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GHELLO WONDERLAND(銀新)

FHELLO WONDERLAND (銀新)



「あ」

銀さんの間の抜けた声を背中に聞きながら、僕は必死の思いで草履を脱ぎ、脱兎のごとく廊下の奥に駆けた。けれども、廊下なんて言ってもほんの数メートルもない万事屋のこと。すぐさまに居間に駆け込む羽目になった僕は、それでも一番出入り口から距離のある銀さんの机の後ろに回り込む。
とりあえず、こんな時はできるだけ距離を取ることが大事なのだ。僕の精神衛生のために。あと玄関先で乗っかってきたケダモノに死ぬほど犯されない為に。

はあはあと荒く息を吐き、机に手を置いて息を整える。すると、タッチの差で銀さんがのんびり居間に入ってくるのが見えた。

「おーい。何で今更逃げてんの?バカですかお前」

何故なのか僕を追う銀さんの声は少し楽しげだ。捕食者の余裕。僕を見る顔もニンマリと笑って、いつもの小憎らしい銀さんでしかない。

「てか玄関の鍵閉めてあんの分かんだろ?俺に背ェ向けて逃げるとか無駄じゃね?しかも逃走先が家の中って」

銀さんの言い分は全部もっともだった。本当に逃げたいのなら、銀さんの手を噛むなり何なりして、玄関の鍵を開けて逃げ出さなきゃダメなんだ。けどそうしなかったんだから、僕だって自分がばかだって分かってる。
銀さんや高杉さんに改めてバカバカ言われずとも、よくよく自分で分かってる。


「っ……でも、何ていうか、僕なりの心の準備っていうか」

だから、悠々と僕の方に歩いてくる銀さんを見ながら言った。
銀さんは机を挟んだ真向かいまで来て、ピタリと足を止める。

「は?」

その片眉が訝しげに上がるのを見て、僕はいよいよ声を大にした。

「あ、勘違いしないでください!銀さんとするのが嫌なわけじゃないんです。ただ……ひ、久しぶりだし。恥ずかしくて……僕」

言っているうちに、かあっと頬が熱くなっていく。だって本当に恥ずかしいったらない。さっきの公園であれほど僕が大胆になれたのは、やっぱり木々に囲まれての薄暗さのせいもあったのだろう。暗さは本能を引き出してくれる。日常にぽっかり空いた暗闇は甘い甘い堕落の罠だ。

──それなのに、今はこんなに明るい昼間の万事屋。煌々と陽が差し込む、まだ昼過ぎの健全な時間帯。

もちろん以前も銀さんと昼間から抱き合ったことはあったけど、その時にはこれほど恥ずかしいとは思わなかった。むしろ興奮している銀さんの欲望をやり過ごすのに必死で、僕自身が恥ずかしがっている余裕もなかった。何より以前していた銀さんとのセックスは互いの精を吐き出すのが先決で、半ばスポーツみたいなところもあって。

だから……想いが通じあった今は、前までは感じなかった恥ずかしさが逆に募って仕方ないのだ。



「オイオイ、新ちゃん。お前さっき公園でキスしてた時、凄え大胆だったのに。物欲しげに俺の身体触ってたくせに……やっと帰ってきたら今度は逃げんの?お前どっかで仕込まれてきたの、そういう手管」

何を思ったのか銀さんは重い溜息を吐き、僕をジロリと見据えた。その舐めるような眼差しに何か良からぬものを感じ、僕はきっとまなじりを吊り上げる。

「はっ!?て、手管!?仕込まれ!?……違います!変なこと言わないでください!」
「じゃあいいだろ?」

思いがけない言葉に狼狽える僕を見つめるのは、ぎらついた雄の欲望も露わな銀さんだった。何の足音も立てずに机の後ろに素早く回って、僕の手首をぐいっと乱暴に引っ掴む。片手一本で軽々抱き寄せられて息を飲んだ。

「もう焦らすなよ」

悔しい。本当に悔しいのに、こういう時の銀さんは本当にかっこよくて仕方ない。
僕のことなんてまるで猫の仔のように軽く扱う、その膂力。着流しから抜いた逞しい右腕に浮き出る、太い血管。僕の顔よりだいぶ高い位置にあるその真顔。目と眉が近いモードの銀さん。

普段の気怠げな銀さんの様子を知っている上でこんな風に強引に迫られ、そのギャップでオチない女の人ってどこに居るのだろう。現に普段の怠慢さを見飽きるほど見飽きてきた僕だって、銀さんのこの男ぶりにははしたなくときめく有様だ。悔しいことは悔しいのに何故。

……ほんとに何で!?


