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ADracula La (銀新)(高新)

*続きました*



新八くんは頭上に落とされた高杉さんの声にびくっと肩を揺らし、一瞬遅れて背後を振り仰ぎ、


「あ……た、高杉さん」
「さっきから見てれば、一人で青くなったり赤くなったり……百面相か?(くっくっ)」
「ちっ、ちげーもん!百面相なんかしてないです!ただ……あの、悩み事があって」
「悩みだと?てめえ如きが、何を高尚に(ニヤリ)」
「僕にだって悩みの一つや二つくらいありますっ!ほんっと無駄に意地悪なんだから!……ぼ、僕にだって、その、好きな人ぐらい居るんです」

意地悪を言って笑む高杉さんを軽く上目で睨みながら、凄くカワイイお顔でプンプンしながら、銀さんの名前は出さずに新八くんはおずおず語ります。

「その人との事で……悩んでました」
「ほう。そいつはどんな奴だ?」
「えっ!ど、どんな奴って(赤面)」

晋助があくまでも平然と聞いてくるので、新八くんは赤面です。でも話したいは話したいのね。むしろ自分の好きな人の話を聞いて欲しいから、ドキドキしながらも銀さんのことを想って。

「えっと……本当に最初は、その人の強さに憧れてて。僕もあんな風になりたいって、あんな風に強くなって皆を護りたいって、そう思ってついて行ったんです。でもその人に近付いたら、それだけじゃなくて。その人の側には……本当に色々な景色があったんです。だからこの人の側に居たら、僕は僕のままで、僕らしく成長できるって。いえ、成長してたんだってことも分かった。そう思ったら……ああ、最初から僕はこの人が好きだったんだって、この人じゃないとだめなんだって、最近になって気付いたんです」
「……なるほどなァ」

新八くんが語ったことを聞いていたのかいないのか、高杉さんはもう何も言わず、ふう、と鷹揚に煙管をふかしています。そんな気ままな高杉さんを見上げているうちに、新八くんも少しだけ心が軽くなって。

「……高杉さんって、本当に不思議な人ですねえ」

ふふっと少し笑ってね。

「あ?」
「だって僕が悩んでる時とか、元気がない時とか、そんな時ばっかり高杉さんに会います」
「阿呆が。俺だっててめえに会うために出歩いてる訳じゃねえ」
「分かってます。意地悪でも皮肉屋でもいいです。でも……高杉さんと居ると、高杉さんに自分の気持ちを話すと、何だか僕の心は軽くなるんです」
「……フン」
「ありがとうごさいます、高杉さん」

新八くんにお礼を言われた晋助はすげーそっぽ向いてますけど、新八くんは優しい笑顔です。もう一回お礼を言って、あとはもう川に視線を投げています。
時折吹く風は川の水面を揺らし、そんな二人の頬を優しく撫でていく。梅雨の晴れ間の今日の空はすっきりと澄み渡って。

けども、そうやって俯きがちに川を見ている新八くんに何気なく目をやった晋助がね、ある一点でふっと目を留めましたよ。

「……オイ」

と。唐突に呼びかけられたものですから、新八くんも、ん、と顔を起こす。

「ハイ?何でしょう、高杉さん」
「てめえの惚れてる男は、どうやらお前にひどく執心してるらしいな」

すると、どこか含んだような笑いと共にするりとうなじを撫でられてね。新八くんは大いに慌てます。
そうです、そこは昨日興奮した銀さんがさんざっぱら咬んだり吸ったりしてきた場所。痕が残ってない訳がない。それを見つけられてね、しかもすごく面倒くさい男に見つかってしまってね、新八くんは慌て果ててますよ。

「あ、あの、えっと、こ、これは、これは……何ですかね、むしろ何ィィィ?!」(ハンパなくテンパってる)
「あん?今は俺が聞いてんだろうが(くっくっ)」
「あ、そ、そうです!これは虫刺されですっ、それでしかないです!(赤面)」
「嘘を吐け。たかたが虫に食いつかれたくれェでそんな風になるか」

