若い家族はタペストリーを購入して去っていった。店内は少し静かになる。
フランは手を振るフィルの後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
「……いいなぁ」
扉を閉めながら、フィルが呟く。
「何がだ?」
ヘリオスが促すと、フィルはくるりと振り返る。浮かぶのは曖昧な笑み。
「なんかなぁ、みんな仲良しっていいなぁって。イルもソーマもお互い大好きじゃない? それでイーアのことも大好き。大好きがいっぱいあったら、それって幸せだと思うんよ」
「お前もああなりたいのか?」
ヘリオスが半眼で呻く。
「常にイルのことしか考えていないイル至上主義者の手綱を取って他者との緩衝材になることも厭わない人生になるぞ?」
「そっちじゃなくてなぁ」