしまったのは、ブライトのせいだといってすねているのだ。
ブライトは迷子になって不安な思いをしていた妹に謝りながら優しくしている。
ようやく気のすんだアルテッサがみんなの手の中にあるわたあめに目をとめた。
それにたいしてソフィーが笑顔で声をかける。
「ねえ、アルテッサもいかが? フワフワしていてとっても素敵よ」
「そうですわね」
アルテッサもソフィーの持つ、黄色くて大きなそれに心惹かれているようだ。
「タンポポみたいですわね」
素直に思ったことをアルテッサは口にだしたのだが、豪華に光輝く少女からそんな可愛らしい言葉がでると、まわりにいたみんなはつい微笑んでしまう。
アウラーにいたっては、なぜか心のなかで、「彼女こそ、理想の女の子だ」という強い確信まで持ってしまった。
けれど、アルテッサとしてはみんなの微笑が気になる。
「みなさん、なにがおかしいんですよ? だってタンポポに似ていませんこと? 黄色くてフワフワしているところが」
「ああ、たしかにな」
その言葉をシェイドが受けた。
「そうでしょう?」
同意されてアルテッサは安心したように瞳を輝かせる。
「じゃあ、私たちもそれをいただきませんこと、お兄様」
アルテッサはすっかりわたあめの列に並ぶ気だ。
そうだね、と兄のブライトがうなずいたところで、ミルキーを肩車しだしたシェイドが声をかけた。
「一応、いっておくけれど、色は黄色以外にも選べる。オレはピンク色にしたし、青もあるらしい。注文するときまでに決めておくといい」
「そうか。ありがとう、わかったよ」
ブライトはうなづいてからアルテッサにもう一度それを伝える。
「色はピンクと青も選べるんだって」
けれどアルテッサはすぐに返事を返した。
「私はあの黄色って決めたんです」
そういってソフィーとアウラーの方をみる。
「そうか。それならいいんだよ。アルテッサの好きなもので」
ブライトはそう優しくいうと、妹の背をそっと押しながら列へと向かっていった。
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次はここにファインとレインとプーモが合流です。