真っ赤になって慌ててうなじを両手で隠してますけども、晋助はもう聞いてもくれないの。これは合点がいったという風情で、くつくつ笑いながら煙管をふかす。

「うなじに咬み痕か。てめえの男はなかなかいい趣味してやがる。まるで獣じゃねえか」
「はっ!?た、確かに獣……って言うかもうケダモノみたいな時もあったりなかったり……てかよくありますけど。でも、」(たじたじ)
「知ってるか?猫は交尾する時、オスがメスの首を咬む。メス猫が逃げねえようにして、確実に孕ませる為になァ」

どこか淫靡な目で見られて、新八くんの赤面は最高潮です。だって高杉さんの目線がさっきまでとは明らかに違うもの。さっきとは違った目で自分を見ている。
執拗に。まるで絡みつくように。
それこそ肉食の獣のような視線で。

「っ、って言うか、どうして僕の好きな人が男の人って断定するんですか!?おかしいでしょ!(ちょっと泣きそう)」

でもそれに怯みながらも、新八くんも頭にはきてるんです。晋助にメス猫と同じようなものとして語られて、『てめえは誰かのオンナにされてんだろうが』と暗に語られ、凄く凄く恥ずかしくなってます。真っ赤な顔をしながらも、あくまでも気丈に言った。

しかし相手は晋助ですよ。分が悪いのなんのって。


「あ?てめえのような小僧にそこらの女がそこまで執着するはずがあるか」
「なっ、何で断言ですか!」
「じゃあ言い方を変えてやらァな。てめえが女とどうこうできる筈がねえだろう。メス猫がメス猫と盛れる訳はねえ。こんな簡単な事も分かんねえほど頭が足りねェのか、てめえは」

うわあ。晋助凄い意地悪〜。性格悪くて萌え果てる。何か困って恥ずかしがって、真っ赤な顔をして泣きそうになってる新八くんを見てるうちにね、凄くサディスティックな気持ちになったんでしょう。残忍で甘美な気持ちに。要は酷くムラっとしたって言う(晋助)
しかしあくまでも表面上は淡々と語る傍らで、晋助は悠々と煙管をふかしてます。新八くんの羞恥を完全に無視です。

対する新八くんは、今までこれほどの辱めを受けたことはなかった。確かに男の子なのにメス猫扱いされ、誰かのオンナになってるんだろうと揶揄され、自分が全く悪くないことで延々詰られ、しまいにはおつむが足りないとまで言われて。いじめられて。

あれれ?こう書くと晋助のSっ気も呼び覚ましてるじゃん、新八くん。さすがノンケ落としの逸材。だからあの、ノンケを落とすなら新八くん一人居れば事足りますよ。現に二名の男が既に落とされております。
具体的に言いますとどっかの万事屋社長と、どっかの鬼兵隊総督です(特定可能)



でも新八くんだって、そんな意地悪な晋助に言わせているだけじゃない。きゅっと可憐な唇を噛み、ふるふると震えそうな声で、それでも勇気を振り絞って口を開いた。

「お願いだから、だ、誰にも……言わないで」

けど凄く恥ずかしくて、自分が情けなくて、泣きそうです。仕方ない。涙をためたおっきな目なんてうるうると潤んでいるし、怖くて晋助の方をもう向けない。
たどたどしくお願いする新八くんはひどくいたいけです。痛ましさすらある。

「あ?てめえは誰に向かってもの言ってやがる。俺に対する言葉遣いがなってねェ。この分では、てめえを躾けてる男もロクなもんじゃねえだろうなァ。まあ……まだガキでしかねえお前に手ェ出すなんざ、元々の程度が知れてるがな」