「てか結構聞き分けがねえな、お前。前はこういう時はもうちょい俺に従順だったじゃん?」

僕の内心の苦悩を全く知らない、というかもう考えもしないだろう銀さんは引き続き訝しげだ。
でも至極純粋に思ったことのように悪びれなく呟かれた疑問に、僕の肩はびくっと震える。

「だってそれは……前は、銀さんに嫌われたくなくて……どうしても自分に自信が持てなくて、」

知らず知らずのうちに声が震える。でも真実でしかない。
前までは銀さんに嫌われたくて、誘われたら嫌がりもしたけど、ここまで抵抗もしなかったし、恥ずかしがらなかった。むしろそんなこと出来なかった。けどそんなの、今思えば全部言い訳だ。

僕は自信がなかった。銀さんのことをただ好きで仕方なくて、それだけでいいと思っていたのに、しまいには銀さんの身体も心も欲していた欲張りな自分。嫌がるフリをしていても、銀さんに求められることを心待ちにしていた浅ましい自分。
そんな僕が自分の行為、ひいては自分自身に自信を持つのは到底無理だったんだ。


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EHELLO WONDERLAND (銀新)

今までのまとめ








「ただい、」

万事屋に帰って玄関の戸を閉めた途端、ただいまの『ま』の音も言い終わらないうちに抱き締められた。後ろから伸びた銀さんの腕が僕をがっちりと拘束する。


「っ、ちょ、ちょっと銀さん!何するんですか!」

僕は慌てて後ろを振り仰ぎ文句を言うけど、内心はドキドキだ。
だってすぐ真後ろにある、銀さんの体温。背中にぴったりとくっ付けられた、厚い胸板の感触。甘いような渋いような、どこかやらしい感じのする銀さんの匂い。

もうダメって思うのに、はしたないと分かっているのに、僕はまた性懲りもなく胸を甘く高鳴らせる。もう条件反射みたいなものだ。言わばパブロフの犬。銀さんが好きで仕方ないから、こうやって強引に迫られるのも本当は嫌じゃない。時と場合によるけれども。

でも、銀さんは銀さんで僕の戸惑いとトキメキなんて知った事じゃないのか、片腕で僕の身体を拘束したまま、器用にももう一方の手でゴソゴソと僕の袴の紐を解き始める。


「いや何って。……ナニ?」

しらっとしたいつもの声に実にオッサン染みたことを呟かれ、僕の体温は瞬時に上がった。かああと頬が熱くなり、銀さんの片腕の中でじたばたとみっともなく足掻く。

「はっ!?……や、止めてください!」

けれど、後ろを振り返ったままでいたのが良くなかったんだ。ひょいって首を伸ばしてきた銀さんの顔が近付いたと思ったら、僕は唐突に唇を奪われていた。

「やっ!待っ……」

喚いていた口が塞がれ、濡れた生温いものが口内に突っ込まれる。眼鏡がずり上がって、銀さんの高い鼻が僕の鼻の脇に押し付けられていた。

「ん、うう」

揺れる睫毛に肌を擦られ、僕はくすぐったさに軽く身をよじる。でもそんな些細な抵抗すら許さないというように銀さんの腕が僕の動きを封じてくるから、あとはもう銀さんの気がすむまで唇を貪られる他はない。

ふうふうと吐き出される荒い呼吸と、くちゅくちゅ鳴る粘ついた音が、重なる唇や絡まる舌の隙間から小さく聞こえてくる。銀さんはまるでそれが大好物とでも言うように僕の唇に深く吸い付き、太い舌で僕の舌を乱暴に絡め取り、めちゃくちゃに口の中を舐め回す。
唾液を啜り、下唇を咬み、舌と舌とを絡ませて、さっきの比ではないほど荒っぽく強引にキスされ──執拗なほどのその激しさに、僕はすぐに降参の意を示した。

「や、あ、あふ、うぅ」

でも、拒絶する声もマトモな言葉にはならない。銀さんの舌技についていくなんてとてもできないから、結局はされるがままだ。
その内にようやく満足したのか、僕の唇を散々に蹂躙し尽くした銀さんがゆっくりと顔を起こす。僕を見つめる、情欲と興奮に塗れたその紅い瞳。さっきのキスで唾液に濡れた肉厚の唇も妙に男臭くて淫靡で、心臓がおかしな風に弾んだ。

