未だに…

この暑い夏が終わると、
けんちゃんの誕生日がやってくる。


もう、
余計なお金を使わなくてもいい。

同時に、
プレゼントを選ぶ楽しみもなくしてしまった。






彼は
あれからずっと落ち込んでいる。

『僕はクソ野郎だ。人間のクズだ。』

ちょっと大げさ。



でもきっと、
そうさせているのは私自身。

そもそも私に それほど興味を持っていないのでは?


けんちゃんが大学で研究しているもの。
それを見ると彼は血が騒ぐ。
興奮する。

でも、私は興味がないし、
何が魅力なのかわかんない。
そこにあっても捨てちゃうと思う。


そういう温度差…






もしも、
もっと私が若かったら…

同世代の彼女がいたとしたら


けんちゃんも誕生日を忘れたりしないでしょう。




もう、
しばらくそっとしておこう。

消えた誕生日

私がガッカリしてるのは、

誕生日を忘れられたことよりも

勝手に落ち込み 立ち直れなくなっているけんちゃん。




私はこれっぽっちも怒っていないし、
不機嫌にもなっていない。


そりゃ、
おめでとうを言ってもらえたら嬉しいけれど。



でも、
けんちゃんにお祝いしてほしかったら自分からアピールするし、
学生のけんちゃんからプレゼントをもらおうとも思ってない。

実際、
誕生日プレゼントは
もらったことがない。






お祝いなら、
他のみんながしてくれるから寂しくはない。


娘は今年も電話をくれた。

職場の仲間やお友達もプレゼントくれたし、
アルバイトの学生さんたちも、
『ぷくぷくさん、
お誕生日おめでとうございます!』

って、
わざわざ私を追いかけてきてお祝い言ってくれるし。


とっくに辞めた会社の同僚や後輩も
メッセージくれたりご馳走とかしてくれる。






『僕はまた
今年もやらかしてしまいました。

ホント最低です。』



いいよ、気にしないで。


昨年同様
自分を責めて落ち込んでる。



そんな彼を見るのが嫌なのだ。



こんな風に、
毎年誕生日の度に変な空気になってしまうのなら…




『けんちゃん、こうしましょう。

もう私の誕生日は忘れて。
私もけんちゃんの誕生日忘れるから。


私たちの間に誕生日は存在しない…』



また…

今日も職場で同僚たちが言う。


何度も同じ失敗をする若いコたちを
『使えないなぁ』

『いいかげん学習しなさいよ!』


失敗が人を成長させるのだろうけど、

決して難しくない当たり前のことが
出来ない若者が多い。



きっと、
彼らの『当たり前』と、
私たちの『当たり前』は違うんだろう。





けんちゃんも、
彼らと同じなのかも。



頭がいいと思ってたけど、
本当は救いようのないおバカさんなのかも知れない…



いや、
天才とおバカは紙一重だ。






今年も
大切な人に誕生日を忘れられた、

幸薄いオバさんの ひとりごと。

やらし…

やっと夏っぽくなってきた。


この時期は仕事がとてもハードで、
体は疲れてるのになかなか寝つけないことがよくある。

年齢的なものもあるんだろうけど。




でもやっぱり、
けんちゃんちのベッドだとよく眠れる。


とっても静かだし、
けんちゃんの香りや
私の背中に回した手とかが、

心地よい眠りに誘ってくれるんだと思う。



いつものように愛し合って
お喋りをしてた。

最近買った香水の香りがふわっとしたので、けんちゃんの胸元に顔を埋めて、
そこから響くけんちゃんの声にうなずいてた。



その後の記憶はない( ̄∇ ̄)



『ぁ…

また寝ちゃった(´・_・`)』




ずいぶん長く寝ていたようだけど、
けんちゃんは私が起きるまで待っててくれて。


彼はその間ずっと、
私の身体を撫でながら、

髪や首筋をクンクンしているらしい。





目が覚めて、
再び彼の胸元に顔を埋めた。



『さっき、
そうやって寝てしまいましたよ。

僕のアレ 触りながら( ̄∇ ̄)』



『… ウソだ!
私、そんなことしないもん(-ω-;)』




『ホントですよ(^◇^;)

やらし!』




無意識って、コワイ。


忘れられた誕生日 その後。

それから数日、
けんちゃんは元気のない日が続いて

メールにも
(._.) ←こんなのとか、

(´・ω・`) ←こんなのとか…


別に私は怒ってるわけじゃないのに。




『なんで、いつまででもそんな感じなの?』

『反省してるんです(´・ω・`)』




『だったら、気の済むまで反省してればいいよ!

けんちゃんの反省が終わるまで、
会わないしメールもしない。』




けんちゃんは、
謝り方が下手だ。


下手ってゆーか、不器用。




前にも言ったことがあるけど、

言い逃れをする政治家の謝罪文のような、
友達にこんな謝り方したら今後はないよ、って思うような…

自分のことを『わたくし』とし、

文の最後に自分の苗字を入れたりして。



気持ちはあるのに伝わらないって、
損じゃない?





何でもそつなくこなしてきた、
優等生にありがちな不器用さ。

いつも誠実で、友達の信頼も厚いから、
トラブルに巻き込まれたこともなく、
裏切ったり裏切られたりしたこともない。







その晩、
けんちゃんは眠れなかったらしく、

朝の5時頃
『本当の意味』での
謝りのメールが入ってた。



『ウジウジとしてしまって、すみません。
ねーさんと 仲直りしたいです。
ねーさんと 一緒にいたいです。』



そして、自分のことを
『僕』

としていた。





それを待ってたの。



作られたコトバじゃなく、

けんちゃんの言葉を…

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