けど晋助だからね。そんないたいけな雰囲気を醸し出すカワイイ新八くんなんて、更にいたぶる気満々ですから。ニヤリと口の端を持ち上げてまたも意地悪の追撃。皮肉るようにシニカルな笑み(めっちゃかっこいい)。しかし普段なら言葉遣いなんて気にもしないくせに、てかむしろ自分の言葉遣いこそどうなのって話なのに、新八くんをいたぶる為だけにこんな意地悪を平然と言う男。

それに新八くんは最早たまらなくなり、ここでようやく晋助の方を向いた。ばっと振り仰いで、大きな瞳を潤ませて、薄い胸を喘がせて。


「っ!お、お願いですから!僕のことはどれだけばかにしてもいいですから……ぎ、…じゃなくて、僕の好きな人のことだけはばかにしないでください!いくら高杉さんだって、これ以上は許しません!!」

ここでいよいよ、切なげな新八くんの瞳から溢れ落ちる一粒の涙。清らかなその涙。
でも耐えきれなくてぽろって落ちた瞬間、もう新八くんは毅然としてゴシゴシと拳で涙を拭って、晋助に涙はみせない。銀さんの前ではあれだけわんわん泣いてたけど、晋助には絶対簡単に涙を見せてくんないの(萌え)。

でも新八くんは、誰かを護る為なら強くなれる。今だってそう、自分のプライドの為でなく、銀さんがばかにされることに耐えられないから晋助に楯突いた。口でも頭でも剣の腕でも、絶対に絶対に敵うはずのない晋助に食って掛かった。
自分のことなんてもう置き去りです。完全に思考の外です。


ハッキリと言います。晋助はこういう子が大好きですよ(断言)。新八くんのような気骨のある子。自分のことでいくら小馬鹿にしようが軽く言い返してくるくらいなのに、それが他人のことに及んだ途端に牙をむく。あくまでも小動物の、しかもメスの分際で自分に楯突いてくる。兎が獅子に敵うわけがないのに、そんな事にはもう頓着していない。どうすれば場を収められるかとか、自分に有利かとか、自分のプライドとか、そんな利己的な事はもはや一切考えてない。

新八くんの、そのひたむきさ。愚直なまでの一途さ。弱くて強くて、不安定で揺らいでいて、でも絶えず煌めいているような、輝くことを決して止めない、その魂の清廉さ。
でもだからこそ、その清廉な魂が崩れかかった時の一瞬の脆さには晋助も強く惹かれた。さっき一粒だけ溢れた、新八くんのあの涙。無垢な稜線を描く頬に滑り落ちた、真珠のように清らかな涙の一雫。

晋助は衝動的にもっと新八くんを泣かせてみたいと思った。俺の為に泣いているお前は、どんな顔をしているのだろうと。
誰かの為でなく、俺の為に。


だからね、ふるふると震える新八くんの細い肩を見ながら言うんですよ。

「……。てめえは全く……てめえがそんなんだと、男の方もおかしくならァな(ふう)」

っておいおい、晋助!?どーしたお前、めっちゃよろめいてんじゃんんん!?新八くんにめっちゃ欲情してんじゃん!どうしたのお前、綺麗どころばっかり食い散らかしてきたんじゃなかったの!?
吉原に一度行けば綺麗なお姉様方にキャーキャー言われ、めっちゃモテまくるじゃん晋助!花代要らないから来てよ旦那ぁ、だのと甘えられてたじゃん晋助!そんなモテてんのに女にはいっつもつれないじゃん晋助!女なんざどうでもいいってスカした顔じゃん晋助!(そんな見てきたもののように)

だから晋助だって銀さんと同じく、もちろん男色の気はない。綺麗な女しか抱いたことはないし、抱く気もない。でも女相手にはこんな気持ちを抱いたことはなかった。
こんな、どこかどろりとした淫靡な気持ち。胸の底をそっと刷毛でくすぐられたような、こんな甘美な恍惚感。倒錯感。固く清楚な蕾をこの手でこじ開けたいような、でも開花の時を見守りたいような、それでいて開花の直後にバッサリ茎を斬り落としてその美しさを独占したいような……
奪いたいと衝動的に思うほどの、これほど強い気持ち。


