こんばんは。今夜は七夕です。
皆さまはもう、星へ掛ける願い事はお決まりでしょうか?
過去最強クラスと名高い台風が迫り来ちゃってる中ながら、私の住んでいる辺りは曇り空で、なんとか月だけは見えてますな空模様です。やっぱり、なかなか…晴れませんね(^◇^;)
さて。
今夜のためになんとか用意できました信桃を追記にて上げております。内容は、まあ…甘っ甘だと思っていただいて大丈夫だと思います。はい。←
では!追記にていきなり始まります!
大丈夫そうな方は、どうぞ!!
皆さま、良い七夕をお過ごしくださいね!
縁側に腰を下ろし暗い空を見上げて、桃丸は小さな手を空に伸ばし、ふくふくと甘い弧を描く頬を、ほんの少し膨らませていた。
「何をそう膨れておる、桃丸」
「のぶおじさま…」
ひょいっと抱き上げられ、その柔らかい頬を信長の頬に、ふにっと触れさせて桃丸は少し尖らせた唇を開く。
「おそらが、いっこうにあかるくならないんです…。ほしあかりがみたいのに…」
そう言って拗ねたように尖らせている唇の形まで愛らしくて、魔王と異名をとる彼らしくもなく柔らかく微笑むと、その愛らしい唇を人差し指で、ちょんとつっついた。
「そうさな…、桃丸がそれほどに望むのならば雲を払ってやりたいが、流石に天候は変えられんしな…」
縁側に腰を下ろし桃丸を膝に座らせて、信長は小さく息を吐く。魔王なんぞと言われた事はあっても、風神やら水神なぞと呼ばれた事は未だかつてない。
桃丸の柔らかい髪を手慰みになぜながら眉間に皺を寄せて考え込んでいると、ぱたぱたと小さな腕を振った桃丸が首を横に振った。
「ち、ちがうんです!のぶおじさまにおそらをいじってもらいたいわけじゃなくって、…その、えっと…」
頬を赤らめ、言い淀んで視線を彷徨わせる様が尋常でなく可愛らしく感じて、信長は顔が崩れてしまわないように表情を引き締めながら優しく口を開いた。
「では、桃丸はどうして欲しいのだ?」
ふにゃふにゃとした頬に手を添えて、優しく此方を向かせると、桃丸は赤かった頬を更に赤くして、視線を彷徨わせる。
「…そ、その…」
「ん?言ってみろ」
添えた手の親指で桃丸の唇を軽く押しながらなぞると、ん…、と小さく喉を鳴らして瞳を潤ませる。……小児淫行は良くない、な。
ナニもできないのに、こんな顔をする幼児がいたら確実に世は変態で満ちあふれてしまう…と、変態の片端を担う魔王が自分の存在を棚に上げた感想を持っていると、膝のうえの幼児性犯罪被害者予備軍の美少年が小さく口を開いた。
「…あの…、わらわないでくださいね…?」
全く可愛くて違う笑いが漏れてしまいそうで困る。ふはははは!とかそういう類いの。
そうは思ったが、信長は、いかにも紳士然とした微笑を浮かべて頷いた。
「大丈夫だ。笑わんから言ってみろ」
「はい…。えっと…」
「ん?」
「……のぶおじさまが、ひこぼしさまに…、ももが、おりひめさまに…かさなっておもえてしまったんです…」
「信長と桃丸が、星に?」
「はい…。くものせいで、あえないなんて…って、おもったら、くやしくなって…」
「………」
なんっっっって可愛いことを此奴めは!!
ぷるぷると震えていると、それに気付かないくらい必死な様子で桃丸はギュッと此方の手に頬を押し付け、信長の手を一生懸命掴んで、本当に悔しそうに言葉を続けた。
「ももなら…!ももなら、はっぱのおふねをこいででも、のぶおじさまのところにいくのに!くもなんて、えいやっ!ってして、あまのがわをわたるのにっ!」
どこかでプツンと理性の緒が切れる音がしたような気がした。
もう…限界だ…。
「…っ、うぬは、ほんに愛い」
感極まって桃丸を抱き締め、信長は胸を締め付けるような感動で幼い背を何度も撫でた。
「のぶおじさま…っ」
ギュッと小さな手に抱き返され、くっつかれて、愛らしさが苦しいくらいで息が詰まってしまいそうだ。
「…信長が牽牛なら牛小屋の屋根板を引っ張がしてでも船を造って桃丸の元へ参ろう…。毎晩でも天の川を渡ろう、うぬの為に」
「っ…うれしいです…。だいすきです、のぶおじさまっ!」
感情が高ぶったようで涙声になりながらも、ひしっと抱き付いて告げられた言葉に、胸が暖かく苦しくなる。
「信長も、うぬを、桃丸を愛しておる」
「のぶおじさま…」
泣きそうな桃丸の声に、本当に、何故今彼が光秀の状態でないのか、現状を呪った。
こんなに小さくては、流石に押し倒したりはできないではないか。
不穏な本音を優しい笑みに隠して、信長は、桃丸の額に軽く唇を当てた。
「約束しよう、桃丸。うぬが、どんなに遠く離れたとしても、信長は桃丸に逢いにゆく。誰に咎められても逢いにゆこう。…だから、うぬも、信長を信じて待て。葉の船なぞ危険なものを造って渡ろうとするでないぞ?」
最後は冗談まじりに笑って言うと、うっすらと浮かんでいた涙を拭って背伸びをした桃丸に同じように額に唇を当てられた。
「しんじます。のぶおじさまを。…けれど、あんまりながく、ももをまたせたら、はっぱのおふねでも、ささのおふねでも、なんとかしてつくって、あいにいきますからね」
いたずらっぽく微笑んで告げた桃丸のあまりの愛らしさにドカンと心臓を撃ち抜かれながらも、ふははと笑って、信長は彼の頬をぷにぷにとつつく。
「なら、桃丸を待たせぬよう、急ぎ造船して逢いに行かねばならぬな」
「はい!…まってますからね?」
「ああ…」
不安げに此方を見上げた頬に口付け、優しく笑むと、桃丸も愛らしく微笑んで。
こうした行事に大した感慨もなかった信長にも、七夕とは悪くはない日だと思えた。
fin.