沖田と神楽





「定春って本当に可愛いアル!」

「あぁそうかィ。」

ふぅんとかへぇとか気の無い返事をしていたのが気に入らなかったのか、チャイナは聞いてんのかよと俺の背中をどつきながらさらに喋りまくる。

「しかも定春はお前と違ってとってもいい子ネ。」

「…悪かったなァ。」

にこにこ笑いながら他のヤツの名前を呼ぶのなんて聞きたくもない。それが例えペットであったって、気分が沈むもんは沈むんだから仕方ないんだ。

「…そんなに名前連呼すんなよ。」

「あぁ?だって定春苗字無いネ。」

「ならつけりゃいいだろ。」

「んじゃ銀ちゃん家に住んでるから…坂田定春カ?」

するとチャイナは私も苗字が欲しいと言ってうんうんと唸り出した。

「…でも語呂が悪いアル。」

坂田家の居候だから坂田定春。大変気にくわないがその理屈でいくと。

「…坂田神楽?」

「違うアル。」

「じゃあ何なんでさァ?」

半分投げやりになってそう尋ねる。
返事が返って来ないのを不思議に思って見てみれば、チャイナの唇がゆっくりと動いた。

「…沖田、沖田神楽。」

まぁ許してやるかと言いながら、チャイナは俺の前をさっさと歩いて行った。
残された俺は暫く呆然と立ち尽くす。

「アイツほんと…ほんとなんなんでさァ…!」

真っ赤になった顔をぶんぶんと振りながら、その可愛いらしい後ろ姿を追いかける。

いつか苗字が一緒になった時のために、とりあえず下の名前で呼ばせようと心に決めた。










その声で、名前を呼んで。