「……もう我慢できねえ。いいだろ?」

低い声は隠す気もない欲望を孕んでいる。耳元で囁かれて、腰が変にゾクゾクした。銀さんから漂ってくる男の欲望の匂いにくらくらして、その生々しさにあてられた僕はイエスもノーも咄嗟に言えやしない。

「え?でも、あの、ここまだ玄関だし……しかもまだ昼間だし、」

言い淀む僕を、銀さんは凝然と見ている。まるで目を離したら僕が居なくなるとでも言いたげな熱視線。穴が開くほどに僕を見つめる眼差しは、やっぱり獰猛な肉食獣のそれに近いと思う。目の前の獲物に照準を合わせているケモノ。
普段の銀さんが標準装備している死んだ魚の目をこれほどに懐かしんだことはない。だってだって、銀さんがこういう目をしてる時は絶対にヤバイ。もう本能で分かる。


「本当はさっき最後までしたかったけどよ、なけなしの理性はたいてすげー我慢したんだもん。だから、な?」

荒い息を耳に吐き掛けられ、いやらしげに耳殻をしゃぶられる。しまいには袴の隙間から手を突っ込まれ、僕はいよいよ飛び上がった。

本格的にマズい。ヤバいって、この人ここで僕をヤっちゃうつもりなんだ!


「いや『な?』じゃなくて!だって誰が来るかも分からないですし、し、仕事の依頼が急に舞い込んでくるかも……」
「あー仕事の依頼?来ねえ来ねえ」
「おいィィィィィィ!!即答ってどうなの!?そんなスッパリ言い切られると逆に悲しくなるわ!」
「あとホラ、鍵もちゃんとかけたよ?今ね」

真っ赤な顔で言い募る僕をよそに、銀さんは平然と後手で玄関の鍵を閉めている。パチンと回った簡易な鍵の、その間抜けな音にますます僕は頬を熱く火照らせた。
だって、まだ僕らはブーツも草履も脱いでない。玄関先もいいところだし、誰も入って来ないからっていくらなんでも性急過ぎる。


「だ、だからって……まずはお風呂とか」

けど、おずおずと呟く僕の提案は即座に却下された。

「もう後回しでいいって。だいたい最初に風呂入っても、また最後に入ることになるから。最終的には二人して色んな汁まみれでドロドロになるから」
「でも僕、今日朝から外に居たし……た、高杉さんと話してて、怖くて変な汗いっぱいかいたし」

話を続けながらも、銀さんの胸板にぎゅむっと顔を押し付けるようにして抱きしめられ、僕はやっぱりどぎまぎする。心臓が破れんばかりに高鳴って、ドキドキしてたまらない。
鼻腔を掠める、銀さんの甘い匂い。身体の奥がきゅうっと引き絞られるような、うずうずと熱く疼くような、不思議と僕を昂ぶらせるこの人の匂い。


「ああ。いいよ別に。お前って男臭いところが全くねえどころか、限りなく無臭だから。チンコも。これって精液薄いのと関係してんの?」
「いや限りなく無臭って何ですか!?また僕のことバカにしてますか、てかしてるでしょ!?か、関係も何も知らないですっ!」

しかしながら、銀さんは銀さんでしかない(いい意味でも悪い意味でも)。
やはり平然と吐き出されてきた言葉には絶句し、僕は憤りを露わにした。だって、せ、精液が薄いだの、アレが限りなく無臭だの……いくら僕でもれっきとした男なのに失礼過ぎやしないか。そりゃ銀さんのと比べたら子供過ぎるほど子供な見た目の僕のジュニアだけど、十六年付き合ってきて愛着もあるのに。

それなのに銀さんは男子としての僕の怒りはまるで無視だ。さっき咬んだ僕の首筋に顔を寄せ、それこそオオカミのようにぺろぺろと舐めまくる。

「っ……だ、だめだってば」

情けないことに、もう僕の声は上擦っていた。首筋に埋められた銀さんの頭を引き剥がしたくて、引き剥がせなくて、迷うように指が蠢く。まだひりひりしている咬み痕を優しくいたわるように舐められると、びくっと背中を反らしてしまう。

「だめ……銀さんっ」
「うん」
「……待って銀さん、待ってってば!」
「ハイハイ。待つ待つ」
「待ってないってば!全然待ってない、口だけだってば銀さん!やめてったら!」
「うんうん。ちゃんと止めるから」

いやほんとに口だけですからァァァァァァ!!