晋助から見た新八くんは、明るく素直で元気な子ではいるんだけど、いつもどこか寂しげ。明るく溌剌としたその顔に、時折差し込む切なさの影。それに新八くんはいつも耐えている。我慢している。それでも大好きな男のために、何も言わずにひたむきに尽くしている。今だってそう、新八くんが自分に楯突いてきたのは決して己のプライドのためなどではない。新八くんの真心は、きっと永遠にその男のもの。

でも、決して隠しきれていないその傷。
好きな男にないがしろにされて傷付いている、その痕跡。その悲しみ。痛み。

その傷を暴いてこじ開けて、全部全部──こいつを自分のものにしたいと思った。奪い去りたいと。




「……た、高杉さん?」

晋助は何故なのかぞくぞくして、そんな自分を愉しいもののように思い、新八くんを改めて見やった。その目に新八くんは少したじろいでます。
それは翡翠色の鬼火がちろりちろりと飛ぶような、暗赤色の炎に肌をゆっくりとなめられているような、妖しさと恐ろしさ。でも目を逸らすこともままならないほどの蠱惑を含んだその眼差しに、ひどく戸惑う。



*また字数オーバーしたから切ります*

Dracula La (銀新)(高新)

*長くなっててごめんなさい*
1.ないものねだり
2.なんでもねだり
3.恋の寿命
4.Boo!
5.悲しくなる前に
6.雫に恋して
7.mist...
8.Amist...



そんな訳でして、新八くんは銀さんとのいざこざ、つか銀さんに危うく犯られかけた翌日は万事屋に出勤して来なかったんです。いや当たり前なんですけど。銀さんとどんな顔して会えばいいのか分からなかったんです。
けれど新八くんのことだから、無断欠勤とかできるはずない。だから朝になって万事屋には電話を掛けて、電話に出た相手が神楽ちゃんだったことには心底ホッとした新八くんです。


『ふぁーい。もしもし。万事屋ヨ〜(むにゃむにゃ)』
『あ、神楽ちゃん?よかった……おはよう(ホッ)』
『んにゃ?お前、新八アルか?新八ィ、お前昨日どーしたんだヨ、何で急に帰ったアル?昨日は銀ちゃんもおかしかったネ。この世の不条理を一気に抱え込んだような顔してたアル。イライラしててバカみたい、どっかの女にフラれてきたぐらいであんなんなってたらキリないのに』(←決めつけ)
『不条理?ふ、フラれ?あ……そう。そうなんだ……(何となく察し)』

『新八帰ってから私一人で銀ちゃんの面倒見てたアルヨ。お前も銀ちゃんもほんと困ったもんアル』
『えっと……ごめんね、昨日は急に帰って。今日も具合悪いから一日休むね。銀さんにも伝えておいて』
『具合?新八、どっか悪いの?銀ちゃんに代わる?銀ちゃんと話す?まだ寝てるけど、叩き起こして来てやってもいいアル。……おーい、銀ちゃああああん!!新八から電話ー!起きてー!!(既に大声で呼んでる)』(←受話器は押さえましょう)
『はっ!!??いや、その、銀さんはいいよ、銀さんには代わらなくていいから!!とりあえずごめん、もう電話切るねっ!!』

プツッ。ツーツー。
新八くんらしくなく、電話もガチャ切りですよ。だって新八くん、どうしても銀さんとは話せなかったのです。そしてあまりに屈託のない神楽ちゃんに、銀さんと自分との間に漂う微妙な雰囲気にムカムカしているであろう神楽ちゃんに、これ以上嘘を重ねることも心苦しかったのです。

