色姑たちは別の部屋に集められた。手に仕事をつけるための講座らしい。真剣に話を聞く色姑たち、ひそひそ、年かさの色姑が教えてくれた。
先ほどの方がお頭さ。
びくり、身を震わせたが年かさは恐れからだと理解してくれたらしい。顔を覚えられたかもしれない、とわたしは思う。
顔を覚えられたら、頭の不利になる。弱みになる。
頭は迎えにきてはくれない。
隠れていろ、と言われた部屋から出、敵方のひとと一緒にいるわたしたちを頭は味方だとは思わないだろう。むしろ頭を騙したと思うだろう。
めそめそと泣き出したわたしの耳にざわめきが届く。
やあやあ、我らの姫はおらんかな。
大柄な男がひとり、腕の入れ墨を見せながら歩いてくる。
大道芸人さ。
年かさが耳打ちする。
珍しいね、お頭がいない場にくるなんて。大道芸人は上の方にしか媚びないのに。
やあやあ、美しき姫たちよ。
ぐい、と見せられた逞しい上腕に、あ、と声をあげた。
ほほう、姫さまだ姫さまだ。みなよ、姫がいたぞよ。
ぐい、と掴まれ妹とともに連れてゆかれる。年かさが笑いながら、遠くには連れてゆくでないよ、と言うのを聞いた。暇な大道芸人が新顔を連れていったとでも思っている。
ぐいぐい引かれ隠し階段を登る。カタタタタ、拍子木が鳴り、階段を下りた。
じっとしていろと、言ったのに。
頭の言葉にまたもや泣いてしまう。変化の業までして迎えにきてくれるなんて、頭はなんて優しいんだろう。
ごめんなさい。
小さな声で謝ったら、頭はお家の紋章が入った腕を見せてくれた。歪み狸、笑い狐。
逃げるが勝ちさ。近々化かし合いもあることだしな。
頭はなんも咎めない。それがうれしくって、ぼろぼろ泣いた。