騒ぐ少年の足元に蹴りを入れる。体勢を崩して転がって逃げる少年の頭上に刃を振り下ろす。

「ケトルさん!」

少年は身を捩ってかわし、リャオと距離を取る。
これで少年と少女の位置が入れ替り、少年は通路の奥へ追いやられ、逆に少女はリャオと依頼人達に挟まれる形となった。

「ケトルさんから離れて下さい!」

「おっと」

少年に駆け寄ろうとする少女を片手で牽制しつつ、もう片方の手で少年をあしらう。

「……こうなれば」

少女が小さく呟くと、その背にみるみる光が収束していく。

「まずいっ……!」

依頼人が血相を変える。

「兄貴ー!」

「わかっ、た」

サイードが少女の背後に回り込み、片方で少女の両腕を掴み上げる。

「きゃああああぁっ!?」

少女は見上げるような大男に腕一本でぶら下げられ、軽いパニックに陥ったようだった。翼のように拡がっていた光が霧散していく。