そしてところ変わり、万事屋。神楽ちゃんの大声で叩き起こされ、銀さん凄え不機嫌そう。低血圧MAXで寝巻きの腹をボリボリと掻きながら、居間にのっそり現れます。

「あー頭痛え……くっそ、昨夜呑み過ぎた。てか何だよ神楽の奴、朝っぱらからうるせーんだよ。下のババアから苦情来たらどーすんだ、また家賃払えとか言われっぞオイ」

いつも通りの二日酔いでしたっていう(銀さん)。

でも仕方ないのですよ、昨日はあと少し、あと小一時間も神楽ちゃんの帰りがズレていたらば、確実に新八くんと何かしてた訳ですからね。物凄いひっさびさにあの身体を抱いてた訳ですから、何だかんだ嫌がっていてもアレは絶対にヤれたって、新八だってしまいにはアンアン言ってた筈だってと、そしたらぐちゃぐちゃのとろっとろに……って、そんな妄想ばかりが昨夜は頭を駆け巡ってた訳ですからね、銀さんだってもう酒でも呑んで辛い現実を紛らわすしかできなかったんですよ。

さらには外に呑みに行くのももう面倒くさいので一人宅飲みで、しかも所々で、

「あああ、くそっ!俺いくつだっつの!?中坊か俺!」

とか、

「ふざけんなよ、何で俺だけが我慢だよ?我慢大会かよ、慣れてねーのによォォォ」

とか、一人酒の合間にブツブツ言ってますからね、ワンカップ片手に愚痴ってますので、そりゃあ押入れから顔を覗かせたおねむの神楽ちゃんにも、

「銀ちゃんうるさいっ!!たかだか女の一人にフラれたくらいで黙って酒も呑めないアルか!そんなんなら外に行ってマダオあたりと呑んで来い!!」

などとね、ちょいちょい罵られてますよ(お父さん)。これは完全にどっかの女に失恋してきたのだと、どっかの女に乗っかれなかった鬱憤アルなと、そんな風にのっけから決め付けられてますよ(だから鋭いよ神楽ちゃん)。

だから銀さんも今朝は機嫌悪いんだけどね。その上神楽ちゃんに、

「あ、銀ちゃん起きてきた。何か新八ネ、今日も具合悪いって。休む言ってたアル」

と告げられた時はさらに機嫌悪くなり、

「は?……何で?」(一段低い声)

みたいな。より一層の気怠さとイライラが増しました。

「さあ?何でって言われても、新八理由言わなかったアル。あ、具合悪いとか何とか言ってたような気もする」
「あ?具合?嘘つけオイ、絶対ェ仮病だろ。……何で電話俺に代わんなかったんだよ、神楽」(ますます低い声)
「だから知らないアル。銀ちゃんにも電話代わらなくていいって新八言ってたもん。てか銀ちゃんめんどくさいアル(心から)」
「(プチッ)……はああ?!何で新八の分際で仕事休んでんだよ!?生理休暇か!仕事なめてんのかあいつは!(イライラ)」(←だからその発想がおかしいってば)

「仕事どころか、人生なめきってる銀ちゃんにだけは誰も言われたくないアルな。……ねー銀ちゃん、新八に変なこと言ってないよネ?何か万事屋に来にくいようなこと、してないよネ?(じー)」(←神楽ちゃんも大概新八くんっ子です)
「はっ!?……し、してねーよ!何だよ変なことって!すすすする訳ねーだろ、てめ、ふざけんな神楽!」

神楽ちゃんは訝しげに銀さんに視線投げております。てかこの前新八くんに聞いた内容そのままを反転し、今度は銀さんに聞いてるだけなの。でも新八くんと違い、思い当たりのある銀さんは凄え動揺。目線なんて右往左往しっぱなし。
けども、

「(銀ちゃんだから素直に言う筈ないアル)」

って神楽ちゃんも分かってますので、そうやって察してあげられる点はさすが女の子だし、銀さんよかある意味全然大人ですので、そこまで深くは追求せず。あとは適当に自分で用意してきた卵かけご飯をかっ込みながら、もぐもぐと忙しなく口を動かしてます。