言ってる側から軽く歯を立てられ、いい加減ひりついてきた首筋からぞわぁっと鳥肌が立つ。それなのに腰にきゅんと甘く込み上げる快感があって、どっちつかずの感覚に翻弄される僕は既に息も絶え絶えだ。こうなったら銀さんに敵うわけない。

昨日と違って神楽ちゃんが帰ってくる心配がないからか、銀さんはますます勝手な言い分を翳してくる。ちゅうちゅうと僕の首筋にきつく吸い付きながら、その片手は我が物顔で僕の身体を這い回っていた。長い指先が僕の背中をいやらしく滑り降り、腰をくすぐって、物欲しげにお尻に伸びる。

「ちょ……だからだめっ!」

でも、家に帰ったことで銀さんもどこかで安心していたんだろう。僅かにも拘束が緩んだ一瞬の隙を見計らい、僕はするりと銀さんの腕から抜け出た。



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A攘夷バンド妄想 (高新)



攘夷バンド妄想が止まらない!ので、忘れないようにメモっておく。

新八くんが攘夷バンドのローディーとして業務に携わるようになったのは四月(新八くんが高校卒業すぐ)。最初は新八くんのことをばかにしきって、舐めくさっていた晋助&銀さんも、数ヶ月経って徐々に新八くんの熱意とひたむきさにほだされていく。ちなみに桂さんともっさんは、

もっさん「こんな小さいのにえらいの〜。親孝行もんじゃ(しみじみ)」
桂さん「本当だな。この年で自ら外貨を稼ぐ……ご母堂も立派な子息を持ったと喜んでいよう(しみじみ)」
新八くん「いや、僕もう十八歳ですから。これでも高校出てるんで、つまりあの、あんたらの僕に対する認識はいつもおかしい(真顔)」

こんな感じで、いつも新八くんには非常にフレンドリーです(フレンドリーの意義)。新八くんのことを舐めくさっている晋助&銀さんのことを、いつも諌めております。
そんなこんなで、来る夏。攘夷バンドは有名な国内ロックフェスに初めて出演が決まりましたよ。名称出すとアレかも分からんのですけど、具体的に言えば新潟の苗場で毎年開催の三日間ロック漬けのやつ(分かるがな)。海外バンドの出演が圧倒的に多い中、攘夷バンドさん頑張った!つか新八くんの必死の営業とか、社長の虚さんが様々な辣腕を振るったおかげで、フェス2日目の二〜三番手出演という、ほぼ前座に近い若手バンド位置だけど、奇跡的にステージに立つ機会を得た。

ライブはとても盛り上がった。若手らしからぬ重いサウンドと魅惑的ボーカルで、新たなファンをまた獲得しましたさ。だから新八くんは凄く感動して、我がことのように喜んで。きっとライブ終わってお客さんも大盛り上がりの場内をステージ袖で見ながら、こっそり泣いてましたよ。ぐすっと鼻を啜ってましたよ、そして虚さんにそっとハンカチを渡されている(苗場まで社長来てんの)(保護者同伴バンドです)

で、自分らの出番終わってもフェスは一日中ですからね。夜が近付いてトリに行くほど有名なバンド出るし、バンドマンとしても海外バンドは皆聴いておきたい訳ですから、自分らの出番終わったら一回はけて、攘夷の四人もそれぞれが好きなバンド聴いてたのですよ。そしてね、夏だから雨も降る。山の中だし。

高杉さんはそんな中で、一人生温い夏雨に打たれながら、気になってたUKバンドの演奏をエリア後ろの方でずっと聴いてた。時間帯は夕方くらい。そしたら不意に、シャツの袖口をつんつんと後ろから引っ張られ。

「……?」

振り返ったら、スタッフパス下げた笑顔の新八くん。フェス用のバスタオルを頭から被ってますが(雨対策)ニコニコして、屈託なく話しかけてきて。

「高杉さん、こんなところにいたんですね。今日のライブ、お疲れ様でした。僕……感動しました。高杉さんの声は世界行けますよ。もちろん、銀さんや桂さんや坂本さんの演奏も。そういうバンドなんだって、僕は今日確信しました」

