もう夜の8時。二人の部屋にはいったファインとレインはそれぞれにくつろいでいた。クローゼットに向かって髪をブラシでとかしているレインを横目に、ファインはベッドの上でもうナイトキャップをかぶって歌を歌っている。
「おほしさまが
もし
コンペイトウだったら
おそらにとんで
たべたいな」
くすり、とレインが笑った。
「ファインの歌ってお菓子ばっかり〜」
「え?そ、そうかな?」
「うん。でも聴いてて楽しい」
レインはそういってコトンとブラシを置くと、鏡のなかの自分を眺めて、それからナイトキャップを手にとると鏡をみながらキレイにかぶった。ファインはポスンと薄いピンク色の枕に顔をのせてなんとなく枕についているレースをいじる。それからつと、身を起し、窓のそばにゆくとそっとカーテンを開けた。
お月さま、キレイ
黄色く輝くそれは、星たちにかこまれながらもどこか一つだけ浮いたようにみえる。
「お月さまってさぁ、お星さまのこと好きだと思う?」
呟くようにいった問いかけにレインが部屋の中から首をかしげた。
「いまなにかいった、ファイン?」
「……なんでもない」
シャッとカーテンを引いてファインが部屋の真ん中に戻ってくる。それから部屋の左側の壁にかけられた小さな籐のカゴのなかですでに寝息をたてているプーモの小さな毛布をかけなおしてあげた。
「……きっと好きになるよね」
レインはそんなファインを不思議そうにみつめ、それから明かりを消していい?と優しく尋ねる。ファインはうなずいてベッドにポンと乗っかった。
「おやすみなさい、ファイン」
「おやすみ、レイン」
またおひさまが巡ってくるまで。
おつきさまに包まれて。
おやすみ。