「新八ね、昨日帰った時も変だったアルヨ。慌ててたし……私、心配だから今日は新八ん家行ってくるネ。銀ちゃんは?」
「は?何がだよ(むすっ)」

銀さんは当然まだ不機嫌。すんげえむすっとして、ソファに荒っぽく腰を下ろす。そんな銀さんをじいっと大きなお目目で見つめる神楽ちゃん。

「銀ちゃんは行かないの?新八、会わなくていいアルか?」
「ああ?行く筈ねーだろ、てめーだけ行って来い。何で俺が新八なんか(ペッ)」
「うん。じゃあ私と定春だけ行ってくるアル」


でも素直に頷いて、もぐもぐと良い子にご飯をかっ食らってる神楽ちゃんの様子を見てるうちに、銀さんはソファの上でだんだんもぞもぞしてくる。座りが悪くなってくる。視線がキョロキョロし始める。そのうちにぽりぽりと頬掻いてる。

「……。……オイ、神楽。あー……あの、さ(チラッ)」
「何アルか。私忙しいネ。ご飯食べたら新八んとこ行くもん(もぐもぐ)」
「だからホラ……あのよォ、ほら、アレじゃん?アレっつーか……アレだろ?」
「アレじゃ分かんないアル」
「だーかーらァァァ……お、俺も新八の顔見に行ってやってもいいかな?みたいな〜。お前だけだと心配だしィ?みたいな〜……(ごにょごにょ)」
「別にいいアル、銀ちゃんはどっか行ってて。めんどくさいから私にもう話しかけないで(蔑んだ瞳)」
「てめっ神楽コノヤロー!!誰のおかげで大きくなったと思ってんだ!俺も行くっつってんだよ!(ガシャン)」


っておい、銀さんすげー天邪鬼!どんだけですかね、神楽ちゃんにまで素直になれないなんて。でもそうやってギャーギャー言い合ううちに朝ご飯も終わり、二人と一匹で志村家に行ったのですよ。むしろ駆けつけた勢い。
そしたらね、お妙ちゃんが玄関に出てきて。

「え?新ちゃん?万事屋に行ってないんですか?確か……今朝もいつも通りの時間に出てましたけど」

って。凄く不思議そうな顔で小首を傾げてたんです。つまり新八くんはお妙ちゃんには何も言わずに、あくまでもいつも通りに出勤する風を装ってどこかに行っちゃったんです。律儀にも万事屋には電話を掛けて休みを伝え、しかし家にも居にくいからどこかに一人で行ったという(新八くんらしい)。

もちろん、この事実を知った時の銀さんのムカつきようと言ったら。

銀さん「はあああ?!新八のやつ、万事屋来てねーぞ!家にも居ねえ、万事屋にも来てねえ、マジどうなってんだアイツ!」
お妙ちゃん「変ですねえ。どうしたのかしら、新ちゃん。昨日も何か塞ぎこんでたみたいで、お夕飯もろくに食べなかったんですよ(おっとり)」
神楽ちゃん「ねえアネゴ、新八何も言ってなかった?銀ちゃんに何か言われたとか、銀ちゃんに何かされたとか、チクってなかったアルか?」
銀さん「いやいや待って、あの、神楽ちゃん?おかしくねーか、何で俺が悪いこと前提なの」

お妙ちゃん「ええ。そうなのよ神楽ちゃん、私には何も言ってくれなくて……でも新ちゃんもあれかしらね?お給料もくれない銀さんにはそろそろ愛想が、(チラッ)」
銀さん「……。さーて、帰ろっか神楽(くるっ)」


何か皆して薄々分かってんじゃん。お妙ちゃんも神楽ちゃんも、銀さんのせいで新八くんがずる休みした事に気付いてんじゃん!でも銀さんそれに全力で気づかないフリじゃん、全力で知らぬ存ぜぬを決行じゃん、ほんと何ですかねこの男は好き!(着地点)
でも新八くんは志村家にも居ないし、万事屋にも当然来てないし、銀さんは内心ですごく不安ですよ。塞ぎこんでたっていうお妙ちゃんの証言もあるし、ご飯も喉を通らない様子の新八くんのことが、とにかく心配になっちゃう。