なぁんて笑顔の新八くんに言われたらね、晋助も無言ながら、新八くんが隣りに佇むことを許してしまうんですよ〜!無言ですけども。そして、

「てか雨がだんだん強くなってきてないですか?ボーカルが風邪ひいたら大変!あ、僕のタオルどうぞ」(自分のバスタオル寄こす)
「要らねえ。どのみちこの雨だ。じきにずぶ濡れになるだろうが(フン)」(突っ返す)
「いやそれはそうなんですけど。さっきまで僕は屋内に居ましたから……高杉さんほど濡れてないし。アンタは先陣切って雨に濡れに行く派ですね」

新八くんに自然と世話をやかれつつ、後ろの方で二人して曲聴いてたんですよ。そしたら最初のロックを数曲いなしたバンドの中盤、今度の曲は夏雨が似合うような、どこかしっとりとしたラブソングへと移り変わり。
そしたらね、雨のフェスですよ。海外バンドのラブソングですよ。晋助の手は自然と新八くんの顔の横に垂れてたタオルに伸び、自分の方に引き寄せるようにぐいっと強く引っ張って。

「え?たか……」

高杉さん?と、新八くんが疑問を呟く暇もない。高杉さんはそのまま、ごく自然に新八くんにキスしてました。雨に濡れながら、唇を重ねた。薄く柔らかな新八くんの唇を、一回二回ははむってしただろうね。ちゅっちゅって角度変えながら二、三回キスして、ちょうどいい角度見つけたら可憐な唇にしっとり吸い付いて。でもこの時は舌は入れないんで。
時間にしたらほんの数秒。でも、新八くんはもちろんこれがファーストキスだった。初めてキスした。しかも、自分が高校一年の頃からずぅっと憧れてた、大好きなバンドの尊敬するボーカルと。

新八くんが頭から被ってたバスタオルのおかげで、後ろからは重なった二人の唇は見えないはずです。でも唇が離れた後の新八くんはもちろん赤面して、ぽぽーん!ってなってしまって(赤面効果音)、

「た、たか、高杉しゃんんんんんん!?」

マトモにものも言えずに噛んでる(カワイイ)
けどどんなに新八くんがアワアワしてようが、ドキドキしてようが、高杉さんはポーカーフェイスを崩さず。キス終わったら、また前を向いてさっきのように音楽聴く感じになっちゃったから、新八くんはもう何も聞けなくなって、

「(何だろう、さっきの。さっきのってキス……だよね。高杉さん、何で僕にキスしたの……?)」

などと切なく思いながら、もう新八くんは音楽聴くどころじゃなく(当たり前に)、その後は延々と隣りの高杉さんの端整な横顔を見上げてたんですよ。うっとり見上げてたんです。バンドが演奏終了してエリアから人はけても、まだまだぼうっとして、潤んだ瞳で高杉さんだけを見てたんですよ。
そしたらふと晋助から見下ろされ、

「あ?何ボサッとしてやがる。てめえまだここに突っ立ってんのか」

と上から目線で言われ、

「スタッフのくせにどこまでもとろくせェ。てめえは相変わらずどうしようもねえな」

的な嫌味を、高慢でいて最高にカッコ良い笑顔でフフンとかまされてからようやく我に返り、

「い、いや、違うし!今から向かうとこだったんですよ、指定されてた時間には間に合いますもん!高杉さんのばか!ばかばか!」

などとわあわあ言いながら、高杉さんにくるっと背中を向けて、ぱたぱたと赤面で走り去って行くという。もちろんキスの意味は聞けずじまいでね。でもでも、キスした唇をこっそり押さえて走る新八くんですよ。
キスした唇をとても気にしながら、戸惑いと恥じらいと期待とときめきに、頬をほんのり染めて。

「(高杉さん……僕……)」


って、オイオイ好きになりかけてるがな!!チューだけで死ぬほど気にしてるってば、新八くん落ちるの早すぎなんだけど!?ほんと君はすぐ男にほだされるね、好き過ぎて滅亡!(ユカリが)
あ、これが私が考えた二人の初チューですが、大丈夫ですかね(華春さん)(ここで名指し)

この後に様子が明らかにおかしくなった新八くんを銀さんが不審に思い、問い詰めて晋助とのキスを白状させ、そっから銀新も始まっていくという。つまり銀さんは後追いなの、でも銀さんはチューするにも最初っから舌入れてくけどね!つまり新八くんのファーストキス自体は晋助だったけど、舌入れた深いキスは銀さんが初めてだったと。そうきたか(何が)


男狂わせですね、まったく君は。どうなってんだ新八くん、君はどうなって……好き!(ふぎぃ!)

