ストレスマッハでこうなった。意味も山も落ちもないです。
グロ注意!
欲しい、欲しいとその喉が飢えを訴える。
それが欲しい。どうしても、何を措いても、それが欲しい。
しかし、手を伸ばしても届かないと知っている。近づこうとも遠ざかると知っている。どう足掻いても手に入らないのだと知っている。
「なあ、どうしてだ」
冷え切った空の下で、男がそう問うた。
手は血で汚れている。何をどうしてそうなったのかと問う人はいない。総て、彼の足もとで骸になっている。
「どうして、お前がそれを貰えたんだ」
どうして俺ではいけなかったのか。
どうして彼が与えられたのか。
どうして俺が貰えなかったのか。
どうして彼が選ばれたのか。
「なあ、どうしてだ」
欲しかった。どうしても、総てを棄ててでも、それが欲しかった。
それなのに彼はそれを要らないと言う。
こんなものは要らないのだと。
ならば俺が貰っても良いのだろう。その手から奪って俺のものにしても良いのだろう。
どうしても欲しかった。誰かを殺してでも、手に入れたかった。
血だまりに一歩足を踏み入れる。
びちゃりと汚れた靴に思う所など何もなかった。視界の端で骸となった親友が恨めしげに見上げようと、家族が犬に食われていようと、恋人が腸を撒き散らしていようとも。
また一歩、近づく。
すると彼は暗欝に微笑んで、両手を広げた。
「殺せばいいでしょう。それを、貴方が望むのならば」
うっそりと笑んだその唇が憎らしい。喜悦に歪むその瞳も、白磁のような華奢な体も艶やかなその髪も。
男は彼の首を掴み、ゆっくりと力を込める。
彼は笑っている。
彼はまだ笑っている。
彼はずっと笑っている。
やがて彼は笑ったまま事切れて、折れた頸は冗談かなにかのようにぐらぐらと覚束ない。手を離せば体は崩れ落ちて、ずっと欲しかったそれが目に付いた。
血だまりも死臭も気にせずに膝をつき、はは、と乾いた笑いが漏れた。
「どうして、俺じゃなかったのかなぁ」
彼の死体を抱きつつ、男は笑う。
判っていた。
誰かから奪って手に入れたとしても、それは彼の人が男に与えてくれたものではない。
欲しい、欲しい。
飢えた喉が欲しいと叫ぶ。
なあ、どうして俺ではなかったのか。俺ではいけなかったのか。
落ちた涙など、知らない方が良かったのだろう。