「(やっべ。昨日のアレ……新八の奴、やっぱ怒ってんのかな。まあさすがにいくら新八でも怒るか。それで俺とも顔合わせ辛くなったんだろうな)」

だから同じく心配げな神楽ちゃんを志村家に残し、

「オイ、俺ちょっと新八のこと探してくる。てめえはお妙とここに残ってろ、神楽」
「えっ?嫌アル!私も行く!!」
「いいって、もし俺が見つけられなかったら自動的に新八もここ帰ってくんだろ!その時のためだから!」

いやいや言って暴れる神楽ちゃんをお妙ちゃんに託して、もう居ても立っても居られず、一人で猛ダッシュで志村家を出て行くのでした。
でも『もし俺が見つけられなかったら〜』とか神楽ちゃんには言い訳しつつ、

「(俺が新八のこと見つけられねえ訳ねーよ)」

って銀さんは確信してるけどね。絶対見つかるし、俺なら見つけられる。俺と新八だから。もし俺が見つけられなかったら他の誰にも無理だから。

……って、あの、愛ですか?(愛です)
すごく新八くんが好きなのだと、新八くんの存在が大切なのだと、銀さんはこの時ほど強く実感した事もなかったです。




一方、その頃の新八くんは。

「はあ……」

土手で膝を抱え、一人で流れる川をみながら黄昏てました(まだ陽も高いけど)。何となく万事屋に行きたくなくて、でも自宅にも居られなくて、ここに来てしまった。銀さんにも会い辛いし。
仕事をずる休みしてしまったし、神楽ちゃんにも姉上にも心配させてしまったことを悪く思いつつ、昨日のことを考えると一気に頬が熱くなり、一人でかああっと顔を紅潮させてる新八くん。

「(だいたい昨日のは何なの!?僕は銀さんとちゃんと話したかったのに……あんな……)」

昨日のことを思い出すと恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ない。でもどこか切羽詰まったような、余裕の全くなかった昨日の銀さんを思い出すと……何故なのか、胸がぎゅうってなる。余裕なさげに自分を欲しがっていたあの態度。凄く不機嫌で凄く怖くて、でも一方では不貞腐れてるただの子供のようにも見えて。
まるで銀さんのもののように扱われてすごく嫌だったのに、あの大きな手のひらが自分の身体をなぞったことを思い出すと、何故なのか身体が火照ってしまう。だってドキドキした。

自分を見る目の鋭さが肉食の獣みたいで、いつもの銀さんじゃないみたいで、すごく怖くて……すごくドキドキした。

「(たぶんあのまま神楽ちゃんが帰って来なかったら、銀さんに流されて……さ、最後までさせちゃったんだろうな。僕のばか。ばかばかばか!本当に堪え性のない……)」

一人で膝を抱えて、内心できゃあああってなってる、内心ではゴロゴロ転げまわる勢いの新八くん(クッソかわいい)。でもね、そうやって恥じらう一方で、

「(銀さん……もうずっと前から僕のことしか考えてないって言ってた。それはどういうことだろう。もしかして……)」

と、期待とときめきに胸を高鳴らせてしまう乙女新八くん。それでも悩む。あのまま流されて銀さんに奪われたかった気持ちと、何とか踏みとどまれて良かったと思う気持ちが半々ずつ自分の中にあって、そのどっちつかずの気持ちには心底悩んじゃう乙女なのです。乙女心は千々に乱れております。

そしたらね、スッと土手に差し込む影がある。そうやって体育座りで悶々としてる新八くんの後姿を認めて、すいと近付いてきた男がある。煙管をふかして、悠々と。

「……よォ。てめえは何してんだ、こんな所で」


って晋助!やっぱりこんな時は来てくれるよね、ありがとう大好きだ!(晋助が来ると一気にお前の主観が)



*続く*
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