DHELLO WONDERLAND (銀新)



「……スケベ」

そのうち、ふっと顔を離した銀さんにからかうように囁かれて、頬がかあっと熱く火照る。僕の指が銀さんの身体を確かめることを止められず、今ももじもじと動いているからだろう。
でも、それに銀さんが興奮しているのは分かった。僕のお尻をいきなり掴んできた手が、ぐにぐにと乱暴に柔らかな肉を揉む。

「あっ……えと、あの、銀さんこそ」
「お前は俺のもんだからな。いい?」

僕をじっくりと見つめる銀さんは、またあの目をしている。興奮と情欲に濡れた、凄絶なほど綺麗で──獰猛なあの目。でもこんなに自由気儘で綺麗な獣なんて、僕は銀さん以外に知らない。

僕にぶつけられる、激しい独占欲。僕を蕩かせる、その欲望。
銀さんに独占される快楽に僕は甘く喘いだ。ただキスしているだけなのに理性までとろとろと甘く崩されて、このままじゃ本当にだめになってしまう。

「う、うん。僕のこと……銀さんのものにして」

僕は銀さんの腕の中でぐんにゃりと弛緩して、まるで透明なくらげになったように全身で銀さんに絡みついた。そうしていないともう自力で立っていられそうになかった。でも僕の脱力をどう受け止めたのか、荒く息を吐いた銀さんがますます我が物顔で僕の身体のあちこちを弄ってきたことには驚かずにいられない。



「ちょっ、ちょっと!止めてください銀さんっ!これはなしです!こんなところで!」

ヤバい。銀さんの目の色に何かただならぬものを感じ取って、僕の腰は思わず逃げを打つ。それでもしっかりと抱き込まれているからなのか、焦る心とは裏腹に迂闊に動けそうになかった。

「いいだろ。こういうとこでした事もあったじゃん。あの時もお前、嫌がってたわりにすげー興奮してたよな」
「っ!!」

前に外でした時のことを言ってるんだろう。あの時も確か、僕はすごく嫌がっていた。当たり前だ。どこかの路地裏だったし、昼間なのに薄暗くて、興奮してる銀さんが止められなくて、怖くて。
でも跪いた銀さんに性器を舐めまくられて訳が分からなくなった僕は、いつの間にか銀さんの指をあそこに突っ込まれて、震える膝で立ちながらか細く喘いでいた。そして、

『後ろ向いて。壁に手ェつけ』

なんて言われるがままに身体を反転させられ、そのまま後ろから貫かれて………………ほ、ほんと僕らって二人揃ってどうしようもない。つくづく分かっていたけど。


けど、はしたない自分の姿を客観的に思い出し、今更のように赤面して黙りこくる僕を黙って逃してくれるようなら銀さんじゃない。羞恥で灼かれる思いの僕の耳に唇を近付け、色っぽく吐息だけで笑う。

「お前無理やり好きだよな。こうやって誰の目に触れるか分かんねえとこで犯されんのもスキ。強引にされても感じるし、ちょっとなら痛いのもいいだろ?前ビンビンにして、たらたら先走り溢して悦んでるもんな。俺の咥え込んで、やらしく締め付けて。……お前のそういう性質に、俺が気付いてねえと思った?」

あんまりな銀さんの言い草に、僕はもう絶句に次ぐ絶句だ。信じられない。でも思わず銀さんを睨んだけど、銀さんはふっと唇の端で薄く笑っただけだ。意地悪。
淡々と事実を語ってるように見せかけて、僕を羞恥でいたぶって、悶えさせて愉しんでいる。

だから僕はどうしても反論したくて、ばかばか、といつものように涙声で言った。

「ち、違っ……僕はそれが好きなんじゃなくて!」
「あ?」
「銀さんだから……好きなんです。他の人にそんな事されたくないです!絶対にいや!銀さんだから、あの……恥ずかしくなるくらいに僕……」

必死になって言い募る。そうだ、僕だって無理矢理な行為が好きなはずない。セックス自体が特別大好きって訳じゃ決してない。
銀さんだから許してしまうし、好きな人に求められる快楽に身を投げ出してしまいたくなるだけなのに。

