一体何を言っているのだろう。男の紡ぐ言葉はケトルの感覚の埒外にあった。

「そこかしこで倒れている、護衛の役目を果たせなかった役立たず共もそうだ。その人生を、私が有意義に使ってやったのだ」

ケトルは彼等に思い入れがあったわけではない。だが、あまりに高圧的な物言いに込み上げる感情があった。
思わず叫ぶ。

「そこまで沢山の人達を利用して、お前は一体何がしたいんだ!?」

男は事も無げに返す。

「魔術の深淵も知らない小僧に私の願望は理解出来まい」

「何言ってんだ! 同じ魔術師同士でも理解されなくて破門されたクセに!!」

男の表情にはっきりと苛立ちの色が見えた。

「……ああ、そうだとも。彼奴らは私の研究を人の道に背くとした。だが大いなる力の探求に犠牲は付き物だと、何故解らない? 人の世の法則を超えた領域に至るにあって人道は不要! 魔術は『超常を操るすべ』だが、私の目指すのは『超常を統べる法則』すなわち『魔法』である!!」