おどおどと言い淀む僕を、銀さんはまたからかうように見下ろしてきた。仔猫の喉を擽るみたいに、僕の首筋をするする撫でる。

「銀さんだから、感じちゃう?」
「うん」
「乱れちゃう?」
「う……うん」
「そうなるの俺だけ?」
「当たり前です。僕には……銀さんだけ」

潤んだ目で銀さんを見上げると、何故かぎゅうっと抱き締められた。締め上げてくるような銀さんの膂力に目をみはって、哀れな僕はジタバタと力無く足掻く。

「かっわいい。しかしお前すげーな、ある意味天賦の才能?」
「ふ、ふざけないでください!あと苦しい!苦しいってば銀さん!」

耳に吹き込まれてくる甘い囁きは、やっぱり今度も僕には意味不明で。
でもどこかのんびりした声音に安心した僕は、少し拘束が緩んだ銀さんの腕の中で背伸びして、銀さんの顔にキスをした。狙うは頬だった筈なのに、思いがけず顎先になってしまったのがちょっと悔しいけれども。
何だろう、この身長差がいけないんだな。たぶん。僕だけ狙っていても、迂闊に銀さんにキスできやしない。


そうやって赤い顔でもじもじしている僕を見て何かを察したのか(銀さんはほんと察しが良い)、銀さんは大きく屈んでから、僕の額にちゅっと音を立ててキスした。まるで親愛を示すみたいな、僕の大好きな銀さんのキス。

「……よし」

そして決意したように呟いて、僕の身体から手を引き剥がす。背を木の幹に預けてさせてから、半ば腰が抜けたようになった僕をしゃんと立たせてくれた。

「一刻も早く帰ろ。もう我慢できねえ。色々」

これ以上キスしてたら勃っちまう、つか勃ってるからやべえな、まあ着流し着てっから目立たねェしいっかー、などと危ない言葉の数々を吐きながら、銀さんはくるっと僕に背を向ける。波の引くようなその潔さに、僕はあっけに取られたように立ち竦むだけだ。

「あ……は、ハイ。あの、これで終わりにするんですか?」
「は?何それ。これ以上続けていいの?久しぶりにアオカンしてく?」
「しないですっ!そういう事じゃなくて……銀さんも我慢するんだって思って」

キョトンとした赤い顔の僕を茶化すように、銀さんが振り返ってくる。

「我慢っつーか、だってお前嫌だろ?こんなとこでまた盛られてもよ。もうお前が嫌がることはなるべくしねえことにしたんだよ」

その言葉。その意味。
僕の嫌がることをもうしないと言う銀さんに、僕の心はふんわりと甘く弾んだ。じいんと温かな気持ちが込み上げる。銀さんに大切にされている実感が急に湧いて、嬉しくてたまらなくて。

やっぱり銀さんは少し変わった。前までは絶対に僕の言うことなんて聞いてくれなかったのに。


「そ、うなんですか。でも……あの銀さんが?ほんとに?だって僕のことなんていつも二の次で、自分の欲望最優先な、あの銀さんが?」

でも、まだおずおずと言い重ねる心配性の僕に焦れたのか、銀さんはいかにも面倒臭そうに頬を掻く。

「しつけーなオイ。いいだろ?てかお前の中の俺の認識って何?そんな可愛くない事ばっか言ってるとマジここで犯すよ?」
「だからそれは止めてくださいってば!すぐ犯すだの何だの……もう!」

だから僕は慌てて木から背を起こし、まだ頬を火照らせたまま銀さんの後を追う。ほんと怖いんだか優しいんだか、自分本位なんだか他人本位なんだかよく分からない人だ。僕の好きな人。

僕の大好きな銀さん。





「もー……銀さんかっこいいってちょっと思ったのに。最後の最後で台無しですよ」

銀さんに手を引かれて歩きながら、僕はポツリと口にする。

「えー。ちょっとかよ。つまんねえの」
「ちょっとですよ!すぐ調子に乗るんだから!」


ぶうぶう言う銀さんを軽く叱りつけつつも、僕の足取りはいたって軽やかだった。ほんとに銀さんたら仕方ない。かっこよくキメるだけじゃなくて、ちゃんとずっこけるオチがあるから誰も銀さんのことを憎めない。
でも僕も僕で、まだ自分の気持ちを誤魔化しているから仕方ないんだ。




(ほんとはちょっとどころじゃないんだけど……)




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